モザンビークの農家たちと共に10年:プロサバンナ事業で農村振興を目指す

2019年4月15日

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種のまき方を学び合う農家たち

「種のまき方、生産技術や収穫の方法を学び、収穫量が増えました」「作物の生産計画の作成や市場での販売方法などを知り、工夫することで収入が増加しました」。モザンビーク北部ナンプラ州の農家たちから、こんな声が聞こえてきます。

JICAは2009年に、この地域でモザンビーク政府と共に、現場のニーズに合わせ、持続可能な農業ができる仕組みづくりを支える「プロサバンナ事業」の実施に合意しました。以来、この10年間で農作物の生産量が増え、農業収入が拡大するなど、農家たちの暮らしが大きく向上しています。

農業生産拡大の潜在能力は高い

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プロサバンナ事業の進捗状況について協議する日本、ブラジル、モザンビークの関係者たち

モザンビークはアフリカ大陸南部に位置し、国土は日本のおよそ2倍です。労働人口の約8割が農業に従事していますが、そのほとんどが小規模農業で技術も伝統的なものに限られ、生産性は高くありません。しかしプロサバンナ事業の支援対象としている北部地域は肥沃な土地が広がり、雨量に恵まれていることから、高い農業生産性向上の可能性が期待されています。

農業振興を国家課題とするモザンビークで、各地の実情に合った適切な農業技術の導入により農業生産性・生産量の向上を図るため、北部のナンプラ州、ニアサ州、ザンベジア州を対象に2009年から開始されたのが「熱帯サバンナ農業開発プログラム(プロサバンナ事業)」です。この事業は日本、ブラジル、モザンビークの三角協力で実施されています。

農家と一緒に地域に適した農作物の栽培技術の開発に取り組む

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農業試験場のトウモロコシ畑で、栽培方法の研修を受ける農業普及員

プロサバンナ事業では、JICAはまずモザンビーク北部ナカラ回廊地域にある2つの農業試験場を拠点に、トウモロコシや大豆といった主要作物の生産量拡大を図るため、適切な栽培技術や土壌改善技術の開発に着手しました。トウモロコシの例では収量が2.4t/haから4.5t/haに増加する技術を開発しました(注1)。

日本人専門家らは、農業試験場の研究員と何度も協議を重ね、試行錯誤しながら最適な栽培方法を農家と一緒に試しました。現場で事業に関わっていた日本人専門家の一人は「トウモロコシの試験栽培に取り組んだ農家たちが『とても順調に育っています。もっといろんな栽培方法を学びたい』と意欲満々で語る姿がとてもうれしく、頼もしかったです」と振り返ります。

夫婦で共同作業:農家の意識も変わる

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出荷直前のニワトリを世話する農家

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女性たちの農家グループのメンバー

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一面に広がるキャッサバ畑

2013年からは、事業対象地域の農家グループごとに、農業技術の普及に加え、作物の加工技術の指導や農業協同組合の設立などにもJICAは協力しています(注2)。

農家同士でどんな作物を栽培するのか話し合うほか、自ら市場に出向き、作物の販売時期を調査するなど、農家自身も農業で稼ぐ力を身につけています。養鶏事業に取り組む農家グループメンバーの年間収入は平均で約1.2倍になりました。農家は、機材の提供や飼育方法の研修などを受けることで事業が軌道に乗り、収入も増え、「家を増築した」「子どもの教育費を補填できた」と述べます。

また、夫婦で家計管理や農作物の生産計画を立てることを学ぶジェンダー研修が実施されることで、「財布を管理するのは夫」といった伝統的なジェンダーへの意識も変わってきました。「以前は子どもをおんぶしながら薪を集めていましたが、今では夫が家事を分担してくれるようになりました」「夫婦で貯金の使い方について話し合っています」と女性たちは言います。

プロサバンナ事業が始まって10年、農作物の生産性や生産量の向上だけでなく、農家たちが主体的に農業に取り組む意識も定着してきました。「自分たちがここまでできるとは思わなかった」。事業に携わる農家は語ります。

さらに「農作物の販売拡大に向けたマーケティングを支援してほしい」といった意気込みを農民たちが示すなか、JICAはそのニーズに合わせて、今後もプロサバンナ事業を通じ、農家たちへのサポートを続けていきます。