ボランティアレポート「自らの力で未来を切り拓ける人材が育まれることを願って」

2020年1月16日

名前:安富 かなえ
隊次:2017年度3次隊
職種:PCインストラクター
配属先:ジングワングワ・セカンダリースクール
出身地:大阪府大阪市

「将来どんな仕事をしたい?」、配属先であるジングワングワ中高等学校でこの質問をしたところ、100名中30名以上の生徒が「医師」と答えました。

マラウイにおいて医師になるためには5年間医学部に通って医師免許を取得しなければなりません。医学部は日本と同様最も狭き門の学部であり、学費も他と比べて群を抜いて高額です。また、マラウイには大学が30校ほどしかなく、その中でも医学部は1つの大学にしかありません。国立大学であっても1年にかかる学費は平均所得の約2倍ととても高額です。そんな学力優秀でかつ金銭的に恵まれた一握りの人たちは極めて少なく、小学校に通う生徒が100名いたとすると、そのうち大学を卒業できるのは1名いるかどうかだと言われているほどです。こうした現状を踏まえると、生徒たちの回答はとても現実的ではないと感じました。そして、これほどにも将来なりたい職業として医師と答えるのは、他に職業を知らない、明確な将来の夢を描くきっかけがないのではないかと考えました。

日本では、小学生の頃から将来について考える機会が何度もあります。これは単に未来に想いを馳せるだけでなく、具体的な目標を掲げることで、その目標を達成するために必要なことを整理し、自ら未来を切り拓いていく力を養う場でもあります。しかし、マラウイではそうしたキャリア教育がなく、日常生活で出会う大人も多くないため、自分の将来について考える機会がそう多くはありません。また、たとえ将来なりたい職業ができたとしても、目標に向かってどのようなステップを踏んでいけばいいのかといったことを調べる機会もツールもあまりない状況です。こういったことも影響しているのか、マラウイ人の多くは長期的な計画を立てることを苦手としており、自分の将来に関しても「きっと誰かが何とかしてくれるだろう」といった受け身の姿勢の人が多いと感じています。

こうした問題を解決すべく、多様な職業やライフストーリーを紹介するための本を作成し、キャリア教育を行える環境を作ることが必要ではないかと考えました。そこで私は、様々な職業に従事している100名のマラウイ人にインタビューを行い、仕事内容やその仕事に就くまでのプロセスなどの情報をまとめたキャリアパスガイドブックの作成に取り組みました。完成したガイドブックは、配属先だけでなく、教育省南部地方教育局の協力の下、ブランタイヤ市内の中高等学校14校にも配布し、キャリア教育の意義や方法についての説明会を行いました。この説明会に参加した校長からは、それぞれの学校で行う具体的な活動プランを提示してもらえており、キャリア教育の礎を築くきっかけを与えられたと感じています。今回は予算の都合上、ブランタイヤ市内の限られた学校にしか配布できなかったので、配布した学校にはモデル校としてキャリア教育の取り組みを根付かせてもらい、今後その輪がマラウイ南部、そして全土に広がることを期待しています。そして、この本を通して、自分の力で考え、行動するという能動的な姿勢を身につけた人材が育成されることを切に願っています。

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南部教育局にて配布先各校の校長にキャリアブックについて説明

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南部教育局長へキャリアブックを贈呈