JICA沖縄【大学生×草の根】シリーズ第3弾 −琉球大学生が「フィジー・沖縄リハアイランドプロジェクト」について取材−

2017年1月21日

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【大学生×草の根】シリーズは、沖縄県内の大学生に草の根技術協力事業※の現場で活躍するウチナーンチュ(沖縄の人)をインタビューし、記事を書いてもらう企画です。今回はシリーズ第3弾(一旦、最終回です。)として「フィジー・沖縄リハアイランドプロジェクト」のプロジェクトマネージャー比嘉つな岐さんとサブマネージャーの喜屋武龍介さんに琉球大学の学生がインタビューしました。
インタビュワーは看護師、助産師を目指す大学生です。国際協力に興味はあるけど将来どうしよう…と思案中の二人ですが、現場で活躍する先輩方から、勇気をもらったり、さまざまな関わり方があることを教えてもらえたり、とてもいい機会になったようです。

草の根技術協力事業とは?

プロジェクト概要

本事業は沖縄理学療法士協会が実施団体となり、2008年から地域提案型、2014年から支援型の草の根技術協力事業として実施されています。同協会が中心となり、沖縄県内の理学療法士の方々やいくつもの医療機関が協力してフィジーの理学療法士の技術向上を目指してプロジェクトが進められてきました。
プロジェクト概要は下記のリンクをご覧ください。

人物紹介

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雀部さん(左)、前門さん(右)
真ん中と後ろの方は…?

【インタビュワー】
“南に開かれた国際性豊かな医学部” 琉球大学医学部保健学科に通う学生2名
  • 雀部冬実、医学部保健学科、3年次
    「兵庫県から来ました。助産師になる勉強をしています♪」
  • 前門 夢乃、医学部保健学科、3年次
    「好き嫌いなくなんでも食べます!」
【取材相手】
  • 沖縄理学療法士協会(北部地区医師会病院勤務) 比嘉つな岐さん
  • 沖縄理学療法士協会(琉球リハビリテーション学院勤務) 喜屋武龍介さん

インタビュー「草の根プロジェクトと、家族と、日本の仕事と」

前門
はじめに、お二人の経歴をお聞かせください。
比嘉
わたしは理学療法士の資格を取ったあと北部地区医師協会病院に5年間勤務し、その後、2年間青年海外協力隊としてフィジーで活動しました。そのときの縁で、沖縄に帰ってきてからもJICAの草の根事業として2008年から3年間活動し、フィジーからの依頼もあって現在また第2フェーズとして3年間関わっています。
喜屋武
僕はずっとスポーツ整形の分野で働いていましたが、現在は琉球リハビリテーション学院で講師をやりながら、このプロジェクトなどに関わっています。

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喜屋武さんの職場(琉球リハビリテーション学院)でインタビュー

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窓の外を見ると馬!乗馬療法(ホースセラピー)も行っているそうです。

雀部
国際協力を始めた理由やきっかけはどのようなものでしたか。
比嘉
学生のころから海外に興味があり英語を学びたい、文化を知りたい、住んでみたいという思いはありましたが、「国際協力に携わりたい」とまでは考えていませんでした。病院に就職してから、理学療法士の先輩で青年海外協力隊に参加した話を聞いて、自分の技術を生かしながら現地に住んで文化も学べるということで興味をもちました。新人のころなら不安もあっただろうけど、就職して5年経っていて理学療法士としての自信も少しはもてるようになっていました。それでも迷いはあったのですが、そのとき通っていた英語教室の先生に話したら、「チャンスは一度しかないしやりたいと思ったことはやったほうがいい。世界に出ることで視野も広がるしプラスになることはいっぱいあるよ。」と言われて、ならやってみるか、と。
喜屋武
患者さんやバスケットボール仲間に外国人がいて英語を使う機会はありましたが、その場限りの英語しか話せませんでした。もっと英語力を高めたいと思っていた頃、学生時代のクラスメイトだったつな岐(比嘉さん)が「国際ボランティアをやらないか」と声をかけてきたんです。(JICA注:本草の根事業の第1フェーズと第2フェーズの間にJICA短期ボランティアとしてフィジーで活動する理学療法士を募集しており、それに喜屋武さんが応募し派遣されました。)
比嘉
もともと龍介(喜屋武さん)が国際協力に興味をもっていたことは知っていたので声をかけたのですが、そのときたまたま仕事を辞めていたので快く受けてくれました。
前門
タイミングがよかったんですねー!

