月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第16回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、中華人民共和国で砂漠化問題を改善するために活動をしている、特定非営利活動法人 世界の砂漠を緑で包む会の大沢 俊夫さんに筆を執っていただきました。

第16回:「中国の砂漠が緑豊かな草原を取り戻すために(世界の砂漠を緑で包む会 大沢さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:大沢 俊夫さん
  • 団体名:特定非営利活動法人 世界の砂漠を緑で包む会
  • 事業名:中国内モンゴル自治区アラシャン盟における砂漠化防止のための種子採種事業の確立と環境教育のモデル事業(草の根協力支援型)

通称ゴビ砂漠阿拉善左旗バロンベリー鎮で、砂漠緑化と貧困遊牧民の生活向上に繋がる、種子採種事業確立のプロジェクトを担当する大沢俊夫です。

過放牧が砂漠化の要因の一つであるため、遊牧民を放牧産業から現地自生潅木の管理と種子採種事業へ転換することで、遊牧民へ就労機会の提供と砂漠緑化を行っています。採れた種子は現地政府が買い取り、種子の撒布や苗作り、砂漠緑化、植林事業に使い、その収入は遊牧民の生活の支援となります。
また、遊牧民との共同作業を通して、現地の住民や子どもたちが砂漠化防止・環境保護の大切さや、相互扶助とボランティア精神をはぐぐむことを目的とした環境教育も実施しています。

種子採種の研修時の様子。

種子採種の研修時の様子。研修生徒と私(写真中央)

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

今日は石川県金沢市を中心に参加した植林ボランティアと、ボランティアのホームスティ先の家族、小学生、先生、現地ボランティア及び遊牧民と共に、穴掘り、植林、水遣りの共同作業を行ないます。朝8:00に小学校校庭に集合し、緑化区域へ向かいます。バスの中では小学生が校歌や流行歌、詩を、当会の植林ボランティアも童謡などを歌いながら和やかな雰囲気で向かいます。

AM 6:00

現地ホームスティ宅(小学3年生男子、父:公務員盟建設局勤務、母:市病院助産婦長)にて起床、ベッドで今日は砂嵐が来ないよう祈る(昼近くになると約8m〜10mの風で砂が舞い上がり、目・口・耳に入り植林作業が困難になる。砂漠化の影響で年々砂嵐が強度を強め、頻度も多くなっている)。ホームスティ宅にて家族と朝食をとる。メニューは、昨晩の会食の残り(ご馳走とパン、麺類)。

AM 8:00

集合場所である阿拉善左旗第二実験小学校校庭へ、ホームスティ先の家族と到着。ホームスティ先の家族との会話は筆談で、言葉は通じないのだが、不思議に心が通じ合っている。植林ボランティアの皆さんがそれぞれのホームスティ家庭での出来事、苦労、面白かったこと、嬉しかったことなどを、皆明るく笑顔満開で談笑している。この全体の雰囲気を見ると、何も障害になるものはないという思いになる(このホームスティの経験は後々忘れられない思い出として残り、帰国後の写真交換会での一番の盛り上がりとなる)。82人の参加者は、バス2台と自家用車に分乗する。

AM 9:00

緑化区域に到着。小学生や参加者に、経済優先主義の弊害で起きた地球温暖化や砂漠化の現状、植林に来た目的・意義や、遠い金沢にも黄砂が飛んで来ていることなどを伝える。「私達は緑化ボランティア活動をより大きく発展させ、現地の皆さんと共に力を合わせて砂漠緑化を推進してゆく。この地で生活する皆さんは、自分たちがより住みやすく、より良い環境にするため、自分たちの地は自分たちの力で改善し、守って行く姿勢が大事だ」と話した。

