マラウイボランティアレポート「100人いても、一人一人を」

2022年7月12日

名前:寺門 香音
隊次:2021年度1次隊
職種:小学校教育
配属先:モンキーベイ教師研修センター
出身地:京都府

のんびりとした時間が流れる湖畔の町、マンゴチ県のモンキーベイで私は小学校の情操教育隊員として活動しています。現在はTDC(教師研修センター)の近隣にある5校で、Expressive Arts(音楽・図工・体育・ダンス・演劇・裁縫が一つになった教科、以下EA)の巡回指導をしています。

学校では、先生たちは私に対してとても優しくしてくれます。どの学校でもいまだに毎日「ウェルカム」と受け入れてくれ、好意的に話しかけてくれたり私の日々の暮らしを気にかけてくれたりします。

“全く時間割通りに進まない!”“先生がすぐにsickと言って休んでしまう!”“暑すぎるから今日は午前で解散!”など驚くこともたくさんありますが、それらにも慣れ、マラウイのペースで楽しく活動することができています。一方で、どうしても気になることが一つだけあります。それは、学校で、授業の中で、本当に一人一人が大切にされているのか?ということです。

どの学校でも、先生たちはチェックし終えた児童のノートを床に投げ捨てます。ノートやテストを返す際は、児童に向かって放り投げます。出席確認は行われず、授業は「分かる子」だけで進んでいきます。忘れ物をした生徒は、「彼らはレイジー(怠け者)だから」と言って教室から追い出されます。学習が理解できない児童や、言うことをきかない児童への体罰や言葉の暴力もしょっちゅうです。全員が授業に参加することや、一人一人の学習状況を把握することは、あまり大事にされていません。全員の先生がそのような行動をとるわけではありませんが、そんな様子を見る度に、私自身は「一人一人を大切にした授業を行いたい」と感じるようになりました。

「一人一人を大切にした授業」の実践をするために心掛けていることは、「誰一人残らず、全員が参加できる授業にする」ということです。特にEAでは、「目立った技能を持っている子だけ」「持ち物が持参できた子だけ」で進んでいく授業が多く見受けられたためです。持ち物については、経済的な理由等から全員が等しく材料を持参することは難しいです。そのため、全員が準備できるものを担任の先生と相談して決めたり、材料自体を作るところから授業の中で取り組んだりしています。例えば、絵を描くためには花びらや葉などから絵の具を作り、粘土の授業では粘土を作るところから始めます。裁縫道具が家に無い児童は、ボールペンの芯にゴム紐を縛り付けて縫ってもらいます。このようにして、全員が主体的に学べる環境づくりに力を入れています。

それでも、クラス100人のうち80人が忘れ物をし、教室に残った20人としか授業ができなかったという悔しい思いをした日もありました。一方で、学級の全員が材料を持ってきて、1人残らず作品が完成できたことも数回あります。そんな日はすごく嬉しいです。

私が一番好きなのは、一人一人と対話しながら授業を進める時間です。「マダム見て!こんなのできた!」「マダム!こんな風にしたいんだけど、どうすればいいかな?」と、生き生きと授業を受ける個性豊かな子どもたちの姿は本当に愛おしいです。児童全員が授業に参加できているからこそ味わえるよさです。最近は、「一時間教室にいてほしい」「子どもたちの頑張りをあなたに見てほしい」と先生たちに伝えています。授業中、自分の食事や同僚との会話を優先し、子どもの様子を見ようとしない先生もまだたくさんいますが、一人一人と向き合うよさや大切さが少しずつでも伝わればと考えています。

マラウイでEAを教えるのに、日本の教育現場で培った技術をそのまま生かすことはできません。そのため、授業の準備にいつもにかなりの時間を要します。ですが、全員が楽しく授業を受ける様子を想像すると試行錯誤の日々もとても楽しいです。

自分の作品が完成した時、よく頑張ったね!と言ってもらえた時、みんなの前でがんばりを紹介してもらえた時、子どもたちは本当に嬉しそうです。「今日の授業楽しかった!」「褒められて嬉しかった!」「次も楽しみ!」。そのような、子どもたちの日々の小さな幸せを積み重ねていくことができるよう、今後も元気に!楽しく!頑張りたいと思います。

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絵の具づくりの様子

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花瓶づくりの様子

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忘れ物なし!みんなで裁縫できた日