【フィリピンの授業実践中!】2017年度JICA教師海外研修

2017年度JICA東北支部とJICA二本松合同実施の「教師海外研修」は、東北6県から10名の教員が参加した。派遣国はフィリピン、渡航は8月。福島県からは3名の教員が参加し、渡航後の2学期からは各校でフィリピンの素材を活用し授業を実践中だ。JICAが教員を途上国に派遣するこの研修の最大の狙いは、渡航後に日本の教室で行う授業実践。授業にはJICA職員も立ち会った。

2017年12月19日

【小学校6年生】「わたしたちが世界のためにできることを考えよう」

■本宮市立五百川小学校
小林真一教諭
教科/科目:総合的な学習の時間
学年:6年生39名(1組2組合同)
タイトル:「わたしたちが世界のためにできることを考えよう」
日時:2017年11月28日10:05〜11:40
※複数の時間数を使った一連の授業展開のうちJICA二本松職員が立ち会った時の授業の模様について掲載しております。
 
 フィリピンでストリートチルドレンの子ども達がいる「ドロップインセンター」に訪問した時のことが強く印象に残っているという小林先生。センターの職員から「ドロップインセンターの子ども達を励ましてくれる物を日本から送ってくれませんか?」と依頼されたという。それを受け今回の授業ではストリートチルドレンに贈るのに何を作ればいいか、子ども達が考え出すことがゴールとなった。
 まずはクイズゲーム「日本?フィリピン?」でウォームアップ。写真を見て日本かフィリピンかを当てるゲームだが、写真の中にはストリートチルドレンの住んでいる路上の様子があった。次はビデオ。小林先生が「気になった所でストップって言ってね。」と一言添えて上映。ドロップインセンターまでの道を徒歩で向かっている時に、歩きながら撮影したビデオだ。スリが頻発し治安が決して良くはない所だったそうで、自分の担任がそこを歩いたという臨場感からか、子ども達も緊張した様子で視聴した。
 そして小林先生が出会ったストリートチルドレン2人のエピソード。ある1日のスケジュールを紹介した。「『朝には物乞いの仕事をしてお金が得られれば朝食を食べる。夕方には友達と物乞いをして遊ぶ。』だって。物乞いが仕事だったり遊びだったり、私には不思議な感じに思えた。」と小林先生。それからストリートチルドレンの「兵士になりたい」「学校の先生になりたい」等の将来の夢を紹介した。
 センター職員からの「子ども達を励ましてくれる物を日本から送ってくれませんか?」との依頼を受けると子ども達は「ビデオ!」「寄せ書き!」等と口々にアイデアが出たが、ある子どもは「作っても本当に喜んでくれるかはわからない」とポツリ。それから先生と子ども達でディスカッションがあり、最終的には「相手のことを真剣に考えるという点を大切にした上でメッセージや手紙を作っていくこと」となった。今回の授業はここまで。今後の授業でそのメッセージ作りが進められていくという。

※本ページで掲載されているストリートチルドレンとの出会いやスモーキーマウンテン訪問は、JICAの教師海外研修のコース編成に際し、認定NPO法人ICAN様の協力を得て行程に組み込まれたものです。

【中学校2年生】「誰もが幸せな社会のために」

湯田教諭がフィリピンで購入

■三春町立岩江中学校
湯田しおり教諭
教科/科目:道徳
学年:2年生20名
タイトル:「誰もが幸せな社会のために」
日時:2017年11月28日14:35〜15:35
時間数:11時間続きの授業のうちの9時間目の授業が本記事

