世界の食料生産は、気象など環境の影響を受けやすく、凶作期には特に開発途上国の食料安全保障を脅かし、都市貧困層や農村部の零細農家、零細漁業者に大きな打撃を与えます。
一方、農業・農村開発を取り巻く状況は、グローバル化の急速な進展、気候変動、食料価格の高騰、所得の向上に伴う食料に対する嗜好の変化、民間セクターの参入拡大、世界的な農地争奪など、大きく変化しています。多くの開発途上国では農業従事者が人口の過半数を占め、また貧困層の4分の3が農村部に居住しており、こうした変化の影響を最も受けやすい状況にあります。
持続可能な開発目標(SDGs)においてもゴール2として「飢餓をゼロに」が挙げられています。国民に安定的に必要な食料を供給する食料安全保障は、社会と経済の安定の基礎となる重要な政策課題です。
(注)年報2018「農村開発」より抜粋
食糧安全保障と栄養という包括的な概念を取り入れ、農業農村開発におけるアプローチの相互関連性と、食料へのアクセスや利用、食料共有の安定性の向上などへの取り組みをさらに強化していきます。具体的な取り組みは以下のとおりです。
CARD(アフリカ稲作振興のための共同体、2019年よりフェーズ2を開始)は、JICAを含む12機関が運営委員会を構成(AfDB, Africa Rice Center, AGRA, FAO, FARA, IFAD, IRRI, JICA, JIRCAS, NEPAD, WB, WFP)し、活動を支援しています。IFNA(食と栄養のアフリカ・イニシアチブ)も同様に、国際機関等10機関(AfDB, FAO, IFAD, JICA, JIRCAS, NEPAD, UNICEF, WB, WFP, WHO)で運営委員会を結成し、連携を図りつつ活動の運営が行われています。
最近では、SHEP(小規模農家による市場志向型農業を振興するための普及アプローチ)手法の活用に関するFAO及びIFADとの連携が進んでいます。
また、フードバリューチェーンに関しては、途上国の経済発展に伴う中高所得者層の比率が年々増加する傾向にある中、安全・安心な生鮮野菜・食品への関心が急速に高まっていることから、我が国を含めた先進国民間企業の途上国への展開が顕著である。これらの潮流を受け、当機構が有する中小企業向けの提案型事業における農業分野の採択案件数は全体の概ね20%程度を維持しており、これら民間企業の取り組みとJICA技術協力との連携がベトナム、インドネシア、ミャンマー等で行われている。