沖縄と南アフリカ共和国を結ぶ「結いまーる」の心 障害者が活躍できる社会を目指して

2017年12月21日

南アフリカ共和国技術協力プロジェクトにて行われているピア・カウンセリング。障害者同士が対等な立場で話を聞き合い、自立生活や社会参加のために主体的に取り組もうという意識の醸成にも繋がっている。

 沖縄には「ゆいまーる」という言葉があります。「ゆい(結い、協同)」と「まーる(順番)」の意味で、順番に労力交換を行うこと、つまり、「相互扶助」ということになります。
 沖縄の障害者雇用率は全国平均よりも高く(平成29年、沖縄県2.43% 全国平均1.97%)、自立生活支援、就労支援を行うNPOが数多く存在します。また、2014年に制定された沖縄県共生社会条例など※アドボカシー活動も盛んであり、観光客の多い世界遺産である首里城など公共施設のバリアフリー化も進んでいます。
 障害者の社会参加が進んでいることを活かし、JICA沖縄では年間数コースの「障害と開発」に関する研修を実施しています。

※アドボカシー活動・・・権利擁護。
援助の過程で利用者の利益を図り、生活の質を向上させる為主張や代弁を行い、社会的弱者の権利を擁護する活動のこと。


ゆいレール首里駅での乗車体験。ゆいレールの車イス用乗車板はホームに付設されている。

2017年12月3日の「国際障害者デー」を挟み、11月26日から12月9日まで、南アフリカ共和国で実施中の技術協力プロジェクト「障害者のエンパワメントと障害主流化促進プロジェクト」のカウンターパートを受け入れました。

南アフリカ共和国では、5歳以上人口の約7.5%(約287万人)が障害者と推計されており、非障害者に比べ、教育や雇用の機会が少ない状況に置かれています。同国社会開発省は2007年に批准した「国連障害者権利条約」に基づき、障害白書を改訂し、サービスがより多くの障害者に行き渡るよう政策実施に取り組んでいるものの、地域生活を支えるサービスは十分とは言えません。
そこで、2016年から始まったのが技術協力プロジェクト「障害者のエンパワメントと障害主流化促進プロジェクト」です。農村部におけるコミュニティサービスの拡充などを目指し、地域社会や障害者のニーズに沿った計画を策定してピア・カウンセリングや自助グループづくりなどの活動を行っています。
「沖縄県障害を理由とする差別解消に関する調整委員会」の委員長を務め、本研修のコースリーダーである特定非営利活動法人エンパワメント沖縄理事長の高嶺豊氏は、研修受け入れに先立ち、今夏に約2週間南アフリカ共和国に派遣された時の印象をこう振り返ります。「南アフリカ共和国では、障害のある方が政府高官になるなど進んでいる部分もあるが、一般社会における障害者の社会参加はまだまだ進んでいない。自立支援や就労支援のNPOが数多く活躍している沖縄を見せたいと思いました。」

研修員は同国社会開発省を始め、地方自治体、障害者自助グループなどから18名(介助者3名含む)が参加しました。このうち、視覚障害のある方、車いすや松葉杖を使用している方など10名が障害当事者であったため移動等が心配されましたが、ゆいレールや国際通り、首里城、美ら海水族館などスムーズに移動、見学できました。研修員は「沖縄は観光都市であり、公共施設のバリアフリー化は配慮が行き届いている。」と感心していました。


障害者ITサポートセンターおきなわではITを使った就労支援を学んだ。将来、南アフリカ共和国でもコンピュータを利用して就労することが考えられる。

 生まれつき右手に機能障害があるビクトリアさんは、現在、リンポポ州マカトゥレ村にて自助グループのリーダーとなり、ホウレンソウ、トマト、タマネギなど野菜を生産、販売しています。「今回、沖縄で見た全てのものに感銘を受けた。バリアフリーによるアクセスの良さはもちろん、自立支援や就労支援のNPOにおいて障害のある方もない方も区別されずに生き生きと暮らしている。特にこれら障害当事者のバイタリーティによって、沖縄県共生条例の制定などアドボカシー活動も進められてきた。南アフリカ共和国では障害者に補助金が給付されるためそれに依存してしまいがちであるが、障害者が積極的に社会に参加していくために、補助金に依存しないように自立していくことは大きな挑戦であり、目標だと思っている。」と今後の抱負を語ってくれました。

鷺谷専門家(右)、ビクトリアさん(中央)、高嶺コースリーダー(左)のスリーショット(JICA沖縄)

今回研修に同行した技術協力プロジェクトのチーフアドバイザーである鷺谷大輔専門家は、「今回沖縄に来て、百聞は一見にしかず、研修員が実際に体験して感じることにより、南アフリカ共和国でのそれぞれの活動に活かしてくれると思います。プロジェクトは南アフリカ共和国を拠点として近隣国への広がりも目指しており、今後も南部アフリカ諸国と沖縄のよいパートナーシップ関係構築・強化のためのサポートを続けていきたいです。」と語りました。
ビクトリアさんは、「冬でも暖かい沖縄の気候、そして他者を尊重する優しい沖縄の人たちが好きです。」と言ってくれました。 「結いまーる」の心も南アフリカ共和国に伝わっているようです。