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雀部
具体的にはどのような形で国際協力(草の根事業)を実施しているのですか。
比嘉
私たちは基本的には沖縄にいるので、普段はフィジーのカウンターパート(一緒にプロジェクトを進めている人々)とメールで頻繁に連絡をとったり、テレビ電話で会議を行って進捗状況を確認して情報交換をしたりしていました。(青年海外協力隊としてフィジーに派遣されていた時と違って)直接、顔が見えないので話が正確に伝わっていなかったり、できていたことができなくなっていたり難しいことがいっぱいありましたが、今回の草の根事業の3年間の中では、フィジーを7回(短期で)訪問し、そこで直接話をすることで双方のずれを修正ことができました。もし私たちがずっと沖縄にいて3年間一度もフィジーに足を運ばなかったらうまくいかなかったでしょうね、半年に一回はフィジーを訪問できていたのがよかったです。このような形で国際協力ができているのは、わたしが元々青年海外協力隊で2年間フィジーに住んでおり、フィジーの文化や人々の性格の特徴など知っていたこと、既に信頼関係が構築できていた基盤があったからできたのだと思います。
雀部
フィジーではなにが健康上の問題になっていますか。
比嘉
糖尿病や高血圧、脳卒中などの生活習慣病が一番の問題です。食べ物の影響が大きいでしょうね、主食はイモで砂糖を多く使い味付けが濃いのですが、それに加えて欧米から入ってくるお菓子やジュース。運動もあまりしないので肥満の人が多いです。そんな状況なので、糖尿病が進行して足を切断してしまったり脳卒中で倒れて麻痺が残ってしまったりという事例が増加しています。フィジー人の生活習慣を変えるというのはわたしたちの力だけでは無理なので、脳卒中で倒れてしまった患者さんに対して再梗塞・再出血しないように運動機能の面から予防できることを伝えるようにしています。
雀部
医療職にも肥満など生活習慣病の問題はありましたか?
比嘉
多いです。でも最近は医療職のなかで“自分たちは保健指導する立場だ”という意識が出てきて、昼休みに音楽をかけて職員のエアロビクスタイムを設けたりしています。
雀部
この草の根事業では、どのような目標で活動しているのですか。
比嘉
今回のプロジェクトの成果のひとつとして“チーム医療”を掲げていたので、医師や看護師、ソーシャルワーカーなど多職種との連携を考えて活動しました。
前門
フィジーで“チーム医療”という考え方を受け入れてもらうのは、難しくはなかったですか。
比嘉
プロジェクトを始める前に、フィジーのスタッフと「ここが弱いと思いますがどうですか」「こういう支援の方法はどうですか」と話をして、フィジー側の求めていることや意欲があることをちゃんと確認して、初めてスタートできます。もしわれわれが一方的に考えや意見を押し付けてプロジェクトを始めたら、相手がついて来れずうまくいきません。フィジー側の要望とこちらの提案をうまくくっつけてプロジェクトを練り、みんなの合意を得てからスタートさせることが重要でした。ここをきちんと押さえたおかげで、途中で「やっぱりできない」ということもなく、ひとつの目標に向かって頑張ることができたのだと思います。
雀部
では、フィジーのスタッフも意欲的に取り組んでくれたのですね。
比嘉
そうですね。でも、やっぱり向こうのモチベーションが落ちることもあります。そのときはこちらから「ここがまだ不十分じゃない?」と声をかけてモチベーションの維持に努めます。そういった意味で、7度の訪問で顔を合わせられたことは大きかったですね。

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フィジーのスタッフとミーティングをする比嘉さん

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沖縄(右)とフィジー(左)の理学療法士同士、真剣な表情

前門
そのような活動を通してフィジーの理学療法士の方々にはどのような変化が見られましたか。
比嘉
理学療法士が担当患者を評価したものを発表しあう勉強会が週に一度開かれるようになり、もう5年も継続できています。ときどき医師や看護師、ソーシャルワーカーなども参加しディスカッションを行っているようです。フィジーのリハビリにおいて課題となっていた情報の共有不足や後輩の育成を解決する大きな一歩となっており、継続できていることはとてもうれしいです。
前門
フィジーの人々と関わるなかで工夫したことはありましたか?
比嘉
フィジーは全体的にとてものんびりした人が多かったので初めは戸惑いました。沖縄よりのんびりしているんです。失敗したときも焦らずストレスなく「まぁいいか」というような雰囲気だったので、次はこうしてみようかという提案はしやすかった点は良かったのですが、こちらが計画したスケジュールが大幅にずれて大変だったこともありました。
喜屋武
回を重ねるうちに向こうの特性を踏まえて、丸一日予定のない日を用意しておいてスケジュールがずれても対応できるように工夫するようになりました。

