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JICA草の根プロジェクト「キルギス共和国有機農業普及支援プロジェクト」スタート

プロジェクト・マネージャー 西崎 邦夫

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キックオフ・ミーティング

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畑山現地調整員による堆肥づくりの実演会

帯広畜産大学発ベンチャー企業、北海道バイオマスリサーチ株式会社(BIRD)は、平成24年度独立行政法人 国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業(草の根パートナー型)に公募し、採択されました。
対象国は中央アジアのキルギス共和国で、プロジェクトタイトルは、「キルギス共和国における有機農業普及プロジェクト」です。
キルギス共和国は国土面積19.8万平方キロメートル(日本の約半分)の陸封国で、人口544万人、平均標高2,750メートルの山岳国家であります。耕地面積は国土の7%と少ないものの、山間部の牧草地を利用した畜産業および南部での綿花栽培が主要産業です。2011年のGDPは約51億ドル(1人当たり1,070ドル;世界で150位)で、世界第145位の貧困国であります。農業はGDPの4割を占め、人口の6割が従事する基幹産業ですが、農業による平均収入は他産業の35〜50%程度と最低で、貧困層の6割が農村部に居住する要因となっています。
1991年のソビエト連邦からの独立以降、集団農場制度が崩壊し、経済体制の変革のもと、農地の私有化(自営化)が進められる一方で、行政サービスは財源不足により大幅に機能が低下し、農家は技術支援および化学肥料や除草剤の配給等の必要な支援を受けることができなくなりました。その結果、土壌肥沃度の低下によって農産物の品質が著しく低下したことに加え、政府買い上げがなくなり、農家自らは販売路も持たないため出荷価格は低く抑えられています。農業収入の増加がなく、飼育技術支援がなかったことも原因し、農家は経済的困窮をしのぐために家畜を販売し、独立時に比べ国全体の家畜飼養頭数は大幅に減少し、近年回復の兆しは見られるものの、独立時の頭数までは回復していません。
キルギスはソ連崩壊に伴い大規模集団農場制度が解体し、農地の私有化により小農化が進見ました。また、農業機械不足による休耕地・未収穫農作物の増加が深刻な問題となっています。小農に対する栽培技術移転体系も確立しておらず、現状を放置し続ければ、将来的な農業生産力の低下が危惧されています。農業生産力の回復のためには、農業機械・灌漑・加工設備の整備などのインフラ整備が必要です。また、農業技術の改善、農民組織化、農業分野法制度整備など、ソフト・インフラの開発も不可欠です。
現在、家畜頭数は牛やヤギを中心に徐々に増加しつつありますが、家畜の糞尿は乾燥させて燃料にしています。さらに、地方農村部での主な燃料源は、石炭や薪であり、近年石炭価格の高騰により違法伐採が深刻な社会問題となっています。他方、キルギスにおける糞尿利用は、1980年代に省エネルギー対策としてバイオガス技術が導入された経緯がありますが、ソビエト連邦時代の計画経済体制下では、農業資材や燃料は配給されており、脚光を浴びることはありませんでした。しかしながら、独立以降、配給が止まったことに加えて化石燃料および化学肥料が価格高騰により入手困難となったため、バイオガス技術の有効性が見直されつつあります。JICAは、「地方農村住民の多くが化学肥料や化石燃料の高騰による無施肥での連作の繰り返しやエネルギー不足対策として、土地の肥沃化とエネルギー供給の双方を可能にする技術」として、バイオガス技術の導入を支援しました(2007-2011年、キルギス共和国におけるバイオガス技術普及支援プロジェクト)。
キルギス農業省は、2020年までの農業戦略で、土壌肥沃度の改善や有機農業の促進を大きな柱としています。そのなかで、有機性堆肥やバイオガスプラント消化液(液肥)の利用についても具体的に触れています。また、これまで伝統的に利用されてこなかった家畜糞尿や緑肥の利用が収量増や有機農業の普及に効果的であることに気づき、利用が促進されようとしています。さらに、2012年に発表された農業開発戦略では、2020年までのロードマップで、有機農業の促進と有機農産物の輸出を大きな目玉として打ち出し農地の20%を有機基準にしたいとしています。
本プロジェクトでは、この国の農業政策にそって同国に適した有機肥料(堆肥・バイオガス液肥・緑肥)の開発と有機農業の普及を目的としています。
プロジェクトでは、8月半ばからキルギス農業大学と職業訓練校の協力を得て、堆肥づくりに励んでいます。すでに、現地農家を対象とした堆肥作りセミナーを終え、5軒のパイロット農家とともに堆肥作りを行なっています。順調に温度も上がり、良好な経過をたどっています。また、農業大学とは、堆肥散布機の試作やバイオガスプラント消化液、堆肥、緑肥の比較試験の検討を行なっています。さらに、職業訓練校に堆肥舎を建設する予定であり、現在、設計を終え詳細検討に入っており9月中旬にも着工の予定です。
8月30日、農業省、農業大学、訓練校、JICA、バイオガスプラントメーカなど約30名の関係者が集まり、キックオフミーティングを開催いたしました。参加者の有機農業、有機肥料に対する理解が深く、プロジェクト支援に対する強い意向に力を得ました。
2.5年という短い期間ですが、有機肥料の有効性を出来るだけ多くの農家に知っていただければ、と考えています。(2013年9月7日記)