保健医療

【保健医療】

課題の現状

世界では、人口の約半分が質の高い基礎的な保健医療サービスを利用できず、今なお多くの人々が予防可能な病気で命を落としています。妊娠・出産で命を落とす年間30万人の妊産婦や、5歳未満で亡くなる年間590万人の子どものうち、99%が開発途上国の人々です。MDGs達成に向けた国際社会と途上国自身の取り組みにより、改善傾向にあるものの、地方部・へき地居住者、低所得者層、社会的マイノリティなど、保健医療サービスから取り残された人々が多くいます。

また、世界では年間950万人が感染症で死亡しています。感染症の突発的な流行は甚大な社会経済的被害をもたらし、新興・再興感染症の流行は人間の安全保障を脅かしています。2014年の西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行は、特にアフリカにおける公衆衛生危機に対する備えと対応の強化の重要性を国際社会が強く再認識するきっかけとなりました。

また近年、日本だけでなく多くの国で高齢化が進み、それに伴って非感染症疾患(生活習慣病、がん等)が急増し、医療技術の進歩は恩恵をもたらす一方で多額の医療機材の維持管理費などにより多くの国に財政負担の増大をもたらしています。個人のレベルでも、毎年約1億人が医療費負担の結果、極度の貧困に陥っています。

こうした現状を改善するために、国際社会はSDGsのゴール3に「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-being)」を掲げ、世界の健康課題への対応に取り組んでいます。

JICAの方針

JICAはユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)(注)達成に貢献するため、「すべての人々に健康を」という目標を共有し、感染症の突発的流行や疾病構造の長期的変化等にも対応できる強靭で持続可能な保健システム強化に向けた相手国主導による取り組みを支援し、そして人々の生活にかかわる環境衛生の改善に向けた協力を以下の視点から行います。

(1)相手国側のUHC達成を支援するための取り組み

  1. 質の高い保健医療サービスを提供するための体制強化
  2. 医療費負担を軽減するための医療保障制度の整備
  3. 公衆衛生危機対応能力の強化
  4. 上記1~3を支える保健ガバナンスの強化

(2)グローバルな学び合いの促進と効果のスケールアップ

  1. UHC、母子保健、感染症対策、非感染性疾患、高齢化対策等に関する国際的推進メカニズムや主要国際会議に積極的に参画し、現場から得られた知識・経験や調査研究成果の国際会議等での発信を積極的に行い、国際援助潮流形成に寄与します。
  2. 国・地域を越えて南南協力や経験共有セミナーを積極的に行い、多様なアクター間における学び合いを促進することで協力効果のグローバルな展開とスケールアップを目指します。

(3)マルチセクトラル・アプローチの重視

人々の健康な生活の実現は、環境因子(有害化学物質や大気・水質・土壌汚染)への対策や保健サービス提供への備え(防災への準備)も重要です。また、妊産婦や子どもの死亡率削減や感染症対策などにおいては、特に女性の能力強化(教育)、栄養改善、安全な水や衛生の確保、交通インフラ整備などが関係し、高齢者や障害者の健康な社会生活のためにはバリアフリー化などの社会インフラの改善も重要です。

(注)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage:UHC)
「すべての人が、健康増進・予防・治療・機能回復にかかる基礎的な保健サービスを、必要なときに負担可能な費用で受けられること」を示す概念

ポジションペーパー

SDGsポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

保健分野の開発途上国への支援資金は1990年から2015年にかけて5倍以上に増加し、また国際保健に関わるアクターも非常に多様化しています。世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)などの国連機関の他、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金:Global Fund)やGAVIワクチンアライアンスなどの国際イニシアティブ、世界銀行等の開発金融機関、米国、英国等の二国間援助機関、ビル&メリンダ・ゲイツ財団等の民間財団、さらには市民社会・民間セクターなど様々な関係者が保健分野の国際協力に関わっています。

SDGsゴール3においてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)が一つのターゲットとして位置付けられ、2030年までのUHC達成が国際社会の共通の目標となっています。JICAは、途上国におけるUHCの達成を支援するため、多様な関係者と協調しながら、途上国の人々の健康を守るための持続可能な体制を構築するべく保健課題の解決に取り組んでいきます。