JICA

彼の使命感に熱い想いを感じ、後押ししたいと思った
アフリカ部 琴浦 容子

尊敬できる人は、国籍を問わずたくさんいるんだな、って改めて強く感じました。彼は、誰にもチェックされていないなかにあっても、たった一人の医療従事者として自分の果たすべき職務を理解し、自分がやるべきことをちゃんとやっていました。途上国支援や開発援助というと、一方的に「与える」イメージが強いのかもしれませんが、むしろ、こちらが学ばせてもらう機会が多かったような気がします。

2009年6月にセネガルに赴任し、保健医療の案件を担当しました。お母さんたちが安心して医療施設で子どもを産むためには、どのようなサービスが必要になってくるのかを考えていくプロジェクトで、医療行為をはじめとしたテクニカルな部分から、スタッフの体制作り、女性が通いやすい雰囲気の醸成にいたるまで、さまざまなことに取り組んできました。

いまでも印象的に覚えているのは、首都のダカールから車で7〜8時間もかかるような田舎の村にある保健ポストで出会った30代くらいの男性のことです。妊産婦健診や予防接種といった一次保健医療サービスを提供するその保健ポストには、医師が配置されていません。看護師として働く彼は、村唯一の医療従事者として、住民たち約1万人の健康をたった一人で守っていたわけです。彼は、医師ではないのに、村人たちから「先生、先生」と呼ばれるほど、大きな信頼を寄せられていました。みんなが彼に期待していたし、彼自身も、自分が村の健康を守っているんだというプライドや自負を持っているように感じられました。

プロジェクトの発足当初から彼は、やる気に溢れていました。さらに、日本での研修に参加することで、大きな刺激を受けます。彼はそもそも、首都ダカールに行く機会さえほとんどない環境にいたので、パスポートを取得してもらうようなところから研修がはじまったのですが、日本で、「こういうサービスを自分も提供できる人になりたい」と、感化され、開眼されたようでした。以降、保健ポストに、「みんなが安心して産めるような場所にしたい」といった意味のスローガンを掲示したり、お産を終えたお母さんと子どもの笑顔の写真を貼り出したり、あるいは、村の人達の協力を得て、それまで無かった患者さんや妊婦さんの待機場所を作ったりと、いろいろな工夫をはじめていきました。それを見た村人たちは、彼の保健ポストが変わろうとしていることを強く感じていたと思います。

彼は、会うたびに、「日本での研修で学んだことを踏まえて、ここをこう変えたんだよね」と嬉しそうに教えてくれて。自分自身がやっていることに自信があったからこそ、私たち日本人に知ってほしいという気持ちが強かったのでしょう。また、彼の周りにいたスタッフたちは、彼より年長者が多かったのですが、「自分が彼と一緒にこの保健ポストで働いていることが嬉しい」と口々におっしゃっていました。それだけ彼がリーダーシップを発揮して、みんなを引っ張っていたんだと思います。

彼と知り合って、尊敬できる人は、国籍を問わずたくさんいるんだな、って改めて強く感じました。彼は、誰にもチェックされていないなかにあっても、たった一人の医療従事者として自分の果たすべき職務を理解し、自分がやるべきことをちゃんとやっていました。途上国支援や開発援助というと、一方的に「与える」イメージが強いのかもしれませんが、むしろ、こちらが学ばせてもらう機会が多かったような気がします。彼の責任感や実行力は、プロフェッショナルとしてとてもかっこよかったですし、その使命感に、熱い想いを感じ、プロジェクトを通して後押ししたいと強く思ったんです。
いま現在、私の携わっている仕事は、保健分野と直接関わるものではありませんし、現場の方とやりとりする機会も多くはありません。けれど、その出会いがきっかけとなって、この仕事の先の先の先には、彼のように頑張っている方々がいると実感できるようになれた気がします。

「誰かを想う気持ち」は、時間も国境も越える。 なんとかしなきゃ!プロジェクトでは、連載企画として著名人とJICA職員それぞれが語る「誰かを想う気持ち」をご紹介しています。
J-WAVE 81.3FMの番組「JICA MUSIC ANTHOLOGY」(毎週金曜日21:00-21:10)と連動し、ゲストに音楽をとおして「誰かを想う気持ち」を語っていただいている記事はこちら↓

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