誰かを介してこの想いが連なっていくといいなと
願っています。
中東・欧州部 服部 修

想いをベースにした信頼関係が、個人から個人に、個人からその集合体のコミュニティに、コミュニティから社会に、社会から国に、国から世界に、どんどん広がっていけば、戦争なんてしなくなって、平和が訪れるような気がするんです。私は、そういう気持ちを大切にしながら、働き続けられたらいいなと思っています。

もともと人間は、「誰かのために働きたい」という気持ちを持っていると思うんです。私がJICAに入構したのも、イラン・イラク戦争等を報道で目にして、海外で困っている方々の手助けをしたいという動機からでした。
けれど、働き始めて、実際に現地の方々と接してみたら、「自分が誰かを想う気持ち」と「相手が求めていること」がずれていることも多いのかな、という問題意識が生まれて……。ともすれば、「誰かを思う気持ち」というのは、独りよがりの想いや想像から生まれてしまっているのではないかと感じるようになったんです。

ガザの子どもたちと

たとえば、私が、国連のパレスチナ難民救済事業機関に出向して、シリアでパレスチナ難民の支援をしていたときに、現地の方からこんな言葉をかけられたことがあります。
「人道支援には本当に感謝している。でも本当に必要なのは、仕事。」
彼ら彼女らは、紛争前に自分たちの手で作り上げていた元の生活に戻ることを心から願っていました。それを聞いたときに、私たちが行なっている支援と、受け手が求めているもののギャップにはっとされられたんです。
あるいは、パレスチナのガザの子どもたちを日本に招いたときのことも強く印象に残っています。封鎖されている地域で暮らす中学生世代の少年少女三名は、初めてガザを出て、初めて飛行機に乗って、震災後の釜石で日本の子どもたちと一緒に凧揚げをしました。釜石とガザ両方の復興を願って。そのときに、ガザの子どもが発した、「初めて恐怖を感じることなく、自由に走り回ることができた。」という衝撃的な言葉は、いまでも忘れられません。三人は生まれてから三回、大規模な紛争を経験しているため、常に恐怖心を感じながら暮らしてきたわけです。その言葉は、日本にきた安心感によって、本心から出たものだったと思います。私は、その際もやはり、果たして、いま自分たちが行なっている支援は、本当に子どもたちのためになっているんだろうか、と自問することになりました。

もちろん、JICAや国連が取り組んでいるような大きな枠組みでの支援を否定するわけではありません。ただ、そうした葛藤を抱えながら、どうすることが必要なのかを改めて考えていくと、やはり、コミュニケーションが大切なんだと感じさせられます。JICAや先進国側と途上国側が、お互いの気持ちを理解し合い、歩み寄っていくなかで、いまやるべきポイントを探っていくことが求められるのだと。

そうしたときに東京にいて、なかなか途上国の方と直接コミュニケーションをとる機会の少ない私自身の立場でできることといえば、現地で働く専門家やNGO、コンサルタントの方々と、双方向にディスカッションしながら、現地の人々がより幸せになるためにはなにが必要かを一緒に考えていくことなのかな、と思っています。私一人でできることはわずかなことしかありません。誰かを介してでないと、現地にいる誰かに想いを届けられない。だから、この想いが連なっていくといいなと願っています。
そして、そんな風に、想いをベースにした信頼関係が、個人から個人に、個人からその集合体のコミュニティに、コミュニティから社会に、社会から国に、国から世界に、どんどん広がっていけば、戦争なんてしなくなって、平和が訪れるような気がするんです。私は、そういう気持ちを大切にしながら、働き続けられたらいいなと思っています。

「誰かを想う気持ち」は、時間も国境も越える。 なんとかしなきゃ!プロジェクトでは、連載企画として著名人とJICA職員それぞれが語る「誰かを想う気持ち」をご紹介しています。
J-WAVE 81.3FMの番組「JICA MUSIC ANTHOLOGY」(毎週金曜日21:00-21:10)と連動し、ゲストに音楽をとおして「誰かを想う気持ち」を語っていただいている記事はこちら↓

JICA MUSIC ANTHOLOGY

 毎週金曜日 21:00~21:10 www.j-wave.co.jp/original/avalon/

※生放送番組のため放送時間は前後いたします。※特番編成などで休止になる場合がございます。あらかじめご了承ください。


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