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雀部
フェーズ1から続けてきて、長期間の活動の中でお二人のモチベーションが下がることはなかったのですか?家庭、職場、国際協力活動を両立するのはとても難しいと思うのですが…。
比嘉
自分でもよくやったなと思います、明け方まで仕事したりしてね。JICAへ定期的に報告書を出すのでそれに向けて結果を出さないといけないということも原動力になっていました。また、龍介や周りのメンバーと役割を分担していましたが、疲れたときにプッシュしてくれたのもありがたかったです。まぁやることが多すぎてモチベーションを下げる暇もなかったというのが正直なところかもしれません。でもやっぱりフィジーに行くことは楽しかったし成果が現れたときは嬉しくそれがモチベーションを上げてくれていました。
雀部
国際協力をすることに対して、お二人のご家族は協力的ですか。
比嘉
実家の母親が娘をみるのを助けてくれています。また、夫がフィジー人なので。
雀部・前門
そうなんですね!!
比嘉
そうなんです、青年海外協力隊のときに夫がフィジーの病院でクラークをしていて出会いました。今は娘と3人で沖縄で暮らしていますが、そういうわけなので夫はわたしの活動を理解してくれています。龍介は奥さんがね…。
喜屋武
もう頭があがらないですね、理解してくれているというか諦められているというか…。「わたしに相談するころにはもう決めてるんでしょ」という感じで半分諦めながらも了承して送り出してくれます。フィジーに行くときは4人の子どもたちに「お母さんを助けてね、家のことをよろしく」と言っています。3番目の子が生まれた直後もフィジーに行っていたので帰ってきたときに空港で人見知りされました(笑)

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前門
日本の同僚の方々はお二人が国際協力をすることについてどのように考えていますか。
比嘉
最初に青年海外協力隊に行くときは帰ってきてからのことを決められなかったので職場を辞めて行きましたが、治安の心配など以外では快く送り出してくれました。結局帰国してからも同じ職場に再就職しました。
前門
比嘉さんが協力隊に行ったあと、同僚の方々の意識に変化はありましたか。
比嘉
ありましたね。国際協力ではないですが、3人の同僚がワーキングホリデーなどで海外に出ています。病院内で国際協力活動に関する報告会を開いたり新聞の取材を受けたりしたので、理学療法士だけでなく職場の介護士の方からも声をかけられたりしました。
雀部
お二人が今後やってみたいと考えている活動はありますか。
比嘉
これまではフィジーへの支援を行ってきましたが、今後は今まで研修に参加していたフィジーのスタッフと一緒にほかの小さな国の支援ができたらいいなと思っています。わたしたちが教えるのではなく、フィジーのスタッフが指導してわたしたちはその支援をするという形もおもしろそうだなと。
喜屋武
僕にとってこのプロジェクトは国際協力に携わるきっかけだったので、現地で活動するのに必要な能力などがわかり現在は自分自身をさらに成長させているところです。今回の経験を踏まえて後輩を育てながら役割をシフトしていきたいですね。自分自身も次の目標に向かってステップアップしたいと思っています。
前門
現地に行く勇気はないが国際協力に興味はあるという人に何かアドバイスはありますか。
比嘉
うーん…、やっぱり一度は行ったほうがいいと思います。
わたしは沖縄の名護市という小さな世界しか知りませんでしたが、海外に出たことで様々なバックグランドを持つ人たちと出会う、いいきっかけになりました。2ヶ月とか短期のボランティアだけでも視野は広がるので、時間を見つけて行く価値はあると思います。
喜屋武
沖縄看護協会など県内でもいろいろな形で国際協力をしているところもあると思うので、調べてみるといいかもしれません。情報収集はすごく大事で、「知らなかったから、行動できなかった」ということは、私たちの周りにすごく沢山あると思います。
前門
喜屋武さんはこちら(インタビュー会場)の学校で先生もされていますが、最後に医療系学生へのメッセージをお願いします。
喜屋武
日本は環境にも恵まれていてある程度の情報は手に入れられますが、日本語で書かれたものだけで留まってしまっている人が多いと思います。英語で書かれた情報の方が多いのに日本語の情報だけで満足していたら世界から遅れをとってしまう。井の中の蛙にならず世界の情報をキャッチできるようになってほしい、というメッセージは授業の中でも学生にくり返し伝えています。
前門
日本の医療の現場でも国際感覚は必要になってくると思いますか。
喜屋武
はい。今は沖縄にもいろいろな国の患者さんがくるので、そういう方々の感覚を受け入れられるキャパシティを身につけ、異文化を理解するための準備をした方が良いと思います。
比嘉
わたしも、昨日も勤務しているときに、外国の患者さんが来たといって(英語での対応で)呼ばれました。そうやって役に立てるだけでも、こういった活動をやってきて良かったなと感じています。
雀部・前門
なるほど。今日は貴重なお話を聴かせていただき、ありがとうございました。

インタビューを終えての感想

前門夢乃
家庭や職場の助けをうまく借りながら、国際活動を続ける姿はとてもかっこよかったです。お二人が自身の活動に誇りをもっていて、さらに後輩の育成にも力を入れていこうとする姿勢が印象的でした。短期間でもいいから海外に出ればきっと視野が広がるという話は力強く、胸に響きました。大変有意義な時間をありがとうございました。
雀部冬実
わたしはもともと国際協力に興味があって助産師を目指したのですが、最近は「語学力もないし、日本でのキャリアと家庭と国際協力の3つを両立するのはわたしには無理そうだなぁ」と思っていました。しかし今回お二人のお話を聞いて、本人にやる気があれば国際協力はさまざまな形でできるしまわりの人も助けてくれるということを知ったので諦めずに好きなことを続けてみようと思いました。いろいろなお話が聞けて楽しかったです。ありがとうございました。