美ら海も、世界の海も、きれいなままに。<6月5日は世界環境デー、6月8日は世界海洋デー>

2021年6月4日

渡嘉敷島でのビーチクリーニング

 6月5日は「世界環境デー」として環境保全に対する啓発活動を図る日です。これは1972年6月5日にストックホルムで開催された国連人間環境会議を記念して、日本の提案を受け、国連で定められたものです。
 また、6月8日は「世界海洋デー」として、海洋環境や海にまつわる問題を考えるべく、国連が定めた日です。
 JICA沖縄では、第3回大洋州・島サミット(PALM3)(*)が沖縄で開催された2003年に廃棄物管理を学ぶ研修コースを開設し、大洋州を中心とした島嶼地域の開発途上国から、これまでに200人を超える研修員を受け入れています。

マイクロプラスチックのサンプリング

採取したマイクロプラスチック

 廃棄物管理には、島嶼地域ならではの問題があります。最終処分場に適した土地の確保が難しいこと、ごみを本島や他国に輸送するのにコストがかかること、人口規模が少ないため処理施設を持つことが難しいことなどです。沖縄では、3R(Reduce、Reuse、Recycle)の推進や環境啓発活動(例:「もったいない」運動)などによりこれを克服してきました。研修コースはこれらの経験やノウハウを伝えるものですが、近年は、「海洋観光都市とごみ」、「海洋プラスチック汚染」についても取り組んでいます。

 2019年8月の研修では、渡嘉敷島村役場の協力を得て、村のごみ処理の問題を学ぶとともに、ビーチクリーニングとマイクロプラスチック採取の実習をしました。
 実際にはビーチに落ちているごみは少なく、研修員は、「毎年13万人もの観光客が訪れる美しいビーチであるが、自国のビーチに比べると、ごみが少なく美しく保たれている島に感動した。」と話しました。
 また、生態系への影響が懸念され、世界の問題となっている「マイクロプラスチック」(5mm以下の小片)を採取しました。スコップなどを使って砂を回収し、ふるいに掛け、実際に砂に含まれているマイクロプラスチックを手に取ると、きれいなビーチにマイクロプラスチックがわずかながら存在することを実感しました。

 このほか、名護市にある国立研究開発法人海洋研究開発機構 国際海洋環境情報センター(GODAC:Global Oceanographic Data Center)の澤野 健三郎 氏に「海洋プラスチック汚染」の講義をしていただきました。
 深刻な海洋ごみ問題について、特にごみの多くを占めるプラスチックは安価で加工しやすい素材であるため大量に使われるようになりましたが、自然界で分解されるには数百年かかるといわれています。そして、波や熱、紫外線などにより、もろくなり砕けて細かくなったマイクロプラスチックは、海中の生物が摂取するようになります。そして、摂取した生物の命を脅かすばかりか、食物連鎖により捕食上位の生物にプラスチックに含まれている化学物質が濃縮されていきます。世界の海には海流という大きな流れがあり、海に流れ出たごみは深海を含めて、世界の海を漂うことになります。
 講義の終わりには、「この問題を解決するためにできることは何か。」を研修員と一緒に考えました。

SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))に貢献

 2009年度より本研修コースを受託している一般社団法人沖縄リサイクル運動市民の会 代表理事 古我知 浩 氏は、「豊かな海を守るためにも、我々の<つくる責任 つかう責任>を果たせるように、ますます廃棄物管理が重要な時代になります。」と話してくれました。

 6月28日から、三重県志摩市で第9回大洋州・島サミット(PALM9)が開催されます。世界の国々と協力して、沖縄の美ら海も、世界の海も、きれいなまま、豊かさを守っていきたいですね。

【画像】* 太平洋・島サミット(Pacific Islands Leaders Meeting:PALM)

 親日的で、国際社会において日本の立場を支持するなど、日本にとって重要な国々であるミクロネシア、メラネシア、ポリネシアの国々からなる太平洋島嶼国の国々と、日本との関係を強化することを目的として、1997年に初めて開催され、以後3年毎に日本で開催されている国際会議。太平洋島嶼国は、「国土が狭く、分散している」、「国際市場から遠い」、「自然災害や気候変動等の環境変化に脆弱」などの困難を抱えており、太平洋・島サミットではこうした様々な課題について共に解決策を探り、太平洋島嶼地域の安定と繁栄を目指し、首脳レベルで議論を行っている。