【TICAD7に向けて~私とアフリカ~:Vol.11】地熱発電の開発・運用で2022年までにケニアの全世帯に電力を供給する:若松英治JICA産業開発・公共政策部職員

2019年8月15日

「ケニアでは日本の支援で世界有数の地熱発電の開発・運用が進んでいます。しかし、配電網の整備がまだ十分ではなく、地域によってはスマートフォンのバッテリーを10%充電するのに丸一日かかるという話も聞きます」

そう話すのは、JICA産業開発・公共政策部の若松英治職員。「エネルギーへのアクセス」はアフリカの開発において重要なテーマの一つです。電気が届かなければ、産業の発展どころか、医療や教育も向上しません。二酸化炭素の排出量を削減しながら、誰もが安定した手ごろな電気をいかに使えるようにするかが課題となっています。

メネンガイ地熱地帯における技術協力プロジェクトを視察した若松職員(右端)

シリーズ【TICAD7に向けて~私とアフリカ~】の第11回は、ケニアの地熱開発など、東アフリカの電力支援を統括する若松職員に、同国における配電網整備のプロジェクトと電力開発について聞きました。

「最後の1マイル」の先に笑顔がある

ケニア政府は国内の低い電化率が経済と社会の発展を妨げている大きな要因であると考え、2014年から大規模な電化政策を実施。その結果、2014年には32%だった全国電化率は、2018年には75%まで達しました。世界銀行やアフリカ開発銀行、日本政府やフランス政府などの支援により配電網が整備されましたが、まだ十分ではありません。

そんななか、現在、政府が進める電化政策の一つが、JICAも協力する「ラストマイル・コネクティビティ・プロジェクト」。配電線の延伸や世帯の所得レベルに応じた電気料金や分割払いの提供などによって電化を促進し、2022年までに同国の全世帯に電力を供給します。

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ケニア南東部にあるキリフィ郡の小学校とその付近は未電化だが、ラストマイル・コネクティビティ・プロジェクトを通して電化される予定

「なぜ電気が行き渡らないのか、一番の理由は家の近くまで電気を届ける配電網が整備されていないからです。また、電柱が立って電気が近くまで来たとしても、電線を各家庭に引き込むための初期代金(接続料)は、かつて約3万5000円と極めて高額で、しかも一括払い。契約できる人は収入のあるごく一部に限られていました」と若松職員は述べます。

プロジェクトの実現に向け、若松職員はJICA側の代表者として同国の実施機関と協議を重ねました。ケニア政府エネルギー省の関係者や送配電のケニアパワー社の担当者たちから課題をヒアリングし、今後の施策などについて意見交換を繰り返しました。

現在、接続のボトルネックであった接続料に関しては、所得に応じた免除や24か月の分割払いの仕組みが導入され、電化促進を後押ししています。

「ラストマイル・コネクティビティ・プロジェクト」と記された車両。未電化地区に足を運ぶ際、いつも使用していたと言う若松職員

また、未電化地区や変電所や電化工事の現場などに足を運ぶなか、現場では様々な発見があったと若松職員は言います。

「エンジニアの方々がとても勉強熱心で、古い柱上トランス(変圧器)などを大切にメンテナンスしている姿を目にして感激しました。また、電気が通じていない町や村を実際に見ることができたので、『そこに住む方たちを笑顔にしたい』とはっきりイメージしながら、仕事ができるようになりました。たくさんの人たちが電気の恩恵を享受して喜んでくれたら、こんなにうれしいことはありません」

地熱発電の効果と日本への信頼 

地熱発電はCO2排出量が少なく、天候に左右されずに安定しているなど多くの長所がある半面、探査や試掘が難しいという側面があります。日本は1910年代から国内で開発を進めてきたため膨大なノウハウの蓄積があり、その技術と経験は世界トップレベル。この分野における日本製の部品は発展途上国だけでなく、先進国でも信頼されています。

若松職員によると、ケニア全体の地熱発電の設備容量およそ680メガワットのうち、約1/5は日本の支援によるもの。さらに日本の支援で261メガワットを建設中です。

「オルカリア地区の地熱発電所から蒸気がもくもくと上がっているのを初めて見たときは感動しました。その多くが日本の支援によって実現しているということも、日本人として誇らしくもありましたね」と若松職員はその時を振り返ります。

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オルカリア地熱発電所視察した若松英治職員(左から2人目)。オルカリア発電所だけで、日本全国の地熱発電の設備容量を超える規模

若松職員にとってもう一つ印象的だったのが、ケニアが日本に寄せる信頼。「日本の支援に対するケニアの期待は大きく、地熱のマスタープランの更新や、地熱発電所の運営維持管理を依頼されるなど、全幅の信頼を寄せてくれていることを肌で感じました」。そんなケニア人たちと一緒に仕事をすることで、人間的にも成長することができたと言います。

アフリカの可能性を形に

仕事でも人生でも「情熱とチャレンジ精神」を大切にしてきたと言う若松職員。小学4年生の時に子供用の科学雑誌でアフリカのゾウの密猟の話を読んだことが、国際協力の道に進むきっかけとなりました。そのため、アフリカに対する思いも特別です。

未電化地域の様子。すぐ近くまで配電線が届いており、JICA事業によって電化される予定

「アフリカはまだ若く、高いポテンシャルを持っています。アクションを起こせば成果が目に見える場所なので、いろんなことに挑戦して、可能性を形にしていきたいです」

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の活用によるオルカリア地熱発電所の効率の改善といった技術協力事業など、若松職員は今後もケニアを含めたアフリカの地熱発電の発展に取り組み続けます。

プロフィール
若松 英治(わかまつ えいじ)
2002年、JICA入構。人間開発部、アフガニスタン事務所駐在、世界銀行出向、アフリカ部勤務などを経て2017年より産業開発・公共政策部、資源・エネルギーグループ。主にアフリカの電力に関する企画立案などを担当。兵庫県出身。

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