経済政策

【経済政策】

課題の現状

財政政策は、国民経済のリソース(資金)を政策的に再配分することによって開発政策を具現化し、経済・産業・社会の発展の方向を決定づけるものです。財政が破綻すれば、行政サービスの供給の低下、インフレなどによって、国民の財産や生活、企業の経済活動が悪影響を受けることになります。しかし、途上国の多くは財政基盤が脆弱であり、公共財政管理の強化を通じて、財政政策を執行するために資金の配分あるいは配分された資金の執行を効率的なものにすることが重要な課題です。

また、適切な金融政策と健全な金融システムは、経済社会の安定や持続的成長に不可欠です。1997年のアジア通貨危機の際は、一部ASEAN諸国では多くの国民が財産や職を失い、多大な経済的損失を被りました。危機の一因として挙げられたのが各国の金融システムの脆弱性です。その後の2008年の世界金融危機は、金融システム強化の必要性を再認識させる結果となりました。このように、あらゆる経済活動を支える重要基盤としての金融システムの整備・強化が不可欠です。

開発途上国へのさまざまな支援は、財政・金融システムの健全な運営と経済の安定があってこそ実効性が高まりますが、開発途上国では経済基盤が弱く、経済運営が不安定な場合が多いのが実情です。財政・金融分野への支援は、こうした開発途上国の財政・金融の体質強化を目指しています。

JICAの方針

(1)財政の効果的で持続的な運営

財政健全化が開発上重要な課題となっている国に対し、公共財政管理体制の強化支援を進めています。大別すると2つの方向があり、一つは財政の安定化および効果的な資金配分の実施を目指し、公共投資管理の改善を支援しています。もう一つは、公的資金の適正な管理能力を向上させることを目的として、公的部門の財務報告機能強化及び、内部監査機能強化などに関する支援を行っています。

開発途上国の政策実現・行政サービスの強化につながる財政基盤の強化を目指し、税収基盤の拡大と税収を伸ばすべく、JICAは税務・税関行政の改善を支援しています。また、ビジネス環境整備の一環として、国際課税や「税源浸食と利益移転」(Base Erosion and Profit Shifting:BEPS)等の税務行政の国際協調や、世界貿易機構(WTO)が推進する貿易円滑化協定(Trade Facilitation Agreement:TFA)に基づく貿易円滑化も支援しています。

(2)金融政策の適切な運営と金融システムの育成

経済成長を支える金融システムの強化を目指し、金融市場と金融機関の健全な育成を支援しています。また、経済成長を支える資金取引の増大・加速に対応する金融インフラとして中央銀行等の決済システム整備も支援しています。その他、金融政策の近代化・高度化を目指す国を対象に、金融政策運営能力の強化のための支援を行っています。

課題別指針

ポジションペーパー

SDGsポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

(1)財政分野

1990年代後半以降、開発課題としての公共財政管理(Public Financial Management=PFM)の重要性が広く認識されるようになりました。その背景には、途上国が国家開発計画に掲げた開発目標を達成する上で、財政規律維持、戦略的資源配分、効率的サービスデリバリーによる安定的かつ持続的な財政運営が不可欠であり、そのための制度・仕組みとしてPFMが重要という考え方があります。2013年以降は、世界銀行を含む7つの二国間・多国間機関で構成するPublic Expenditure and Financial Accountability(PEFA)がPFM改革のシークエンスに係る好事例を取りまとめています。また、公共投資への支出のあり方についても国際的な議論が進んでおり、2010年以降世界銀行と国際通貨基金(IMF)が公共投資管理システム診断の枠組みを開発しています。

一方、歳入面では、課税・徴税能力向上等を通じた途上国の国内資源動員がSDGsのターゲットとなる等、重要性が高まっています。加えて近年、企業活動のグローバル化に伴う国際課税のあり方についてもG20等で議論が行われ、「税源浸食と利益移転(BEPS)」に係る国際的な協調枠組みが進展しています。税関分野では、徴税の観点に加え、ルールに基づく国際的貿易体制構築の重要性が広く認識され、WTOによる貿易円滑化協定が2017年に発効し、これに基づく途上国への技術支援が期待されています。

(2)金融分野

以前より行われていたIMFのIV条協議に加え、アジア通貨危機後の1999年より世界銀行とIMFは金融セクター評価プログラム(FSAP)を実施し、各国の金融システムの脆弱性の分析や政策助言を行っています。また、アジア通貨危機の教訓として長期の資金需要を短期かつ外貨建の銀行借入に過度に依存するリスクが認識され、アジア域内の貯蓄を域内投資に動員するための取り組みとして、2003年にASEAN+3によりアジア債券市場イニシアティブ(ABMI)が開始されました。

近年、「金融包摂」と「フィンテック」が金融分野において世界的に注目を集めています。「金融包摂」は、必要な金融サービスに個人や企業がアクセスできる状態を指しています。貧困削減における金融アクセスの重要性が認識されるようになり、SDGsでも複数の開発目標で「金融包摂」が目標達成手段として挙げられています。最近のデジタル技術の発展に伴う「フィンテック」は新たな金融サービスの低コストでの提供を可能にし、金融包摂に貢献することが期待されます。