【TICAD7に向けて~私とアフリカ~:Vol.12】強靭な国づくりをめざす平和構築プロジェクトで、苦難の先に見えてきたコートジボワールの未来:土肥優子JICA国際協力専門員

2019年8月27日

日本では研修や講演、現地では幅広い関係者との協議や意見交換など、さまざまな「対話」を中心に活動する土肥専門員(左)

第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)開催が間近に迫るなか、シリーズ「TICAD7に向けて~私とアフリカ~」も最終回を迎えます。第12回は、長年、紛争影響国の「平和構築」に関わってきた土肥優子国際協力専門員に、西アフリカのコートジボワールでの取り組みについて聞きました。

「共存の意識」が芽生えた住民集会

カカオやコーヒー豆の生産地としても知られ、2014年ブラジル・サッカーワールドカップ大会では日本代表の対戦国でもあったコートジボワール。近年、めざましい経済発展を遂げている一方、2011年にアラサン・ワタラ大統領が就任するまでのおよそ10年間にわたって内戦が続き、国土が事実上、南北に分断されるという歴史を経験しました。

高層ビルも立ち並ぶ経済都市・アビジャンですが、大統領選挙後の内戦時は市街戦の激戦地。今なお、地区によっては背景の異なる住民間で緊張が残っています。「住民グループ同士の不信感や若者たちの失業による治安問題なども顕在化しているため、何かのきっかけで紛争が再発してしまうリスクもあるのです」と土肥専門員は述べます。

そのような背景のもと、JICAが2013年にスタートさせたのが「大アビジャン圏社会統合促進のためのコミュニティ支援プロジェクト」です。住民自ら学校や道路などのインフラ整備に向けた話し合いを重ねるなど、民族や宗教の違いに関係なく、中立性・透明性を保ちながらの協働により、「お互いに共生していける」共存の意識を芽生えさせることを主軸としました。土肥専門員はプロジェクト当初から関わるなか、モデル地区の住民たちは会話を交わすようになったなど行動が変化したと言います。プロジェクトの実施地区が増えるなか、共存の意識も広がっています。

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アビジャン・アボボ地区での住民集会。民族や宗教の違いを越えて、コミュニティ内で共存の意識を持ってもらうための取り組みが続く(2019年5月撮影)

日本の公務員の働く姿勢が意識を変えた

JICAはコートジボワール第二の都市・ブケアを拠点に「中部・北部紛争影響地域の公共サービス改善のための人材育成プロジェクト」も実施しています。内戦時代に反政府勢力の実効支配となったこのエリアでは一部インフラが破壊され、給水や学校運営、医療などの地方行政サービスも極端に滞ってしまいました。結果、中央における開発や経済成長から取り残される事態に追い込まれ、ひいては地方行政に対する地元住民の不満が増大する状況となっていました。

「地域間格差や地方における住民の不満は過去の内戦の直接的な原因ではありませんが、地方行政官の能力向上による公共サービスの改善は、国家情勢の安定のためにきわめて大切なことです」と、土肥専門員は同プロジェクトの狙いを語ります。

しかし、プロジェクト開始当初は、JICA支援に対する現地の期待は大きくなかったと土肥専門員は振り返ります。「それどころか、まったく関心を示してもらえなかったと言ってもいいくらい。州知事との面会では、忙しそうに何かしらの別の書類に目を向けて話も聞いてくれませんでした。その後も『打合せはいいから早く井戸を掘ってほしい』とか『学校の改修はいつから始めてくれるんだ』と言うばかりでした。それが、あるときからガラッと態度が変わり、目の輝きも違ってきたんです」

日本での研修は行政官たちの意識を変化させる大きなきっかけとなった(2015年7月:岡山県議会議場)

変化のきっかけは、日本での研修でした。ベケ州知事と行政官10名ほどを日本に招き、東京や広島などで地方行政サービスの研修を実施。彼らは、日本の公務員たちの住民の目線に立った仕事ぶりを目の当たりにし、意識が大きく変わっていきました。

日本のPTA組織にあたる学校委員会主導で実施された優秀な生徒の表彰式。住民の主体性を尊重するJICAの支援が徐々に受け入れられた(べケ州の小学校:2016年7月撮影)

「州知事は日本での研修などプロジェクト全体を通じて、『自らの意識改革が促され、施設整備を含めた開発業務の手法を学ぶことができた。住民と行政機関、その両方の主体性を尊重するJICAの事業姿勢は、長・中期的に効果が高く、自分たち行政官のモチベーション向上にとっても大きな意義があることに気づかされた』と打ち明けてくれたことは、非常にうれしく、胸にこみ上げてくるものもありました」と土肥専門員は述べます。

平和構築は相手国との協働とともにある 

コートジボワールの2つのプロジェクトはまだ道半ば。土肥専門員は、これまでいくつもの紛争影響国・地域で平和構築のいろいろな案件に携わってきて、いつも痛切に思い知らされるのは、自分たちは当該国にとって第三者であることと言います。

「だからこそ、距離を置いて冷静に、よりよい国づくりのために平和構築の観点から、開発を通して何ができるのか、真摯に向き合っていきたいと思っています。仕事に行き詰まったときは、できる限り現地の人びとの意見に耳を傾けるようにしています。そうすればパズルのピースがはまっていくようにヒントが見えてきます」と、土肥専門員は言葉に力を込め、優しく微笑みます。

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笑顔で協議するJICAプロジェクトで支援した民族や宗教の違いを超えた住民グループのメンバー(2019年4月撮影)

プロフィール
土肥優子(どひ ゆうこ)
社会基盤・平和構築部 国際協力専門員。NGOで難民支援に携わった後、インドネシア事務所、スーダン事務所などにおいて平和構築・復興支援の企画調査員を務めた後、2013年より専門員。大阪府出身。

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