運輸交通

【運輸交通】

課題の現状

開発途上国では、道路、鉄道、港湾、空港などの運輸交通インフラ整備の需要が高い一方で、それに供給が追いつかないというインフラギャップが発生しています。インフラギャップは国内の都市と地方の間のみならず、国・地域間、世代間にも生じます。インフラ整備の遅れは、その国の経済発展や貧困対策に大きく影響します。持続的な発展・成長と貧困対策のためには、国・地域の経済や人々の生活の基盤となる運輸交通インフラの整備が不可欠です。また、インフラギャップを埋めていくために、各国内外の今後の需要やニーズの変化を考慮に入れた長期的な視点をもち、適切なインフラマネジメントを行っていくことが必要です。

国連で合意された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)(2015年9月)のゴール9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化(工業化)の促進及びイノベーションの推進を図る」のターゲットの1つとしても、すべての人々にとって安価で公平なアクセスに重点を置いたインフラ整備の必要性が述べられています。

運輸交通インフラの整備に対する需要だけでなく、老朽化した施設の維持管理や改修、更新のニーズも急増しています。運輸交通インフラの整備には多大な資金を要するため、財源確保が大きな課題です。限られた公的資金で必要なすべてのインフラを整備することは困難なため、民間資金の導入などさまざまな財源を確保し、運輸交通サービスを効率的に提供していくことが求められています。

また、SDGs達成のためにはインフラ整備を推進するのみならず、公共交通機関の導入や交通手段の転換を通じて、渋滞解消や物流効率化によるCO2削減、大気汚染物質の抑制など、相手国の環境社会配慮に対する取り組みや交通安全対策を推進していくことも重要です。さらには、イノベーション推進のために、情報通信やロボット等の最新技術の利活用や国・大学等の研究機関や企業と連携した協力にも取り組んでいます。

JICAの方針

JICAの協力は、人や物を迅速、円滑、安全に移動させることにより、経済社会活動を活発化させ、人々の所得向上や生活環境の改善に貢献することを目指しています。

開発途上国で運輸交通インフラの整備を行う場合、単に道路や橋を造るだけでは十分ではなく、「かしこく使う」までを考えた整備が重要です。合理的な運輸交通システムの計画策定が必要なほか、長く使い続けることのできる設計や完成したインフラを適切に維持管理・運営する人材の育成、組織の強化、組織を支える社会・制度、財源確保の仕組みの構築が求められます。JICAは、女性や子ども、障害者、マイノリティグループにも優しいユニバーサルなインフラの実現に焦点を当て、“何のために、誰のために”を考え、住民参加による協力の実施やNGOとの連携なども積極的に進めています。

また、運輸交通分野の協力では、開発協力大綱(2015年2月)にうたわれた「包摂性、持続可能性、強靱性を兼ね備えた質の高い成長」を念頭に置き、開発途上国の「政策策定能力」「人材や組織能力」「インフラの整備」の強化を推進する方針です。具体的には、物流・人流の国際化や国境をまたぐ地域経済圏の発展を促進するための「国際交通」、人々の移動の可能性を公平に確保し、国土の調和ある発展に対応する「全国交通」、都市の持続的な発展と生活水準の向上に対応する「都市交通」、開発から取り残されてしまいがちな地方の生活水準を向上させるための「地方交通」、高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)をはじめとする情報通信技術の利活用などに取り組んでいます。

さらに日本政府は、2013年6月以降毎年「日本再興戦略」を閣議決定し、このなかでODAを戦略的に活用して「インフラシステム輸出戦略」を迅速かつ着実に実施するとしています。これを受けて、JICAでは道路、鉄道、港湾、空港などの運輸交通インフラ整備において、途上国の開発ニーズに対応しつつ、わが国の優れた技術・制度・運用等の「日本方式」の普及にも配慮しています。具体的には、ODAを通じてこれまでの交通インフラ整備に関するハード・ソフト面での支援で培った相手国政府との協力関係を基に、日本企業の海外事業展開も支援しています。

課題別指針

SDGsポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

国際社会では、一時、インフラに対する援助離れが進みましたが、21世紀以降運輸交通インフラの必要性が再認識され、貧困削減とインフラ整備の関係性が重視されています。主要援助機関はSDGsを達成する上での運輸交通インフラの役割を再評価しており、援助における運輸交通分野の割合は大きくなっています。また、特に地域経済統合化に向けた協調、連携を深めつつ、維持管理、人材育成、民活による事業化施策等に力を入れています。貧困層を直接的なターゲットとした地方部における支援も活発化しています。

2015年のSDGsの策定以降、各国に加え各ドナーともSDGs達成に向けた方針を打ち出しています。例えば世界銀行は、運輸セクターはSDGsをめぐる議論の中心に据えられるものであり、より安全でクリーンかつ効率的な輸送手段の構築に取り組むとしています。

また、JICAは各ドナーとの連携強化に取り組んでいます。世界銀行とはハイレベル対話を実施し、運輸交通分野ではSTI(Science, Technology & Innovation)の適用・促進を進めています。また、SDGsの指標の一つであるRAI(Rural Access Index)の開発を検討しています。アジア開発銀行(ADB)とは「質の高いインフラパートナーシップ」のフォローアップ施策での連携を進めています。質の高いPPP等民間インフラ案件への投融資の促進、質の高い公共インフラ整備に向けた長期支援計画の策定、これらの取組による質の高いインフラ投資を円滑に実施するため、日本政府・JICAとADBのハイレベル政策対話を定期開催しています。