月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第15回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、ブラジルでマングローブ林を守り、回復させるために活動をしている、特定非営利活動法人 国際マングローブ生態系協会(ISME)の辻 貴行さんに筆を執っていただきました。

第15回:「住民の手でブラジルのマングローブ生態系を復元しよう!(ISME 辻さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:辻 貴行さん
  • 団体名:特定非営利活動法人 国際マングローブ生態系協会(ISME)
  • 事業名:ブラジル国北部沿岸の荒廃マングローブ生態系復元事業(草の根パートナー型)

私たちのプロジェクトでは、行き過ぎた利用や開発のために荒廃してしまったマングローブ林を回復させるため、植林技術協力や環境教育を行なっています。近い将来、地域住民みずからがマングローブ生態系の再生・保全、持続可能な利用を推進できるような仕組みづくりを目ざし、活動しています。

植樹祭の参加者に、苗木の取り扱いを説明している私(写真中央)

植樹祭の参加者に、苗木の取り扱いを説明している私(写真中央)

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

今日は村の小学生と一緒に植樹祭を行ないます。昨日は小学校に出向き、村人の生活とマングローブ生態系の関わりやその大切さ、マングローブを植林する意味を話して来ました。また、給食のおばちゃんに頼んでビスケットとジュースも用意してもらっています。

AM 5:30

起床。焼きたてのパンと、パパイヤジュースが今日の朝食です。

AM 6:30

子ども達に植林の仕方を説明する植林普及員

子ども達に植林の仕方を説明する植林普及員

市役所が提供してくれたトラックの来る時間に合わせ、プロジェクト事務所のあるパラ連邦大学ブラガンサ分校にて、苗木を運び出せるように準備をしました。しかし、約束の時間になってもトラックは一向に来ません。結局、1時間遅れでやってきたトラックに苗木を積み込んで、子ども達の待つタマタテウア村に向かいました。街を出ないうちに、村で小学生を待機させていた植林普及員(後述)から電話が入りました。

「タカ、子ども達の収拾がつかなくなって来た。おやつを出してしまっていい?」

「おお、出してくれ。今から30分で村に着く」

おやつは植樹祭の最後に出すつもりでしたが、1時間も待たせているのだから仕方がありません。

AM 8:30

タマタテウア村に到着しました。子ども達はおやつを食べて元気いっぱい、トラックによじ登って大はしゃぎです。まず、参加者を4班に分けます。次に植林普及員と先生に段取りを確認し、苗木の扱いも実物で説明します。「説明は1度だけ」と、話を聞いてもらうように念を押します。

先生と植林普及員が各班を引率して植林地に向かいます。受け持った苗木を班ごとに運ぶようにお願いしたのですが、すでに置き去りが発生しています。先生といっても村人がほとんどなので、実にノンビリとしたものです。全員にストップをかけ、忘れた班に苗木を持たせます。それぞれの担当箇所に到着し、作業を開始します。子ども達を見ていると黙々と穴を掘り続ける子もいれば、木登りやカニ採り遊びを始める子、しまいには泥投げをしている子もいます。今回は大人も含めて初めての植林ですから、各班をまわって植え方を確認しました。

作業が終了すると、全員で記念撮影をし、ゴミを拾ってから引き上げます。井戸の水で足を洗い、先生と子どもをトラックで学校まで送り届けて、植樹祭はだいたい無事に終わりました。

生まれて初めてのマングローブ植林!

生まれて初めてのマングローブ植林!

植林が終わって、みんなで記念撮影

植林が終わって、みんなで記念撮影

AM 11:00

植林普及員と明日の仕事についての打合せをして、村を出発。トラックの荷台に揺られて大学に戻り、用具を洗い、片付けをします。

PM 1:00

家に帰り、シャワーを浴び、昼ごはんにします。ごはん、塩味の煮豆、キャッサバの粉、トマトとタマネギのサラダ、トリ肉の煮込みを食べ、冷やしたマテ茶(麦茶に似ている)を飲みます。すこし昼寝もします。

PM 3:00

家から歩いて3分の所にあるプロジェクト事務所に出勤。今日の仕事は、写真や植林記録の整理のほか、年度末という時期なので、年度の報告や来年度の計画についてJICA沖縄との協議もしました。

PM 7:00

終業。メールをチェックしてから帰宅。夕ごはんを食べ、のんびり過ごします。

PM 11:00

就寝。蚊が多いので、ベッドに蚊帳を張って寝ます。お休みなさい。

よくあることなのですが、何度も念を押した市役所トラックが1時間遅れてきたのには(本当に来ないこともあるので)、やはりハラハラさせられました。車の遅れなど気にせずに子ども達は植樹祭を楽しんでくれたし、先生方もこのイベントに感謝してくれ、お互いハッピーな1日でした。あとは苗木が順調に育つことを楽しみにしています。

【ちょっといい話】

プロジェクトを通じて植林技術や環境教育を学び、活動の中心的人物となる人材を「植林普及員」と呼んでいます。プロジェクト開始直後、村人から植林普及員を選出するため筆記テストを行ないました。ところが2人枠に3人がほぼ同点で合格という結果になり困りました。理由もなく1人を外すのは忍びないし、かといって予算の制限もあるし…。最終的には、全員に協力してもらうことに決めました。おかげで男性と女性が揃い、さらに年齢の幅もでき、村人との連携がしやすくなりました。今では3人採用という対応をして、本当に良かったと思っています。

【国際マングローブ生態系協会(ISME)とは?】

ISMEは世界90の国と地域に940名の会員ネットワークを持っており、マングローブ生態系の持続可能な利用や合理的な管理、保全や再生のために調査・研究、情報収集と発信、普及啓蒙や研修活動等を推進している国際NGOです。

【次号のお知らせ】

次号(第16号)は、中華人民共和国で砂漠化問題を改善するために活動をしている、特定非営利活動法人 世界の砂漠を緑で包む会の大沢 俊夫さんの1日をご紹介します。7月18日に掲載予定です。お楽しみに!