第三国研修「エコシステムベースの参加型流域管理」(2019年度・第2回研修実施報告) 帰国研修員モニタリング調査&最終報告会編

2020年3月6日

本研修に参加した各国研修員によるアクションプランの実践・進捗モニタリングと研修員ネットワークの構築による活動促進を目的に、2020年1月26日から2月1日まで、パナマ環境省職員2名とJICAパナマ事務所職員1名が中米グアテマラとコスタリカを訪問しました。これらの2ヶ国は、本研修の前身にあたる「参加型村落開発手法による流域管理」(2014-2016、以降「フェーズI研修」)も含め、参加者数が比較的多く、帰国後もパナマ環境省研修担当チームとコンタクトを取りながら各々の活動実践を試みている国で、今回の訪問にも研修員とその所属先が快く受入れを表明し、実現することができました。

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大学施設内で木酢液を開発中

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ギラウド在グアテマラパナマ大使との意見交換

最初に訪問したグアテマラでは、サン・カルロス大学内講堂において、2018年度と2019年度参加者による活動報告が行われました。2018年度研修参加者で同大学農学部教授のモニカ・アルダナさんは、役所や地域コミュニティとの連携による地元の固有種を活用した森林農園づくりをアクションプランとして作成し、帰国後は教え子の学生とともに、西パナマ県エル・カカオの農園で学んだ木酢液作りに挑戦していました。木酢液は木炭を焼くときに出る水蒸気や煙などを冷やして液体にしたもので、液に含まれる酢酸やアルコールには殺菌効果があり、植物の成長促進にも役立つと言われています。モニカさんはパナマ環境省と連絡を取りながら、原材料となる木材をいろいろ試したり、液の成分を調べたりと、グアテマラの環境にも適した木酢液の完成を目指しています。2日目は、在グアテマラパナマ大使館を訪問し、研修の目的や応募プロセス等について議論を交わし、本事業の基本的な理解と次年度以降の協力を取り付けました。その後訪問したグアテマラ環境省では、フェーズI研修参加者3名による活動報告が行われました。

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コスタリカ帰国研修員によるアクションプラン活動進捗発表

次に訪れたコスタリカでは、総勢9名の研修員が調査団を迎えてくれました。研修員を代表してマリア・ホセ・ベルムデスさん(2019年度参加)から歓迎の言葉があり、その後9名のアクションプラン活動状況報告と2020年の活動計画等について情報・意見交換が行われました。2日目にはリモン県(GUAMOCI)に移動し、参加型開発手法と一村一品の要素を取り入れた女性グループによる農園(アグロツーリズム)を訪問したほか、地域のコミュニティ内を流れる小川を利用した観光ルート開発プロジェクトの様子を視察しました。さらに、1,400戸に給水を行うための水源(取水地)も視察し、管理する村落給水委員会の取組みとこれを支援する研修員の活動成果を確認しました。

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JICAグアテマラ事務所訪問

今回のモニタリング調査では、JICA事務所も訪問し、本研修の実施意義や応募勧奨等について意見交換したほか、JICA事務所と各国研修員の接点づくりのために、両事務所の現地職員らが各プログラムに参加し、当該分野の理解促進と研修員や所属先との交流を深めることもできました。

グアテマラ、コスタリカそれぞれの研修員は、今回の調査団受入れを機に、お互いの活動状況や各々の強み・弱みを知ることができ、足りない点を相互補完し合える関係性を保つための国内ネットワーク化を図ることができました。また、研修を運営実施するパナマ環境省も次年度以降の研修計画に磨きをかけ、より洗練された研修を提供していくことを約束しました。

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グアテマラ帰国研修員モニカさん(中央)の活動を確認するパナマ環境省アンヘル・アラウス職員(中央左)ほか関係者

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コスタリカ帰国研修員と集合写真。JICAコスタリカ支所職員(右端)もプログラムに同行

最終報告会

今年度研修の振り返りと、グアテマラ・コスタリカ帰国研修員モニタリング調査報告を兼ねた最終報告会が2020年2月27日に行われました。環境省からは研修を運営実施する水安全局(流域管理課)、講師として参加協力した沿岸・海洋局、保護区・生物多様性局、文化環境局など多数の職員が参加しました。

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作成中の各国活動マップ(コスタリカ)

今年度の研修計画を担当したアカデミックコーディネーターのハイメ・ピメンテル職員は、研修員による個別評価(テーマ毎)と研修全体評価のアンケート結果を用い、研修員の研修理解度や講師に対する満足度、自国のニーズや課題等との整合性などいずれも参加者の9割以上から高い評価が得られたことを報告しました。また、研修員間のネットワーク構築と見える化を図り、研修の成果がパナマモデルとして中南米・カリブ諸国域内において普及・定着することを推進していくために、現在、研修員データベースと国別の活動マップを作成中であることを紹介しました。これらの情報は今後研修参加国のJICA事務所にも共有し、環境保全分野の人的リソース(キーパーソン)として活用されることが期待されます。

研修総括コーディネーターを務めるアンヘル・アラウス職員からは、本研修が毎年成功裏に進められているのは、パナマ運河庁、外務省、経済財務省などの関連省庁や大学、国際機関といった様々な関係者の協力があってこそと感謝し、研修運営実施で得られた教訓や提言を踏まえ、研修チームが一丸となって、次年度の研修改善・向上に努めていることを紹介しました。

JICAパナマ事務所の石丸卓所長は、統率が取れ使命感を持った環境省研修担当チームに謝意を表し、その取り組みはJICA全体としても学ぶべき点であることを述べました。また、引き続き、研修参加国の課題解決に資する研修をJICAと環境省が協働して提供していく必要性と、この研修をパナマ国内外に広く発信する重要性を訴えました。

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研修成果を報告するハイメ・ピメンテル環境省職員

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石丸JICAパナマ事務所長(右)と環境省水安全局ホセ・ビクトリア局長(左)

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研修を運営実施する環境省水安全局流域環境課スタッフと集合写真