 湯田先生は数学教師だ。フィリピンの素材を活用した授業展開はなんと11時間。はじめの3時間は渡航前。生徒が連立方程式の文章題を作り英訳するという授業を行った。そしてフィリピン現地では高校生にそれを解いてもらい、またフィリピンの高校生に出題してもらった数学の問題を持ち帰った。渡航後は英語で書かれたその問題を日本の生徒が解いたという。生徒達は数学が万国共通であることを実感した。
 今回の授業は、一旦数学から離れ、道徳。
 フィリピンではスモーキーマウンテンと呼ばれるゴミ山で、「スカベンジャー」と呼ばれる労働者が働いている。スカベンジャーは役所に届け出た登録制の職業で、缶やプラスチックなどリサイクルできるゴミを集めて売って収入を得ている。スモーキーマウンテンはフィリピン国内に複数あるが概して悪臭が漂い、衛生状況も良い筈はなく、結核をはじめとした感染症の危険もある。収入の額も多くはない。スモーキーマウンテンは害でもある一方で、大切な生活の糧を与えてくれる場でもあり、そのジレンマを周辺住民は自覚している。
 そのスモーキーマウンテンが強烈な印象だったという湯田先生。11時間の授業の中ではスモーキーマウンテンに関する知識も生徒にインプットした。今回の授業では「スモーキーマウンテンは私達にとってなくてはならない存在です。」という現地の人の声を紹介した上で、生徒が「もし自分が地域のリーダーだったら、スモーキーマウンテンを最終的にどうしていきたいか、その問題をどう解決していくか」を考えフローチャートを作るワークを行った。
 フローチャートは、漠然とした意見ではなく、「どうする?」→「なぜ?」→「どうなる?」→「どんな課題がある?」を書いていく必要がある用紙になっていた。論理的思考を養う狙いだ。
 授業終盤では、スモーキーマウンテンの周辺住民が作ったフェアトレード商品も生徒に見せ、授業を通して気づいたことを5・7・5で表すカルタカード作りを行った。

【小学校5・6年生】「幸せとは何?(フィリピンから考えよう)」

 中西教諭の知人の上野教諭。いわき市の小学校で養護教諭として勤務し、今年度から「現職教員特別参加制度」により青年海外協力隊でガーナに派遣中(2017年度1次隊)。子どもの目線を日本とフィリピンに限定しないよう、中西教諭は他国の写真も授業で取り上げた。

■平田村立小平小学校
中西龍也教諭
教科/科目:道徳
学年:5年生21名 6年生13名
   (2学年に同じ授業を実施。今回記事は6年生の模様)
タイトル:「幸せとは何?(フィリピンから考えよう)」
日時:2017年11月14日14:50〜15:35
時間数:5時間続きの授業のうちの2時間目の授業が本記事

 福島県から現在派遣中の青年海外協力隊員で、ガーナに「学校保健」で派遣中の上野真理恵隊員、ニカラグアへ「野球」で派遣中の阿部翔太隊員と、中西先生は渡航前からの知り合いだ。フィリピンの素材を活用した授業の後に、子どもがフィリピンの知識をもって「世界を知っている」という偏りは生じさせないよう配慮された授業となった。
 まずは日本の良い所を話し合い発表するグループワーク。付箋1枚に1つずつ書き、似た意見をまとめていく(グルーピング)する作業だ。これはKJ法と呼ばれるディスカッションの手法で、JICA二本松の派遣前訓練でも青年海外協力隊訓練生が行っている。今回のクラスは小学6年生だが、上手にKJ法で話し合いしていた。日本の良い所は「各地域で特産物がある」「平和」「様々な文化を大切にする」「礼儀作法」「核を保有しない」「四季折々の自然」「医療が発達している」等。
 次にフィリピンの良い所を見つけるワーク。中西先生がフィリピンで撮影してきた写真のうち、食べ物・自然・生活様式など子ども達が先ほどのグループワークで書いた日本の良い所と対比させることができる写真がチョイスされていた。また、事前に中西先生がガーナの上野隊員とニカラグアの阿部隊員から送ってもらっていた現地の食べ物や生活様式がわかる写真も投影された。中西先生が説明をうまく加えることで、子ども達は日本・フィリピン・ガーナ・ニカラグアについて混乱することなくバランスよく学ぶことができていた。
 授業の最後には「未来に残したい日本の良い所」を5・7・5でカルタカードに書いた。字数指定があることで子ども達に考えることを促す効果がある。今回の授業はここまでだったが、今後は「貧しさとは何か」「本当の幸せとは何か」を学び、考える授業が予定されている。