月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第25回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。毎回このコーナーでは、プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いをお伝えしますが、今回は1週間の活動を追いました。

前回に引き続き、カンボジアで青少年育成の一翼を担う『体育教育』を充実させるため、体育科の指導書作成を支援している、特定非営利活動法ハート・オブ・ゴールド(HG)の山口 拓さんに再び筆を執っていただきました。前回と見比べると現場では「1日」のためにその前後でどのような動きがあるのかお分かりいただけるかと思います。

第25回:「プロジェクト・マネージャーの1週間!カンボジアで本格的な体育科授業の実現を目指して。(ハート・オブ・ゴールド 山口さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:山口 拓さん
  • 団体名:特定非営利活動法人 ハート・オブ・ゴールド
  • 事業名:カンボジア小学校体育科指導書作成支援事業(草の根パートナー型)

こんにちは。カンボジアで活動しているハート・オブ・ゴールド(以下HG)の山口です。前回は、私の「ある1日」の活動をご紹介しましたが、今回は、その活動の前後ではどのような活動が行われていたのか、より広い視野でお伝えします。

カンボジアでは、体育・スポーツに関する情報が少なく、あったとしても、数十年前の資料がそのまま使われている状態です。指導要領を作成するにあたっては、保健・体育・スポーツ教育のみならず、横断的な知識と経験が必要なため、当事業では、教育省関係各局、その他様々な有識者を招き入れた活動を展開しています。当事業の支援組織の代表として活動しているハート・オブ・ゴールド(以下HG)は、教育省内のワーキング・グループ(以下WG)が当事業終了後にも継続して改訂を行えるように、数多くのワークショップ、実践研修、協議会などを実施しています。また、研修で身に付けた能力を実践で生かし、カンボジアの状況に適応した指導要領や指導書を作成していけるように、それぞれの作成段階に応じて、日本をはじめ数カ国の資料・情報を翻訳して提供しています。

それでは、早速、私のある1週間の活動をご紹介いたしましょう。

【私のある1週間】

今週は、
1)担当行政官が保健体育科指導要領に記載する活動内容を検討する材料として、資料を作成
2)作成内容をチェックするための専門家との打ち合わせ
3)進行状況と支援方法を検討するJICAとの事業調整
4)事業の進捗状況や予定変更内容を確認する教育省との事業調整や事業ワークショップの開催
を行いました。

月曜日AM 〜小学校体育科教科書の翻訳資料を作成〜

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指導書の参考として翻訳した資料。

HGアジア地域事務所のスタッフと共に教育省に提供するための小学校体育教科書の非公式翻訳資料の作成作業を進めます。ただ、スキャナーの調子が悪く、なかなか先に進めることが出来ないなど、すったもんだの一日でした。

PM 〜小学校保健科指導要領の資料を作成〜

近日中にWGは、既に決定された指導項目に沿って保健科の詳細事項を検討しなければなりません。そこで、今日は一日、WGの決定した指導項目に応じて、WGの求めている情報として『保健教育の1)目標、2)期待される成果、3)活動内容』を一覧表にまとめます。終了できなかった項目については、水曜日に持ち越すことになりました。

火曜日全日 〜小学校体育科授業の評価資料を作成〜

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ジェネレーターは必需品。今日も大活躍しました。

今後WGは、授業の実際的な指導内容を検討しつつ、それぞれの教員達が授業ごとに生徒を評価する際の指標を作成しなければなりません。そこで今日は、HGが開催を予定している次の事業ワークショップ資料として、日・米・カナダの3カ国の体育科評価資料を翻訳します。

久々の停電がありましたが、事業予算で購入したジェネレーターのお陰で業務を継続することが出来たので、時間を無駄にすることなく作業を前進させることができました。

水曜日AM 〜教育省と小学校保健科指導要領の資料を作成・進捗確認〜

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指導要領について話し合う、中央委員会局長会合での1コマ。

毎週、水曜と木曜は、教育省への出勤日。月曜の午後に終了できなかった部分の資料作成を継続しつつ、WGが作成しているドラフトをチェック。事業が遅延気味であるため、その原因と解決策を検討すべく、担当局の副局長と共に事業スケジュールや進捗、優先順位を確認しました。

PM 〜JICAカンボジア事務所との会議〜

現在、青年海外協力隊隊員が配属されている小学校や小学校教員養成校が当事業の中心校に含まれています。隊員からは、体力測定講習会への参加、講習会終了後の測定実施などの直接的な協力のほか、配属校の現状に関する情報提供など、多大な協力を受けています。また、JICAカンボジア事務所も、現在、理数科教育プロジェクトで教科書作成支援プロジェクトを行っており、担当者間で情報共有をしています。今日は、こうしたJICAとの協働作業に関する情報交換会として、JICAカンボジア事務所のボランティア事業担当者、教育事業担当者、NGOデスクとの定期会合を開きました。様々な情報やアドバイスを得て、いつも勉強になっています。

