月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第13回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、インドで住民の保健・衛生環境改善活動をしている、特定非営利活動法人 地球市民ACTかながわ/TPAKのバックレイ 麻知子さんに筆を執っていただきました。

第13回:「住民のみんなでインドの保健・衛生環境を変えてゆこう!(地球市民ACTかながわ バックレイさん)」

  • プロジェクト・マネージャー:バックレイ 麻知子さん
  • 団体名:特定非営利活動法人 地球市民ACTかながわ/TPAK(旧称:地球市民の会かながわ/TPAK)
  • 事業名:インド北部ウッタランチャル州における衛生環境改善・地域住民意識化支援事業(草の根協力支援型)

はじめまして、インドで活動しているバックレイ麻知子です。このプロジェクトはインドの行政機関、国連機関、現地NGOと日本の草の根NPOが協働で事業を展開しているユニークなJICA委託事業です。同じ志のもとに「学校給食制度」「教育のための食糧計画」「衛生環境改善・地域住民意識化支援」を3方向から展開する相乗効果により、栄養補給食の供給だけでは健康状態の改善が難しい貧困地区の子どもたちの栄養と衛生環境が改善され、健やかに成長していくことが望めます。

会場に貼ったプロジェクトポスターの前にて。

会場に貼ったプロジェクトポスターの前にて。参加者の住民と子どもたちと私(写真左)

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

ヒマラヤ山脈の麓にあるガット地区事務所には、パートナー団体マムタの本部がある州都デラドゥンからガンジス川沿いを上ること8時間で到着します。今日は現地の村に住み込んでいるコーディネーターたちが村で健康フェアーを開催する日。私は彼らに「子どもが主役」のワークショップを開いて楽しみながら学ぶ方法を講習してきたが、その成果はいかに???

AM 7:20

大爆音で起床。土砂崩れかと慌てふためき、外に飛び出す。犯人はトタン屋根の上でケンカしている猿。沐浴用のお湯入りバケツがあるのだが…室温5度。カイロを貼り、寝袋に入っても寒いのに、ガットの人々は炊事用の焚き火以外は暖をとるすべが無い。

AM 9:00

山から下りてくる車が一台も無い。昨夜からの大雨で村への道路は崩壊したようだ。

AM 10:00

安全確認が出来たので出発。曲がりくねった山道をジープで登る。

AM 10:45

事務所到着。昨日までに学んだ15項目の方法から、子どもたちへの接し方、説教型と参加型、笑いのとり方などをコーディネーターにロールプレイをしてもらう。

AM 11:45

少数民族の村へ。雨季には山越えをして2時間かかるが、乾季のため川を渡って村に入る。ポスターを貼り、コーディネーターによる民族楽器の演奏が始まる。賑やかな音楽につられ人が集まる。

PM 12:30

健康フェアー開始の挨拶。そうそう、話は短く、説教型にならないで!夏に実施したベースライン調査の結果を基に、安全な飲み水・手洗い・歯磨き・トイレの使用と管理方法などの公衆衛生・保健教育を、村の長老をコントの相方にしながら歌を交え教えていく。身振りをつけた歌が大人気だ。すぐに覚えて繰り返し歌っている。女性たちは編み物や羊毛を紡ぐ手を一時も休めないが、笑いころげ楽しそうだ。クイズ大会では、元気に手があがり3ヶ月前には想像できなかった光景だ。終わりの挨拶をしたら、住民が輪になり歌い踊り始める。チョット輪の中に入って…一緒に汗を流す。みぞれ混じりだった空もすっかり青空に。気温15度、日差しがきつく暑い。

健康フェアーで民族楽器を演奏するコーディネーター

健康フェアーで民族楽器を演奏するコーディネーター

輪になって踊る住民

輪になって踊る住民

公衆衛生コントを見て笑い興じる女性たち

公衆衛生コントを見て笑い興じる女性たち

顔を洗う歌の身振りをまねる子ども

顔を洗う歌の身振りをまねる子ども

PM 2:00

女性の村長さん宅でダール豆のカレーにチャパティのお昼をご馳走になる。手も口も本当によく動く元気なおばちゃんグループの存在は頼もしい。

PM 4:00

事務所でコーディネーターと振り返りミーティング。指導する自分たちも楽しめ、自信がついたと自己評価。次回から衛生紙芝居を見ながら学ぶ方法も取り入れることにした。

PM 7:00

日没前にゲストハウスに戻る予定が遅れて到着。

PM 8:30

山岳部は携帯電話が通じないので、長距離電話屋さんからデラドゥン事務所に日課の電話連絡をする。近所の食堂で、従業員に衛生教育をしながらダール豆のカレーで夕食。

PM 10:00

相変わらず停電なので就寝。ここではコンピューターは単なる荷物でしかない。

住民と元気のエール交換をした一日が終わった。みぞれ交じりの寒空だったため参加を予定していた地区の医師が来なかった!パートナー団体マムタは「役人らしい」と苦虫をかみつぶしたような顔をしていたが…明日は郡の行政官に陳情に行ってみよう。

【感動したこと 〜 あなたとの出会い 〜】

本事業開始の2年前、2003年7月、プロジェクトの事前調査を行った村で、失業中という青年たちに会いました。女の子だけが草刈りや薪拾いの重労働をして男子はブラブラしている、それが習慣だからと誰も変えようとしない現実に愕然とし、若者たちと現状を「変えたい意欲」の素晴らしさについて語りあいました。知らない国から赤い髪をしたおしゃべりおばさん(私のことです(笑))が来て「あなたたちは素晴らしい、やればできる」と言って帰って行った。

そして、あなたはプロジェクトが開始したと聞いて、「自分にも何かを変える力があるか試したい!」と思い、現地コーディネーターに応募したのですってね。

顔を輝かせ楽器を演奏し活躍していたアナタがあの時の青年だったなんて、感激です!

【地球市民ACTかながわ/TPAKとは?】

2006年4月、特別非営利活動法人「地球市民ACTかながわ/TPAK」に生まれ変わりました。

大きく、目まぐるしく世界が変わっていく中で、私たちは自分たちの足元である地元神奈川の街から、できる範囲で楽しく何かをやってみようと、その一歩を踏み出した人と人との交流を目指す団体です。1993年4月から旧称「地球市民の会かながわ/TPAK」はタイ、ミャンマー、インドのアジアの3つの国の、主に少数民族の子ども達の支援活動を行っています。そして「生きていくために本当に大切なことは何なのか」ということを、見つめなおすきっかけとなる会でありたいと思います。

【次号のお知らせ】

次号(第14号)は、エチオピアでHIV/AIDS対策の活動している、特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパンの田中 真奈さんの1日をご紹介します。5月15日に掲載予定です。お楽しみに!