月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第26回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、トンガで子供たちの歯の健康を守るために活動をしている、南太平洋医療隊の河村サユリさんに筆を執っていただきました。

第26回:「トンガの子供たちの歯の健康が守られるように!(南太平洋医療隊 河村さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:河村サユリさん
  • 団体名:南太平洋医療隊
  • 事業名:トンガ王国における歯科保健の為のプロジェクト(草の根協力支援型)

はじめまして。トンガで活動している河村サユリです。私たち南太平洋医療隊は歯科医師・歯科衛生士・歯科学生からなり、トンガ王国にて1997年より、歯科保健活動を中心に歯科診療や歯科スタッフ教育を行なっています。小学校でのむし歯予防プログラムは“マリマリプログラム”※と名付けられています。治療から予防へ活動を大きくシフトして、子供たちの歯を守るために、歯磨きの習慣のない子供たちにお口の清潔を教え、フッ素溶液でうがいをすることでむし歯になりにくい強い歯をつくる活動を行ってきました。2006年5月よりJICA草の根技術協力支援型「トンガ王国における歯科保健の為のプロジェクト」が開始されました。現在52小学校・6幼稚園まで拡大し、更に活動が広がりつつあります。

※「マリマリ」とは「笑顔」を意味するトンガ語です。

【写真】

それでは、早速、私のある1日の活動をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

本島では、月曜から木曜までの4日間がマリマリプログラムに当てられています。
今日は月曜日。最初の6校が今日の活動の中心です。トンガ人歯科スタッフの頑張りで出来た巡回ルートです。
子供や先生方の反応も期待できるものと確信しています。

トンガタブ本島での活動一日目

AM7:00

【写真】

左から歯科部長のDr シリロ・校長先生・JICAの安藤さん揃って記念撮影です。

朝食。先週4日間で行ったババウ諸島(離島)の小学校での健診・咀嚼調査用紙の整理。「このミドルネームは誰?」などと一人ひとり確認しながら整理していきます。

AM9:00

バイオラ病院歯科室にて、今日巡回予定の6校の準備の確認。
今日は島の東端から回ります。メンバーの一人は休暇中、二人のセラピストは揃って産休とのことで、新しいメンバーといざ出発!ドイツの研修医二人も同行します。
子供たちは“マリマリカー”(デンタルヘルスの車の愛称)を見つけるや否や水の入ったペットボトルと歯ブラシを持って校庭に集合。
教師やセラピストは子供たちのさしだす歯ブラシに歯磨剤を手際よく付けていきます。サァ〜歯磨き開始!終わるとフッ素洗口が始まります。7mlのフッ素液で1分間うがいをします。これで終わり。
次の学校へ急ぎます。
4校目からは、このプロジェクトのモニタリング・調査でトンガに来訪中のJICA地球ひろばの安藤さんも加わり、最終の6校目を終了したのは、お昼をとうに過ぎていました。

【写真】

子供たちはフッ素溶液でグチュグチュ洗口の真最中。飲み込まないよう真剣そのものです。

【写真】

青空の下でそろって歯磨きをします。毎日の習慣になっているようです。

PM3:00

ヌクアロファ(首都)で遅い昼食をとりながら安藤さんと活動に対するディスカッション。現在対象になっていない学校にも活動を広げるために、今年もワークショップや歯の健康フェスティバルを開催予定です。昨年の様子や今年の新しい試みとしての食育のアイデァなどを話しました。
昨年秋の暴動で失った商店やホテルの跡地が更地になり鉄条網で囲まれた風景は以前の私たちには想像できないものでした。

PM4:00

JICAトンガ事務所を訪問。
今回の活動に対する報告を行い、今後においても支援いただけるようお願いしました。本島で全ての小学校で活動が行われるには教育省の更なる協力が必要と考えていること、今年ババウ諸島に赴任されるシニア海外ボランティアの小児歯科医と日本で具体的に活動の進め方などを話し合い、ババウ諸島でもマリマリプログラムを始めることを説明しました。

PM5:00

宿へ戻り、まずはシャワー(お湯が少ないので日のあるうちに済ませないと…)。
今日の記録と明日の準備。

PM7:00

夕食。
今日の仕事は終わりです。

トンガ側の多くのスタッフが、マリマリプログラムを理解し協力してくれることに感謝!トンガタブ本島の3小学校では昼食後の歯磨きを毎日行うようになっていたのには、驚きと感動!着実にトンガの人々に受け入れてもらえているのを嬉しく思います。

【ちょっといい話】

“マリマリプログラム”と名づけた小学校でのむし歯予防プログラムは、私たち南太平洋医療隊員にとってとても楽しい仕事です。マリマリとは笑顔を意味するトンガ語ですが、こぼれんばかりの笑顔で子供たちは私たちを迎えてくれます。日焼けした褐色の笑顔に人なつこい大きな瞳と真っ白い歯!

でも残念、なんとむし歯の多いこと!南太平洋に位置し、さんご礁に囲まれた島国トンガ王国は、豊富に流通しつつあるお菓子や清涼飲料などと共にむし歯も増加の一途をたどっています。11万人の人口に対し9人の歯科医師(半数は病気や外国へ行っていて不在)と11人のデンタルセラピストと呼ばれる人々が3ヵ所の公立病院で治療にあたっています。慢性的な機械の故障、薬品・機材不足と相まって、子供たちの治療は、痛みがあれば即抜歯というのが、普通の処置となります。

大きな体格の持ち主でもあるトンガの人々は、よく食べよく喋る、そして早い!瞬く間に飲み込まれていく山盛りの食事。結果、肥満からくる糖尿病・心疾患・循環器障害といった生活習慣病で健康を害する人が多いのも実情です。この先には歯周病による歯の喪失も待っています。

とにかく子供たちの歯を守ろう。健康的な食品選びを促し、よく噛む習慣を教えよう。これが、治療から予防へ大きくシフトした要因でした。

歯ブラシを持たず、歯磨きの習慣のない子供たちにお口の清潔を教え、フッ素溶液でうがいをする事でむし歯になりにくい強い歯をつくります。

8年前、1小学校・2幼稚園から始めたこの事業は、現在52小学校・6幼稚園まで拡大し、更に活動は広がりつつあります。足となる2台の車を、私たち隊員有志からトンガ保健省へ寄贈したこと、トンガ人歯科医の協力の下、学校歯科チームが編成されたことが強力な原動力になりました。

トンガの人々にも支持されてきているこの活動が、トンガの子供たち全員に広がり、お口の健康が守られることが私たちの夢なのです。

【南太平洋医療隊とは?】

歯科保健、歯科医療の恩恵が受けにくい国々に、歯科のサービスを提供することが、活動の中心ですが、予防が可能な“むし歯や歯周病の撲滅”を、歯科を志す者として、全市民的に働きかけていきます。
食べる事は楽しいことですし、生きていく基本でもあります。健常者でも障害のある方々も同じです。現在はトンガ王国がターゲットです。

  • 小学校・幼稚園で歯科保健指導・歯科健診・フッ化物洗口事業
  • 病院歯科室で歯科治療補助・歯科疾患予防処置
  • 歯科スタッフの教育
  • 市民への教育サービス(ワークショップ・歯の健康フェスティバルなどの開催)
  • 障害者施設での歯科保健活動
  • トンガ人歯科医師の日本での研修等の支援

等が主な活動です。

【次号のお知らせ】

次号(第27号)は、ベトナムでマングローブ林の保全活動をしている、南遊の会の浅野さんの1日をご紹介します。6月15日に掲載予定です。お楽しみに!