第三国研修「エコシステムベースの参加型流域管理」(2019年度・第2回研修実施報告) 研修編

2020年3月6日

【画像】

2019年度研修コース開講式

2019年10月7日から25日まで、パナマ環境省が主催する第三国研修「エコシステムベースの参加型流域管理」が実施され、中南米・カリブ諸国で流域管理や生態系保全に携わる政府機関、大学、研究機関、NGOなど計11か国18名が参加しました。

本研修は、過去25年に渡り日本とパナマが環境保全分野で実施してきた協力の成果を中南米・カリブ諸国(参加対象国)に伝え、各国の流域管理人材の能力強化により域内の生態系保全と持続的な流域管理活動のための普及体制の確立を目指すものです。

【2019年度研修参加国】()内の数字は人数
ベリーズ(1)、ボリビア(2)、コロンビア(2)、コスタリカ(3)、キューバ(1)、エルサルバドル(1)、グアテマラ(1)、ホンジュラス(2)、ニカラグア(1)、ウルグアイ(1)、パナマ(3)

【画像】

左から大脇大使、アコスタ環境副大臣、石丸JICAパナマ所長

研修初日に行われたコース開講式では、パナマ環境省ホルヘ・ルイス・アコスタ副大臣が「パナマの流域管理経験だけでなく、他国研修員との交流・情報交換により知識を深め、新たな知見も習得し自国の流域管理能力強化に貢献してほしい」と期待を述べたほか、在パナマ日本国大使館の大脇崇大使は、流域保全と地域住民による農業活動との調和を図ってきた協力の成果をパナマ国が自ら周辺国(第三国)に技術移転するまでに至った努力に敬意を表し、パナマ環境省と関係機関に感謝の言葉を述べました。また、JICAパナマ事務所石丸卓所長は、本研修の実施背景を出席者に紹介するとともに、日本・パナマ・研修参加国との「三角協力」の推進をJICAとして今後も支援していくことを誓いました。

【画像】

自国での活動を発表するエルサルバドル研修員

【画像】

環境省職員による講義

環境省流域管理課研修チームは、今年度の研修カリキュラム策定にあたり、1)流域における生態系管理及び参加型アプローチ2)ケーススタディ3)生態系保全戦略の3つの研修モジュールを設定し、各分野の専門家・講師らと研修テーマの位置づけや達成目的について確認するなど研修効果を高める工夫を施しました。また、パナマ国外からはコスタリカ帰国研修員(2016年度参加者)を講師として招聘し、帰国後の取組みや挑戦について発表し、研修員との意見交換が行われました。さらに、同じくコスタリカより招かれた中米域内の流域生態系管理専門家からは30年以上の流域管理経験から得た知見や教訓等が紹介され、各研修員にとっても大きな財産となりました。「パナマにおける流域管理」「森林復元活動」「流域管理戦略」「住民参加型アプローチ」「環境教育」「沿岸海洋生態系・保護区管理」「水安全国家戦略」「マングローブ生態系保全」他40を超える研修テーマと地方視察を全うした研修員は、環境省職員・研修講師・他国の研修員仲間からの助言等も踏まえ、全員が最終プランを作成することができました。

【画像】

パナマ協力隊OBでもある大澤チーフアドバイザー(右)

なお、本研修においてはJICA事業の発表もありました。中南米の地域国際機関枠組みを通じた初の技術協力「SICA(中米統合機構)地域における生物多様性の統合的管理と保全に関する能力強化プロジェクト」より、エルサルバドルを拠点に活動する大澤正喜チーフアドバイザーが登壇し、プロジェクト概要や地域協力への期待、今後の活動方針等について紹介があったほか、中米6か国で実施中の「中米広域防災能力向上プロジェクトフェーズ2」からも日本人専門家とパナマ内務省防災局(SINAPROC)職員がパナマにおける防災活動と河川・流域管理の視点からの防災について発表しました。

【画像】

全講師に対し各国研修員から記念品を贈呈

【画像】

昼食後の眠気覚ましのためのブレインストーミング

【画像】

日本の有償資金協力で建設されたフアン・ディアス下水処理場を訪問

【画像】

住民参加型農村開発の好事例紹介(エル・カカオ村)

【画像】

環境省の技術指導を得て持続的な農地管理を実践している生産者を訪問

【画像】

農園内の土を活用したレンガ製作を体験する研修員

【画像】

マングローブ植樹を行う研修員

【画像】

ガレタ島にある海洋研究室を訪問

【画像】

カリブ海をバックに皆で記念撮影

研修概要

案件名

エコシステムベースの参加型流域管理

協力期間

2018年~2022年(5年)

実施機関

パナマ国環境省

上位目標

中南米地域(参加対象国)において、パナマの流域管理経験を活用し、域内の流域管理実施能力が強化され、持続的な流域管理体制が確立・普及する。

案件目標

中南米地域(参加対象国)で流域管理を担当する機関の職員等が、流域を取り巻く様々な環境や状況の変化も視野に入れた流域管理の手法に関する知識を深め、自国における流域管理を推進する。

成果

  1. 各国における流域管理のケーススタディや経験等が参加者間で共有される
  2. 流域環境の脆弱性対応に係る住民参加型活動を含む流域管理が推進される
  3. 参加型流域管理の持続性を保つための事業立案能力が向上する
  4. 研修で習得した知見等を活用したアクションプランが作成される

参加対象国(16か国)

アルゼンチン、ベリーズ、ボリビア、チリ、コロンビア、コスタリカ、キューバ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パラグアイ、ペルー、ドミニカ共和国、ウルグアイ