JICA

たまたま生まれた国が違っただけで、
友情に変わりはない
産業開発・公共政策部 国吉 大将

大学時代、父親を爆弾テロで失ったソマリア人留学生とともに、現地を支援する活動を行っていました。どうしてソマリアだったのか? と聞かれても、明確な理由はありません。友だちになったら国境なんて関係ない。「たまたま」生まれた国が違っただけですから。友だちの苦しみを知って、力になってあげたいという想いが湧き起こったのは自然なことでした。

沖縄戦の語り部だった祖父の影響もあって、幼い頃から紛争に関心がありました。早稲田大学社会科学部に進学したのも、そういった分野を学びたいと考えたからです。一年生のときには、夏休みにケニアに旅行してソマリア人居住地区の深刻な状況を目の当たりにした同級生に誘われて、ソマリアを支援する学生団体の初期メンバーとして立ち上げから携わりました。それとほぼ同じタイミングで、早稲田大学にソマリアからの留学生が来ていることを知って。キャンパスを一週間探し回ってようやく、アブディとサミラという兄妹を見つけたんです。彼らは、来日する数年前、ソマリアでスポーツ大臣を務めていた父親を爆弾テロで失っていました。遺児になった二人は激しい紛争から逃れ、ケニアのソマリア人居住地に移ったそうです。そこから、日本で学ぶ切符を手に入れたんです。

すでにナイロビで母国のために活動するNGOを運営していたアブディは、それなら一緒にやろう、と言ってくれました。ただ、彼らと合併して活動をはじめたものの、最初の一、二年は方向性も定まらないまま中途半端な状態が続いてしまって……。
3年目でようやく、現地でもっとも大きな問題となっていた治安の改善に注力することを決めました。ソマリア人のギャンググループの存在にみんなが頭を悩ませていたんです。しかも、自分と同世代の彼らは、テロリストたちの格好のリクルート対象にもなっていた。私たちは、半年に一回現地に飛んで、専門家の力も借りながらワークショップやスキルトレーニングを実施しました。そのなかでアブディは、日本のメンバーとソマリアのメンバーの調整役を担ってくれました。彼は、お互いの事情や感覚が理解できるし、言葉も通じます。しかも、性格が温厚でした。私たちの活動は、アブディ無しではとても成り立たないものでした。そしてこの活動はのちに、ギャンググループの一つを解散させるという大きな成果に結びつきました。

どうしてソマリアだったのか?と聞かれても、明確な理由はありません。友だちになったら国境なんて関係ない。たまたま生まれた国が違っただけですから。友だちの苦しみを知って、力になってあげたいという想いが湧き起こったのは自然なことでした。だけど、その「たまたま」のせいで、さまざまな局面で境遇が異なる不条理も実感しています。
あるとき、アブディが父親を亡くしたときのことを話してくれたんです。尊敬し、目標としていた父を10代半ばで、しかも爆弾テロで失った彼の悲しみは計り知れないものでした……彼が来日当初、大きな物音に非常に敏感だったのはその影響もあったのでしょう。それでも彼は、「いつか自分もソマリアに帰って、政治家になり、国を良くしたい」と前を向いていた。そのときに私たちは、大人になっても一緒に頑張ろう、と約束したんです。だから、就職活動のときにも、それまでアブディと一緒に活動してきた積み重ねを大切にしたいという想いを持っていました。

彼は、いまも早稲田大学の大学院で勉強しています。私はしばらく東京から離れていましたが、2ヶ月前、久しぶりに会って食事をしました。いま彼と交わす会話の内容は、国際協力の話題というよりも、友だちとしての近況報告が多いです。とくに用事がないときにもSNSで連絡をとり合っています。生まれ育った環境は大きく異なりますが、私にとってアブディは、日本人とまったく違いのない「ただの」友だちです。

「誰かを想う気持ち」は、時間も国境も越える。 なんとかしなきゃ!プロジェクトでは、連載企画として著名人とJICA職員それぞれが語る「誰かを想う気持ち」をご紹介しています。
J-WAVE 81.3FMの番組「JICA MUSIC ANTHOLOGY」(毎週金曜日21:00-21:10)と連動し、ゲストに音楽をとおして「誰かを想う気持ち」を語っていただいている記事はこちら↓

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