AM 9:15

植林ボランティアと共に穴掘りをしているところ

植林ボランティアと共に穴掘りをしているところ

作業開始。昨日穴掘りをした所に植樹する班と、スコップを手にした穴掘りの班とに分かれる。小学生は穴に苗(花棒)をあてがい、植林ボランティアと現地の方が土を埋め戻し踏み固める。小学生が水遣りをする(ここ緑化区域には、3つの井戸が設置されていて、ポンプで水をくみ上げる仕組みになっている)。現地の皆さんには、これまでこのような経験はなく、貴重な経験となる。
また送水パイプ用として、金沢やその近隣の消防署より譲り受けた、耐用力や耐用年数が切れたとされた消火ホースは、ここでの水遣りに有効に生かされている。

AM 11:00

休む間もなく、みな黙々と作業に精を出している。特に小学生の張り切っている声が聞こえる。風が少し出てきた。

AM 11:50

小学生、現地の皆さんの作業終了。参加記念品として、植林ボランティアが「緑にかえる、無事かえる」という願いを込めて編んだ毛糸の蛙のマスコットとノートを小学生に渡し、父兄、先生と帰路に着く。

PM 12:00

本事業で建設した研修所(内装はまだ)にて植林ボランティア、遊牧民、現地ボランティアと一緒に昼食をとる。硬いパン、乳、砂漠ねぎ、キュウリ、ミニトマト。粗食だが美味しい。

PM 1:30

作業開始。少し風が出てきた。防風(エンジュの木)用の植林方法について、現地専門家と当会の植林ボランティアの間に見解の相違があったが、現地ボランティア会長、専門家を交えて解決した。植え終わるのと同時に砂嵐が強くなってきた。作業終了。

PM 4:50

後片づけをし、帰路のバスに乗る。約30分後ホテルに到着し、シャワーを浴びる。

PM 6:30

ホームスティ先家族、現地ボランティア、植林ボランティアとの合同パーティが始まる。
強いお酒も入って非常に盛り上がり、みんなが打ち解け、和やかで楽しい有意義な懇親慰労親睦パーティとなった。

言葉が通じないが、筆談やゼスチャーを交え、互いに分かり合おうとする真剣さで、不思議な親近感、感激、感動が生まれた1日であった。日中親子三代で夢を現実に変える「命の木」を植え、皆の力で砂漠緑化に貢献できたという満足感をおぼえた。
明日は、植林ボランティアに阿拉善の町を案内してから、植林作業の後、北京観光に行く予定だ。植林ボランティアが無事帰国することを願う。

【ちょっといい話〜忘れぬ思い出〜】

ホームスティ先の家族と、日中親子3代での植林風景

ホームスティ先の家族と、日中親子3代での植林風景

阿拉善左旗第二実験小学校を訪ねて、日本から参加する植林ボランティアの小学生宅でのホームスティを提案し、1回目が実現した時は学校側でスティ先を慎重に選んだ。しかし回を重ねるごとに小学生家庭から希望者が出てくるようになってきた。それは緑化ボランティア、日本人が認識されてきたからだと思っている。
日本からの植林ボランティアの年代は50〜60歳代がほとんどで、ホームスティ先の家族にとっては「おじいさんやおばあさん」のような存在である。

おじいさん達は自分の知恵や経験を活かし、子孫に何が残せるだろうかと考え、現役のお父さんは社会や家庭のため活躍し、子どもも懸命に水を遣り、まさに日中親子三代の植林作業である。世界中でもまれに見る光景であろう。これこそ本当の草の根の国際交流であり、忘れられない意義のある木が育つのである。

【世界の砂漠を緑で包む会とは?】

石川県を中心に植林ボランティアを組織し、内モンゴル阿拉善盟で緑化事業(草原回復)、現地住民への環境教育や国際交流事業を専門家の指導も受けながら行なっています。日本では、活動写真のパネル展示や活動報告会を開催したり、会合や各種イベントに参加したりと、宣伝と啓蒙を含めた活動紹介をしています。

【次号のお知らせ】

次号(第17号)は、南アフリカ共和国で特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンターと特定非営利活動法人シェア=国際保健協力市民の会が協働で実施している、「住民参加型HIV/AIDS予防啓発及び感染者支援強化プロジェクト」のプロジェクトマネージャー 青木美由紀さん(シェア=国際保健協力市民の会)の1日をご紹介します。8月15日に掲載予定です。お楽しみに!