ボランティアレポート「卒業試験、苦手な算数とどう戦う?」

2019年11月11日

名前:桑原 留美
隊次:2017年度3次隊
職種:小学校教育
配属先:セントテレザ小学校
出身地:島根県出雲市

私の任地のマチンガ県リウォンデは、首都リロングウェから南東に車で約4時間のところにあります。マラウイの中でも低学力が顕著な地域の一つであり、その理由として、勉学のために学校に行くことよりも、家庭を早く持つことを推奨するヤオ民族の人々が多く住んでいることや、他の地域と比べてより暑い地域であり、勉学に集中しづらい環境であること等が挙げられます。そんなマチンガ県にある公立小学校にて、私は主に高学年の生徒たちに算数を教えています。

マラウイの小学生は8年生の終わりに、全国共通の卒業試験を受けます。その試験の結果によって、中高一貫校(セカンダリー)に進学できるか、さらにどのレベルの学校に進学することができるのかが決まります。その後の人生が左右される、生徒たちにとって重要な試験です。8年生は朝6時から午後は17時まで学校に残り、勉強に励みます。私は通常授業が終わった後の、補習授業を担当していました。
初めて8年生に算数を教えたとき「基礎はできている子が多いな」という印象を受けました。しかし、算数は多くの生徒にとって苦手科目であり、卒業試験での算数の結果は毎年、どの教科よりも悪いです。「なぜだろう?」と要因を探っていくと、どうやら教科書の問題と試験問題の出題様式のずれに問題があるのでは、という考えに至りました。日本では当たり前のようにある試験対策用の問題集等はマラウイにはなく、生徒は教科書頼みです。練習していれば、慣れていれば解くことができたはずの問題で点数を落としてしまっているのだとしたら、それはとても勿体ないことだと思いました。

そうした課題への対策として、補習授業では過去問を使用し、出題形式に慣れることを目指した授業を行いました。「これは〇〇年の試験で出た問題だよ、解けるかな?」と問題を出すと、真剣な表情になる生徒たち。正解すると「ワー!」と毎回、満面の笑みで喜んでいました。
授業の後「もう一度教えて!」と聞きに来る生徒、「本当に彼らのためにありがとう」と差入れをくれようとしてくれる保護者。この試験に対する熱をひしひしと感じる度に、自分も生徒たちと頑張ろう、という気持ちになりました。
試験直前に行った予想問題プレテストでは、多くの生徒が高得点をマーク。「もしかしたら、今回は今までとは違う結果になるかもしれない。」と期待を抱きながら試験本番を迎えました。

試験が終了した当日夕方、出会った8年生にどうだった?と聞くと「できた!」と手応えのある返事が。その後、成績表が学校に届きました。結果は、80点以上のAを取った生徒が14人、70点以上のBが25人。前年度はB以上を取った生徒はいなかったので、大きな進歩でした。算数で落第点を取った子の数も減り、特に頑張っていた生徒たちの何人かは、ナショナルセカンダリーという、マラウイの中でもレベルの高い学校に選抜されることができました。そして今回、配属先のセントテレザ小学校は、マチンガ県の中で一番良い結果を出した学校となることができました。校長、8年生担当の先生方、生徒、保護者と、皆でこの結果を喜び合いました。

今回の結果に至るには様々な要因があったと考えられますが、試験問題に対応した授業を行ったことも、一つのそれになったのではないかと思います。この体験を基に、現在、過去の試験問題に沿った解説付きプリントを作成しており、将来的には、これを8年生の算数担当の先生に活用してもらうことができればと考えています。マラウイの公立小学校で試験勉強に取り組む一人でも多くの8年生にとって「算数の成績さえ良ければ…」ではなく、「算数が得点源になったから、試験をPassできた!」となるような一手を担うことができれば、と願っています。

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補習授業の様子。200人程度の8年生に教えていました。

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分度器を持っていない生徒たちとともに、手作り分度器を作成しました。

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真剣に板書をする生徒たち