JICA

「自分たちでなんとかしよう」
という気持ちを後押しできるような存在に
人間開発部 勝田 梨聖

少年たちは、自発的に日本語学校に通い、夜の街にも繰り出して、日本語の練習に励んでいたわけです。それは、自分たちが目指すロールモデルがいて、目標があったからこそで、誰かから押し付けられたからではありません。自分で興味を追求して、足を動かす二人の姿は、私にとって一つの理想形だと思えました。一方で、私たちのつくろうとしていた職業図鑑は、ただの押し付けでしかなかったように感じられて……

大学時代、教育支援を行う学生団体のスタディーツアーで、ラオスの奥地にある貧困地帯を訪れたときの思い出が、今でも印象に残っています。そこで暮らす子どもたちに、将来の夢を尋ねたんです。彼らは、しばらく困った顔をしたあと、口を揃えて「家業を継ぐこと」だと答えました。多くの子どもたちが一様に、です……。私は、そうした姿を目の当たりにして、彼らがもう少し別の選択肢を持ってもいいのではないかと感じました。それで帰国後、メンバーたちと一緒に、自分たちにできることはなんだろうと話し合い、「職業図鑑」をつくることに決めました。パイロットやケーキ屋さんといった私たちが思い浮かぶ「子どものなりたそうな職業」をイラストで描いて、彼らにそういう選択肢を知ってもらおうと……。

けれど、再びラオスを訪れたときに、そのアイデアが安直だったことを思い知らされます。都市部に並ぶ屋台で話しかけてきた現地の中学生くらいの男の子たちとの出会いがきっかけでした。日本語が非常に達者な少年たちです。二人に見せてもらった小さなノートには、「僕は君を愛しています」「君の瞳はまるで深い海のようだ」といった、日本人観光客に教えてもらったであろう日本語が書いてあって(笑)。おそらく、そういう言葉を毎晩練習して、次の日にお披露目するという遊びを繰り返していたんだと思います。彼らはまた、ボランティアが運営する日本語学校にも通っているということでした。出会った翌日、授業の様子を見学に行ってみると、分厚い教科書を片手に真面目に勉強している二人の姿が……そういった努力が、夜のおふざけにつながっているんだと気づかされました。

私は、まさにこういうことが大切なんだなと思いました。少年たちは、自発的に日本語学校に通い、夜の街にも繰り出して、日本語の練習に励んでいたわけです。それは、自分たちが目指すロールモデルがいて、目標があったからこそで、誰かから押し付けられたからではありません。自分で興味を追求して、足を動かす二人の姿は、私にとって一つの理想形だと思えました。一方で、私たちのつくろうとしていた職業図鑑は、ただの押し付けでしかなかったように感じられて……つくるのはやめました。そして、山奥で暮らす子どもたちが、自分の目標や夢、つまり選択肢を自発的に見つけられるように背中を押してあげることこそが自分たちのやるべきことだと強く感じた私たちは、もう一度、村の人々や大学教授、現地NPOと一緒に話し合いました。そして、子どもたちが自ら学校で学んで世界をどんどん広げられるように、学校施設の環境改善のお手伝いをすることにしました。

私の母校であるカトリック系の中学・高校では、「BIG You, small i」という言葉が毎日のように繰り返されていました。その意味するところは、「自分のやりたいことを優先せず、他者のために自分ができることを考えなさい」という奉仕の心です。実際、フィリピンなどの途上国への支援活動にも積極的に取り組む学校でした。その言葉が、自分の価値観の根底にあるのかもしれません。国際協力系の学生団体に入ったのも、大学に入学して、途上国とのかかわりが無くなったときに、自分の人生は本当にこれでいいのかな?と疑問を持ったからですし、いまでもときどき、その言葉を思い出すことがあります。 私は、「BIG You, small i」の精神と、ラオスの少年たちが教えてくれたように、「相手が主体であること」を忘れず、彼ら彼女らの「自分たちでなんとかしよう」という気持ちを後押しできるような存在になりたいと思っています。

「誰かを想う気持ち」は、時間も国境も越える。 なんとかしなきゃ!プロジェクトでは、連載企画として著名人とJICA職員それぞれが語る「誰かを想う気持ち」をご紹介しています。
J-WAVE 81.3FMの番組「JICA MUSIC ANTHOLOGY」(毎週金曜日21:00-21:10)と連動し、ゲストに音楽をとおして「誰かを想う気持ち」を語っていただいている記事はこちら↓

JICA MUSIC ANTHOLOGY

 毎週金曜日 21:00~21:10 www.j-wave.co.jp/original/avalon/

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