民間セクター開発

【民間セクター開発】

課題の現状

開発途上国が質の高い持続的な経済成長を実現するためには、その原動力として、民間企業の経済活動の持続的な拡大・高度化と雇用の幅広い創出を促す「産業振興」が必要です。なかでも製造業は、高い雇用吸収力と付加価値、豊富なバリューチェーン(関連するサービス産業を含む)や、外国交易(輸出可能性)、技術革新などを生み出す可能性を総合的に有している産業です。また、労働者一人当たりの付加価値の高さ、関連バリューチェーンにおけるサービス産業の豊富さといった特徴を包含し、その振興は経済成長を指向する産業政策の要であると同時に、SDGsゴール8(包摂的かつ持続的な経済成長、働きがいのある人間らしい雇用)及びSDGsゴール9(強靭なインフラ、工業化、イノベーション推進)の達成に向けて重要な役割を担っています。

また、アジアをはじめとする開発途上国の工業化にみられるとおり、先進国企業・市場と地元の裾野産業・中小企業を有機的に連携させ、バリューチェーンの形成が実現できれば、開発途上国企業の技術向上、産業多様化、市場アクセスの拡大につながります。また、近年発展の著しいデジタル技術等を活用したビジネス開発やスタートアップ企業による新たな産業の創出や開発途上国における課題解決にも注目が集まっています。

加えて、観光産業も国内資源を活用した外貨獲得、関連企業種の幅広さ、雇用吸収力等の点で経済波及効果が高く、多くの国で有望な産業となっています。

JICAの方針

JICAは図に示す民間セクター開発の基本的なフレームワークに沿ってJICAは取り組みを進めています(観光分野を除く)。

民間セクター開発にあたっては開発途上国企業の成長が中核となります。企業成長のためには当該企業の競争力(Firm Capabilities)を高めることが必要です。JICAは、(1)カイゼンに代表されるような生産・管理能力、(2)マーケティング・財務・ビジネスプラン・人的資源管理等を含む経営力、(3)ビジネスモデルの革新・起業といった急進的イノベーションを起こす力が競争力の源泉ととらえ、これらの強化を支援しています。(図の3、5)

また、企業が事業を拡大するためには、市場へのアクセスがその牽引力となると同時に、事業拡大に伴って必要な資金を確保するための金融アクセス改善が必要となります。JICAではビジネスマッチング等リンケージ強化(図の4)を通じて市場へのアクセスを高めているとともに、円借款(ツーステップローン)による地場金融機関を活用した融資、ベンチャーキャピタル等直接投資を行う金融機関との連携等(図の2)によりこれらに取り組んでいます。

企業活動を行う前提であるとともに、個別企業で対処ができないのが、その国のビジネス環境です。JICAは産業政策、経済特区整備、投資促進政策等政府によるビジネス振興政策の質的向上を支援するとともに、インフラ整備への資金協力をおこなっています。また、開発政策借款により、ビジネス環境改善を支援しています。(図の1)

観光分野については、観光による正のインパクトを最大限引き出すとともに、負のインパクト(環境・遺産等の破壊、交通渋滞等)を制御し、持続的な開発を行うために総合的な協力を進めています。

【画像】

図:民間セクター開発における基本的なフレームワーク

課題別指針

ポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

2016年8月に開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)では、「ナイロビ宣言(2016-2018)」として「経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進」が3つの優先分野のうちの一つとして明記され、民間投資、起業、ビジネス改革、イノベーション、官民連携、資金へのアクセスの増加を含む民間セクターの役割の強化に取り組むことが表明されています。

また、2015年の第3回開発資金国会議で採択された「アディスアベバ行動目標」では、国際社会に対し、SDGsの達成に必要となる「数兆ドル」を動員するため、公共セクター以外の資金源にも目を向けることが提言され、開発途上国への資金フロー全体の中でODAが占める割合が相対的に低下する中、ODAの触媒機能を最大化し、開発途上国自身の国内リソースや民間投資をはじめとした多様な外部リソースを開発資金として動員・増加させることも重要になっています。

こうした流れの中で、民間企業をはじめとする関係者との連携を図りながら、アジア・アフリカを始めとする開発途上国の経済成長の原動力として、民間セクターの成長発展を促進することの重要性はますます高まっています。