世界では、14億人(世界人口の約5人に1人)が1日1.25ドル未満というわずかな収入で生計を立てています。貧困は、人々の健康不良や教育水準の低下を招き、労働生産性をも低下させます。その中でもさらに、開発途上国の女の子や女性たちは、貧しさの中、女子であるために社会の底辺に置かれ、より困難な状況に直面している現実があります。今回の資料室では、彼女たちが直面する現実を通して貧困問題を考えたいと思います。
『12歳の時に、飢えた家族のために、他人の家に住み込みの家事使用人として働きに出されました。7年間、日の出から日の入りまで働きづめの日々を送りましたが、1年間のお給料は700ネパール・ルピー(約800円)。雇い主に常に性的関係を持つようにせまられ、抵抗するたびに殴られました。また、豆のスープに塩を入れるのを忘れ、雇い主にそのスープを頭からかけられたこともあります。』
Case.1を通して知る貧困 「過酷な家事労働」 ▼
貧しい家庭の女の子が親の借金返済のために、他人の家に住み込み、家事労働をする慣習があります。幼い女の子には過酷すぎる労働を課され、学校にも通えず、時として雇い主から虐待を受けることもあります。自身の家にいたとしても、水汲み、食事の支度、掃除、幼いきょうだいの世話は女の子の役目。多くの家事を任され、勉強する時間は削られてしまいます。家事の担い手として、女の子の負担が本格的に増えていきます。
『私の姉は14歳で結婚させられ、妊娠したあとも嫁ぎ先では休むことは許されませんでした。ある日、薪を割っている最中に破水してしまいましたが、医者も呼んでもらえず、数日後に苦しみながら亡くなりました。』
Case.2を通して知る貧困 「早すぎる結婚と妊娠 /経済参加の機会の欠如」 ▼
古くからの慣習のため、10代で結婚させられる女の子たち。教育の機会を奪われるだけでなく、幼いうちの妊娠・出産で命を落とすことも。これは産前産後の医療ケアや知識が乏しい、不衛生な環境での出産なども原因です。また、家事育児、老人の介護や看護といった、収入に結びつかない労働が女性の肩に重くのしかかります。職業訓練や農業訓練も多くが男性対象で、仕事のスキルを身につける機会も制限されます。稼ぎ手でないため、家庭内での女性の発言権は弱まります。
『妊娠したのは予想外だったし、どのように妊娠するのかも知らなかった。子どもの父親は20歳(不確かの可能性大)で、中学校に通っていました。でも、私の妊娠を知った後、彼はどこかにいなくなってしまった。HIVについて、誰かが死んだと聞いたことがあるけれど、HIVにどのように感染するのかは知らない。出産は怖い、死ぬかもしれないから。』
Case.3を通して知る貧困 「HIV/エイズ/中等教育の欠如」 ▼
貧しい女の子は、HIV/エイズに関する正しい情報や予防知識を得る機会が少ない、性行為における決定権がない、生計のために性産業に従事せざるを得ないといった理由から、感染の危険性が高まります。エイズ患者や孤児の世話も女性の役目です。また、中等教育は、女の子がHIV/エイズに関する正しい知識を身につけるだけでなく、将来よりよい職業や収入を得て、自由な選択のできる人生を歩むために必要不可欠。にもかかわらず、初等教育の就学率は上がる一方で、中等教育のそれは急減します。
妊産婦死亡率から見る世界の現状
ユニセフ(UNICEF)/国連人口基金(UNFPA)/世界保健機関(WHO)/世界銀行(WB)が共同で、”妊産婦死亡の動向:1990~2010″報告書を発表しました。この報告書によると、世界の妊産婦死亡は、1990年時の54万3000人から、47%減少し、2010年時点28万7000人 まで低下。世界のほとんどの地域で進展が見られていますが、サハラ以南の多くのアフリカの国々に関しては、1990年時の妊産婦死亡を2015年までに75%削減するという、ミレニアム開発目標(MDG)の達成はできないと報告されました。
出典:ジョイセフ WEBサイト「途上国の実情」
http://www.joicfp.or.jp/jp/operation/outline/