教育

【教育】

課題の現状

(1)教育協力の意義

教育はすべての人が等しく享受すべき基本的権利であり、人間一人ひとりが自らの才能と能力を十分に伸ばし、尊厳をもって生きていくための基盤となるとともに、持続可能な社会・経済発展に欠かせない要素です。また、教育を通じた多様な文化や価値を尊重する態度の醸成は、インクルーシブで平和な社会の基礎となります。

2015年に国連は持続可能な開発目標(SDGs)を策定し、「すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」という新たな教育目標(SDG4)を掲げました。SDG4は就学前教育から高等教育までの幅広い分野を対象とし、これまで以上に教育の質の保証を追及するという野心的で難易度の高い課題の解決を目指しています。さらに、教育はすべてのSDGsの達成に不可欠であることから、国際社会は教育開発への取り組みを強化しています。

(2)教育協力の課題

しかし、世界ではいまだに2.63億人もの学齢期の子どもや若者が不就学の状態にあり(UIS、2018a)、6.1億人以上の子どもと若者は必要最低限の読解力や計算力を習得していないと推計されています(UIS、2017)。加えて、貧困、ジェンダー、障害、民族・言語、居住地域などによる格差の問題なども生じており、すべての子どもに対する良質な教育の保障が課題となっています。

また、若年失業率は増加傾向で、2016年には約13.1%に上る状況にあり(ILO、2016)、職業技術教育・訓練へのアクセス拡大や質の改善が必要とされています。一方、高等教育へのアクセスは着実に向上していますが、引き続きアクセスが限定的な地域もあり(例えばサブサハラアフリカ地域の2017年の総就学率は9.0%(UIS、2018b))、また、教員の育成、施設・機材の整備、研究資金の確保等が必ずしも伴っておらず、教育・研究の質の面でも依然大きな課題が残されています。

出典:

JICAの方針

(1)ビジョン、方針

JICAは、日本政府の教育戦略(「平和と成長のための学びの戦略」)に基づき、2030年までのSDG4の達成に向けて取り組むために、2015年10月に教育協力ポジションペーパー、2016年9月にSDGsポジションペーパーGoal4(教育)を策定しました。教育協力ポジションペーパーでは「途切れない学び(Learning Continuity)の実現」という新ビジョンを据え、教育の段階や国の状況によって質の高い学びが途切れることのないよう、また、人間の安全保障の考えに基づき、一人一人の成長を重視し、教育と保健や農業をはじめとした他分野との連携による横断的な支援を目指しています。

(2)アプローチ

JICAは、教育協力を実施するにあたって、教育セクターを包括的に俯瞰し、人々のニーズに応じた質の高い「途切れない学び」を相手国が実現できるよう、「子どもの学びの改善」「科学技術イノベーション・産業発展を担う人材の育成」「インクルーシブで平和な社会づくりのための教育」の3つの柱を重点に、日本の行政・大学・民間などの知見を活かした協力や、中核人材の育成に取り組んでいます。

また、国・地域を超えた「グローバルな学び合い」を推進し、協力の成果に関するエビデンスを蓄積するとともに、相手国政府をはじめ多様なアクターと連携して、イノベーティブな解決策を創出していきます。

【画像】

途切れない学び(Learning Continuity)概念図

ポジションペーパー

SDGsポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

(1)教育協力の潮流

2000年以降、万人のための教育(Education for All:EFA)とミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)を世界共通の目標として掲げ、国際社会が初等教育におけるアクセス拡大に集中的に取り組んだ結果、2015年までに教育のアクセス面の課題は大幅に改善されました。

しかし、依然として教育の質、教育における格差、若者の雇用などの課題が残されています。2015年に策定されたSDG4と世界教育フォーラムにて採択された「Education 2030行動枠組み」は、EFAやMDGsの後継として、教育へのアクセスのみならず、質の高い教育と「学習の成果」、教育における(あるいは教育を通した)包摂性と公平性の担保に重点を置いています。SDG4-Education2030の達成に向けて、近年多様なアクターがより効果的な政策・戦略策定およびその実施に向けて議論を活発に行い、取り組みを強化しています。

(2)国際社会の動向

国連教育科学文化機関(UNESCO)はSDG4-Education2030の主導機関であり、かつEFAダカール目標の進捗状況をとりまとめた「グローバル・モニタリング・レポート(GMR)」の後継文書である「グローバル・エデュケーション・モニタリング・レポート(GEM)」を2016年より発行しています。また、「教育のためのグローバル・パートナーシップ(Global Partnership for Education:GPE)」のように開発途上国、ドナー、国際機関、市民社会組織、民間財団、民間企業などマルチステークホルダーが参画する国際的な枠組みも設置され、多様なパートナーとの効果的な連携が進められています。

2018年10月には、世界銀行が「人的資本は持続可能で包括的な経済成長の重要な推進力である」とし、人的資本プロジェクト(Human Capital Project)を立ち上げ「人的資本指標(Human Capital Index:HCI)」を発表しました。世界銀行は、各国に対し、より積極的かつ効果的な人への投資をただちに行うよう求めています。子どもの健康状態や学習成果の向上が長期的な国民および国家の所得の大幅な改善に結び付くことをHCIの分析が提示したことを受け、今後、教育協力のさらなる進展が期待されます。