月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第12回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、バングラデシュで住民組織の運営や貧困層の生活向上を支援している特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会の藤岡 恵美子さんに筆を執っていただきました。

第12回:「村人や行政みんなの力でバングラデシュ貧困層の生活を改善する(シャプラニール 藤岡さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:藤岡 恵美子さん
  • 団体名:特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会
  • 事業名:イショルゴンジ郡における住民参加による包括的農村開発プロジェクト(草の根パートナー型)

はじめまして。バングラデシュで活動している藤岡恵美子です。この事業の狙いは、村の住民組織と地方行政を結びつけ、貧困層の生活向上のために皆が協力する流れをつくること。そのため、土地なし農民や夫を亡くした女性など弱い立場の人はもちろん、村のバザールの商店主や行政担当者などにも働きかけています。

昼食後、COLI(現場の日々の活動を担当しているパートナー団体)事務所の中庭で日向ぼっこをしている私

昼食後、COLI(現場の日々の活動を担当しているパートナー団体)事務所の中庭で日向ぼっこをしている私(写真左)

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

この事業を実施しているイショルゴンジ郡は、私たちの事務所があるダッカから車で約4時間。今日は現場の日々の活動を担当しているパートナー団体のCOLIと、3ヵ月に一度のミーティングの日。一泊二日の出張で、活動の進捗や課題について話し合ったあと、現場の様子も確認します。

AM 8:00

イショルゴンジに向けてダッカを出発。道は途中からひどいでこぼこ道に。霧のかかった菜の花畑の間を揺られながら11:30にCOLI事務所に到着。

AM 11:30

COLIスタッフとの会議。10〜12月の活動報告を聞く。1月はバングラデシュでもけっこう冷える。停電した部屋で皆マフラーぐるぐる巻き。私もこちらの女性がよく着るサロワ・カミューズの下にジーンズ、フリースの上着という妙な格好。私たちは貧困層の人たちのグループ(ショミティ)をつくり、そのメンバーに識字教育やマイクロクレジット、収入向上のための研修などを行ってきたが、貧困層の中にも格差があるため、寡婦など特に貧しい人は通常のショミティとは別にグループを作り、生活状況に応じた支援をしている。今日の会議では最近こうした極貧層グループの1つがかなり力をつけ、メンバー全員が通常のショミティに編入したという喜ばしい報告があった。

PM 1:30

COLI事務所の食堂で昼食。食事はもちろん、魚や野菜カレーのベンガル料理。昼食後事務所の中庭でお茶を飲みつつ、しばし日向ぼっこ。

PM 2:15

会議再開。来年度の活動について相談する。今後は家庭改善意欲が高い女性ショミティの育成に力を入れ、貧しい家の子どものための補習教室も増やす予定。

PM 3:00

会議を終え、村の伝統的な助産婦さんに会いに行く。現在こうした助産婦への研修を小規模ながら実施しているが、来年度はその数を減らしたいというCOLIの話が気になったため。お産の際の助産婦へのお礼はサリー1枚程度が普通のため、彼女自身はとても貧しく、極貧層グループのメンバーになっている。かなり高齢だが、まだ上がいるそうで、COLIの話では、あまりに高齢の人には来年度引退してもらうとのこと。若い世代にこの仕事を引き継ぎたい人はいない。今後はだんだん地方行政の保健医療サービスへの協力や橋渡しに力点を移していくことになるだろう。

PM 4:30

事務所へ戻る途中に、来週から井戸を掘る予定地を見る。この地域は地下水脈が深いため、井戸も深く掘らなければならない。一基あたりの費用の約3分の1は井戸を使う住民たちが自分で出している。

PM 5:00

事務所に戻ってひと休み。

PM 6:30

夜間教室で学ぶ、バザールで働く子どもたち

夜間教室で学ぶ、バザールで働く子どもたち

バザールで働く子どもたちのための夜間教室へ。日中は茶店、食堂、雑貨屋など様々な店で別々に働いている彼ら。疲れていても仲間に会える夜の教室は楽しみなようだ。この教室も、商店主への働きかけで実現したもの。以前はこの時間も子どもたちは働いていたのだ。地方行政の教育担当官にも子どもたちの教科書を提供してくれるよう、働きかけている。

PM 8:00

事務所に戻って本日の活動は終了。お疲れさま!夕食のあと、ちょっと寒いがバケツの水で行水。

PM 9:30

また停電。しばらくランプの明かりで新聞を読むがあきらめて寝る。

現地パートナー団体のCOLIは、シャプラニールの地域活動センターから現地NGOとして独立した団体のひとつ。独立後間もないのでまだまだ支援が必要だが、今日のミーティングで少しずつCOLIの中でチームスピリットが育ってきたことや、団体としての得意分野が見えてきた気がした。行政や村人への働きかけは根気のいる仕事だが、今後もCOLIと共にじっくり取り組んでいきたい。

【ちょっといい話〜元気に育った子どもたち〜】

取り上げた子どもたちに囲まれたフルミラさん

取り上げた子どもたちに囲まれたフルミラさん(写真中央)

村の伝統的助産婦のフルミラさんにインタビューしていたら、子どもたちがたくさん集まってきました。この中であなたが取り上げた子は?と聞くと、「この子も、その子も、あの子もそうだよ!」とよく覚えているフルミラさん。お産のあと最初に出るお母さんの初乳には、赤ちゃんの免疫力をつけるためにとても大事な成分が含まれているのですが、以前は色が黄色っぽいことなどを理由に、7日間捨てていたそうです。でも、研修を受けた今は、初乳は必ず赤ちゃんに与え、母親の食事の内容についてもアドバイスしているそう。元気に育った子どもたちに囲まれ、フルミラさん、誇らし気でした。

【シャプラニールとは?】

シャプラニールは、1972年から30年以上にわたって、貧困に苦しむ南アジアの人たちの「生活向上への意欲」を支援してきました。その間、一貫して意識してきたのは「やさしさの中にもピリリとした辛さを」ということです。すべての人が持つ「生きる力」を信じ、「自立への努力」を側面からサポートすることは、単にモノを配ったり、学校などの建物を建てたりすることよりはるかに忍耐が要ります。少しずつ、失敗をおそれずに、人々のペースに合わせること、甘えのない心地よい緊張関係を続けていくこと。そして私たちの生活の在り方を考えること。シャプラニールのこれまでの、そしてこれからのモットーです。

【次号のお知らせ】

「月刊!プロジェクトマネージャーの1日」の連載が始まり、丸1年が経ちました。現場ならではの課題に奮闘しながら活躍している方々の暮らしぶり、活動ぶりをストレートに伝えたいという気持ちを出発点に、この連載が始まりました。皆さまに少しでも伝わっていれば嬉しいです。

4月からも、続々とプロジェクトマネージャーが登場します!また、既に登場しているアノ人が、今現在の様子をレポートしてくれるかもしれません。新たな取り組みを考えておりますので、次回(4月17日掲載予定)以降も、どうぞお楽しみに!