栄養改善

【栄養改善】

課題の現状

世界に広がる低栄養と過栄養の二重の負荷

栄養不良の問題

現在、5歳未満児の年間死亡の45%が低栄養に関係しているとされる一方で、途上国を含む世界各国で子どもの過栄養が増加しています。低体重・低身長や微量栄養素欠乏症として発現する低栄養(Undernutrition)と、過体重や肥満さらには生活習慣病等を引き起こす過栄養(Overnutrition)は、いずれも人間の生命・健康に大きな影響を及ぼします。
特に、「最初の1000日」(胎児期280日+生後2年間)間の栄養不良は子どもの身体的・知的発達に遅れを引き起こす他、その後の就学状況や労働収入ひいては国家経済の発展にも多大な影響を及ぼすと言われています。

栄養不良の現状

栄養不良は大きく低栄養と過栄養に分けられます。
低栄養については、2016年時点で世界の約8億人が慢性的なエネルギー摂取不足(最低エネルギー必要量を摂取していない)状態にあると推定され、5歳未満児の23%が発育阻害(年齢に比して低身長)、15%が低体重出生、8%が消耗症(年齢に比して低体重)、妊婦の40%が微栄養素欠乏症の一種である貧血に陥っています。
他方で、過栄養については、5歳未満児の5%以上が過体重(BMI≧25)であるほか、18歳以上の大人の13%以を占める約7億人が肥満(BMI≧30)陥っています。このように世界全体で栄養の偏りが見られ、二重の負荷(double burden)が生じています。

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地域的には、世界の発育阻害児の90%が、アフリカ・アジア地域を中心とする34カ国に集中しています。アフリカ以外の地域では近年5歳未満児の発育阻害児数が減少する一方で過体重児数が増加する傾向が見られますが、アフリカ地域においては、発育阻害の5歳未満児数と、過体重児数の両方が増加傾向にあります。

JICAの方針

栄養不良の複合的な要因

UNICEFによる低栄養のConceptual Frameworkに示されるように、栄養不良は様々なセクターの課題が複雑に絡み合って生じる課題です。では、栄養不良の複合的な要因がフローチャートで示されています。
この図によれば、個人の栄養状態が、食料の入手のほか、母子のケア、母乳育児・補完食、保健サービスへのアクセス、そして安全な水や衛生環境などから影響を受けることがわかります。こうした要素の欠如は不十分な食事摂取や様々な疾病と結び付き、さらにそれが直接の原因となって栄養状態の悪化を引き起こすとされています。
さらに、このようなプロセスで栄養不良が生じる背景には、世帯・個人レベルで土地や教育、雇用状態、収入、科学技術等の資源・資本へのアクセスのほか、社会的、経済的、政治的な様々な状況等が複合的に関係しています。

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マルチセクトラルな介入の必要性

SDGsゴール2では、グローバル栄養ターゲット等で設定された5歳未満児の発育阻害や小児期の消耗症等に関する目標を達成した上で、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、青年期の女子、妊産婦、高齢者の栄養ニーズへの対処を行うことを定めています。しかし、上記のフレームワークに示した通り、複合的な要因から構成される栄養不良はゴール2だけの問題ではなく、保健や教育、水衛生、ジェンダー等、他のゴールとも密接に関わっており、これらのマルチセクトラルの介入により栄養改善に取り組むことが重要です。

JICAにおける栄養改善に向けた取り組み強化

国際的に設定されている栄養関連目標の達成は遅れており、栄養分野の協力を拡大する必要があり、JICAはこの課題にマルチセクトラルなアプローチで取り組んでいきます。
JICAは、過栄養については非感染性疾患(NCD)対策の一環として取り組む一方、低栄養については、もっとも栄養不良への脆弱性が高く、かつ生涯にわたる健康への悪影響が大きいため、栄養対策が最も効果的とされる「最初の1000日」(受精・胎児期から2歳まで)を重点とした取り組みを行います。
また、2020年に日本で開催予定の栄養サミットへ向けて、栄養改善に係る貢献度を一層増していくことが求められています。同サミットへの貢献及び成果の展開に向けて、国際機関や民間企業等のパートナーと連携しながら、深刻な栄養不良を抱えるアフリカ・アジア地域を重点に、途上国政府のマルチセクトラルな栄養対策能力強化を通じた栄養不良人口の削減を支援し、SDGs(ゴール2、ゴール3他)、国際栄養目標2025をはじめとする国際目標の達成に貢献していきます。また、アフリカ地域においてはTICADプロセスによる栄養改善の取り組みを推進します。

国際社会・開発協力の動向

JICAは、国連専門機関等の知見及び資金的リソースの活用を積極的に進めています。栄養指標が極めて悪いアフリカ地域を対象に、TICAD VIにおいてNEPADと共同で発足させた「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)」においては、運営委員会を構成する国際機関等と連携し、重点10か国(注)による国別取り組み方針の策定とその実行を支援し、マルチセクトラルな取り組みによる優良事例の創出及び他国への普及に取り組んでいます。更にイニシアティブの推進役として、日本政府との調整、NEPADと連携したIFNA事務局のバックアップを行うほか、国際的な連携促進のために、対外的な発信に注力していきます。

(注)重点10か国:ブルキナファソ、エチオピア、ガーナ、ケニア、マダガスカル、マラウィ、モザンビーク、ナイジェリア、セネガル、スーダン

また栄養改善に向けた民間の力の動員にも取り組んでいます。その一環として、産学官の連携を促進する「栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)」に運営委員会の共同議長として参加することで、日本企業が取り組む途上国における栄養改善事業を促進しています。またJICAの持つ民間連携スキームも活用し途上国における栄養改善に貢献していきます。