木曜日全日 〜HGワークショップ(学校保健局との調整・確認、指導書変更アドバイスの提示、保健科教育内容の検討)〜

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筑波大学教授とWGメンバーたちと打ち合わせ中。

随分と保健科の指導要領がまとまってきました。今後、WGはまとめた指導要領を学校保健局に提出して、協議を行う必要があります。今日は、HGの行う事業ワークショップ当日。朝から夕方遅くまで、WGが作成した概案を基にHGがまとめた案を用いて、具体的な内容を説明し、さらにWG全体で再検討して、全体像のイメージを共有しました。

金曜日AM 〜教育省の作成した変更案を検討、調整〜

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指導要領の最終校正内容について入念に話し合っています。

事業の流れとしては、WGが整理した最終案に関してHGが詳細を確認・検討・調整した後、英語及び日本語に翻訳して専門家に提出し、専門家のコメントをWGに返す手法を採っています。今日は、その流れの中で、専門家から得た返答を現地語に翻訳して、詳細を確認した後、その代替案をWGに説明し、記述内容を調整するための資料を作成しました。

PM 〜事業予算・支出確認、その他、雑務〜

当事業では、事業支援を行うHGのみならず、実際の活動を行うWGとも調整しながら計画を立案し、予算案と実際の支出を確認しながら進めています。今日は、HGの会計担当者と共にHGの行う他の事業とあわせて、予算と支出の照らし合わせ、次四半期の計画修正および予算案の作成を行いました。

土曜日AM 〜小学校保健科指導要領の資料を調整〜

HGでは、基本的に毎週土日が休日。目標としていた事業内容をこなしていない場合には、自己判断で出勤することもあります。

保健科の資料は、急を要しています。そこで今日は保健科に関する資料を終わらせるために出勤しました。何とか、半日以上かけて、WGの依頼していた保健科の資料を来週月曜の納期に間に合わせることが出来ました。これで明日は、ゆっくりと休めそうです。

以上のように今週も超多忙な一週間を過ごしました。毎日、忙しくやっているのは、私の性格が大きく反映しているのだと思います。ただ、一緒に事業を行う同僚や関係団体に対し、恥じない支援をしたいという想いが募るのです。今後も関係団体と二人三脚で支援を展開し、教育省の力添えが出来ればと強く感じています。

【うれしい話 〜活動開始当初の想いとその成果〜】

冒頭に記したとおり、これまでカンボジアでは本格的な体育授業が実施されず、ガイドラインがない中で学校や先生に依存した授業を生徒達に提供するに留まっていました。また私自身、事務所にこもって黙々と仕事をすることが多く、現場に足を運ぶ機会が少ないのが現状です。

こうした経緯から時として、「本当にこの指導要領が使用されるようになるのか」「体力測定の全国展開は可能なのか」など不安を感じるときが少なくありませんでした。

そんなある日、この事業に協力してくれている隊員から、以下のような、うれしい話を聞きました。

「配属している小学校では、事業開始前と比べると、自主的な授業の実施や本格的な体力測定実施に向けた学内指導会の実施など、体育授業を実施する姿勢に大きな変化が起こり始めている。これも一重に、教育省が体育科教育の中心校を定めて指導要領を作成していることや、作成のための協議会、体力測定の講習会などが行われているからだと思う。是非、今後も現場の教育者や校長先生、地方教育局のスタッフを招いた指導会や協議会など、全国的な体育授業実施を視野に入れた活動を展開してほしい。」*N隊員談

この話を聞いて、私は、今、行っている作業が実を結びつつあることを実感すると共に、開始当初の思いを忘れずに事業を進めることの大切さを再確認しました。

指導要領の作成中は、少しでもわかり易く、内容の濃い指導要領を作成するための支援に集中してしまいがちです。ただ、こうしたお話を聞くと、当事業が計画されるに至った原点に戻って、生徒に安定した質の高い教育を提供するために、実際に授業をする先生達にも気持ちを集中させなければならないことが思い出されます。

【ハート・オブ・ゴールドとは?】

1996年から開催している『アンコールワット国際ハーフマラソン』による義手・義足支援をきっかけに、現地のオリンピック委員会や教育省と共に、主にカンボジアでの活動を続けてきました。

また、各種競技や体育の指導を通じて指導者育成を行い、今では、カンボジアの小学校保健体育科指導書の作成支援をしています。

さらに、日本語教室を初めとする自立支援や国際交流、青少年活動を通じて、全ての人の心に『希望と勇気』を分かち合う種を撒いていきたいと考えています。

【次号のお知らせ】

次号(第26号)では、トンガで活動する南太平洋医療隊の川村サユリさんに登場していただきます。5月15日に掲載予定です。お楽しみに!