月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第17回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、南アフリカ共和国で、特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)と特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会(SHARE)が共同で実施している「住民参加型HIV/AIDS予防啓発及び陽性者支援強化プロジェクト」のプロジェクト・マネージャー、青木 美由紀さん(SHARE)に筆を執っていただきました。

第17回:「南アフリカの人々が主体となるHIV感染予防・啓発活動をサポートする(SHARE 青木さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:青木 美由紀さん(SHARE)
  • 団体名:特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会(SHARE)/特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
  • 事業名:南アフリカ共和国 住民参加型HIV/AIDS予防啓発及び陽性者支援強化プロジェクト(草の根パートナー型)

成人人口の5人に一人、妊婦の3人に一人がHIVに感染している南アフリカ。アフリカやアジアで農村開発の活動を行ってきたJVCと、アジアや日本でHIV/AIDS対策の活動の経験を持つSHAREが、互いの経験を活かして協働しています。現地NGOと連携し、HIV/エイズ予防啓発活動、在宅ケアなどを含めたHIV陽性者の支援、エイズの影響を受けている子どもたちの支援を実施しています。

【写真】

カウンターパートの現地NGOスタッフと私(写真左)

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

今日の目標:今日は、明日から一泊二日の日程で行う、エイズの影響を受けた子どもたちのためのキャンプの準備を完了すること、そして先日行ったパーマカルチャー手法(※)を用いた家庭菜園トレーニング後のモニタリングのためにHIV陽性者の家庭訪問をすること!

(※)パーマカルチャーとは「人間にとって持続可能な環境デザイン手法」のこと。

AM 6:00

サルが屋根の上をドスン、ドスンと歩き始め、目が覚める。でも冬の南アフリカはまだ真っ暗で寒い!最近の最低気温は0℃近い・・・。

AM 8:00

住んでいる家から歩いて1分の事務所に出勤。現地のスタッフが来る前にメールをチェック。

AM 9:00

【写真】

鶏を購入

担当スタッフと明日のキャンプの打ち合わせをし、買出しがまだのものを確認。鶏27羽、果物、野菜などを求めて市場へ出発。まずはブロイラーへ行き、鶏を購入(まだ生温かい鶏の足をつかむのも平気になってきた)。車のトランクに全部積み込み、今度は果物を買いに。いつもの行きつけの市場でまとめ買い。

PM 12:30

事務所に戻り、お昼ごはん。いつもと同じパンとお茶。最近はアボカドが出回っているので、おいしいアボカドをバター代わりにいただきます。

PM 1:00

【写真】

家庭菜園トレーニングの様子
「えー、これって薬草だったの?」と驚きながら味見をする研修生たち

さて、おなかも一杯になったところで、スタッフと一緒に家庭菜園のモニタリング。1軒目はエイズ遺児・アロンの家。本人は「割礼儀式」に出るために留守をしているらしい。一緒に暮らしているおばさんに畑の作り方を確認、2軒目はトレーニングに参加した在宅ケアボランティア・アベルのお家を訪問。だいぶ畑作りを頑張っているみたいだけど、スタッフのデビットがよりよい畑を作るためのアドバイスをしながら一緒に畑作り。

PM 3:30

【写真】

エイズ治療薬を前に満面の笑顔のトーマス

最後はHIV陽性者のトーマスのお家を訪問。今日から彼はエイズ治療薬の服用を始めることになったという。去年の12月に出稼ぎ先のジョハネスブルグで入院を要するほど体調を崩した。どこを調べても原因がわからず、最後の最後に医師からHIV抗体検査を勧められた。藁にもすがる思いで受けたHIV抗体検査。結果は陽性だった。しかし彼は言う。「陽性だってわかって嬉しかったよ。ようやく原因がわかったんだから。」

彼はHIVとどうやってポジティブに共生していくか、いつもとても前向きに考えている。「僕は、薬を飲んでよくなったら、みんなに教えてあげるんだ。」と今から楽しみにしている。帰り際に、彼の畑を訪問し、水へのアクセスはどうか、土地の傾斜はどうかなどを話し合いながら、今日は一緒に畑のデザインを考えた。

PM 5:00

事務所に戻り、スタッフに今日の一日を報告し、水がなくなる6時前にお風呂に入らなくては!と急いで家に帰る。

PM 6:30

家の前で育てているハーブを摘み、夕食の準備。今日のメニューは冷凍の魚の香草焼きとごはん。

PM 9:00

一日の振り返りをして、今日の仕事は終わり。明日から子どもたちの一泊二日のキャンプが始まるので、早めに寝なくちゃ。

【ちょっといい話〜彼女のやさしさ〜】

【写真】

短期専門家と在宅ケアボランティアが、マーガレット宅を家庭訪問している様子

HIV陽性者のマーガレットのお家にアポなしで訪問したときのこと。帰り際に「ミユキ、今度来るときは前もって連絡してくれないとダメよ。今日は、急に来たから飲み物も食べ物も何もご馳走できなかったじゃない」と。でも彼女は食べ物がなくて、先週ソーシャルワーカーから食料を配給されたばかりだと私は知っていた。「ありがとう、マーガレット。じゃ、今度はちゃんと連絡して、鶏一羽持ってくるね」と私。貧しい人ほど、人に分け与えようとする。彼女のやさしさで胸が一杯になった。

【シェア=国際保健協力市民の会とは?】

健康で平和な世界をすべての人とわかちあう(シェア)ために、草の根の立場から行動を起こした医師・看護師・学生らが中心になり、1983年に結成された保健を専門とした国際協力団体です。これまで、海外に医師・看護師等を派遣し、人と人とのつながり、学びあいを重視した協力関係を築いてきました。私たちは地域の人々と協力して、人づくり、自発的な助け合いによる健康づくりを目指しています。すべての人々が基本的な保健医療サービスを受けられるようになること、そして健康づくりが地域の人々自身の活動になることが私たちの願いです。

【日本国際ボランティアセンターとは?】

1980年タイのバンコクで誕生した市民による国際協力団体です。JVCの活動目的は、国際社会の中で社会的、精神的、物理的に困難な立場を強いられているアジアやアフリカ、中東の人びとに協力すると同時に、地球環境を守る新しい生き方をつくり出そうということにあります。地域開発、人道支援、調査研究・政策提言の分野を中心に活動しています。JVCはボランティアという言葉を「自発的意志をもって、責任ある行動をとる」という意味で団体名として使っています。

【次号のお知らせ】

次号(第18号)は、ラオスで車イスの普及を通じて障害者の社会参加を促進している、特定非営利活動法人 難民を助ける会の岡山典靖さんの1日をご紹介します。9月15日に掲載予定です。お楽しみに!