月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第27回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、ベトナムにおいてマングローブ林回復と日本・ベトナムの交流に取り組んでいる、南遊の会の浅野哲美さんに筆を執っていただきました。

第27回:「ベトナム・日本の青少年の協働でマングローブの森を育む。(南遊の会 浅野さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:浅野哲美さん
  • 団体名:南遊の会
  • 事業名:ベトナム国ホーチミン市カンザー天然マングローブ林保存・環境人材育成プロジェクト(草の根協力支援型)

はじめまして。私は、ベトナムでマングローブ林回復と日本・ベトナムの交流を進める活動をしている「南遊の会」の浅野哲美です。ベトナム戦争後の再植林事業で回復したホーチミン市カンザー地区で、マングローブ林をより自然林に近づけていく活動のお手伝いとして、2002年から50haのマングローブ林「日越青少年友好の森」創りに取り組んでいます。この活動では、一部を日本とベトナムの学生が協力してマングローブを植林しています。

普段は、時々カンザー保全林管理委員会に苗床の近況を尋ねたり、毎年行なわれる日本とベトナムの学生が参加する植林・交流ツアーの受け入れ準備をしていますが、今日は、私のある特別な1日を紹介いたしましょう。

【写真】

学生達に植林の仕方を説明しているところ。写真中央が私です。

【私のある1日】

このプロジェクトの直接のカウンターパートは、カンザー保全林管理委員会というカンザー地区の行政機関の一部で、植林のための苗床創り、植林地の整地、学生達のツアーの受け入れなど、色々お世話になっています。特に日常的に頻繁にやり取りするような用事や必要もありませんが、時々、植林地の視察に出かけます。今回は、JICAホーチミン連絡所の方々3名を現地にご案内したときの様子をご紹介いたします。

AM7:30

JICAホーチミン連絡所の前で待ち合わせ、カンザーに向けて出発。

AM8:15

フェリー乗り場に到着。15分ほどフェリーに乗った対岸がカンザー地区。土曜日、日曜日などはカンザーへの日帰り行楽に訪れるホーチミン市民などのオートバイでごった返すフェリー乗り場も、平日とあり、閑散としている。

AM9:30

【写真】

戦後の植林で回復した広大なマングローブ林(高さ30mの展望台より)

フェリーでカンザー側に到着してから、ニッパヤシ地帯、エビ養殖池地帯などを通り過ぎると、本格的なマングローブ地帯に入る。道路の両側には、ベトナム戦争後、官民一体となって植林が進められたマングローブ林が続いているが、説明されなければ、まさかこれだけの面積のマングローブ林が植林されたものだとは想像できない景色が続く。しかし、ここにも開発の波が押し寄せてきており、何故か、片側3車線計6車線の道路建設が進んでいる。観光のための開発との噂もあるが、必要以上の広さの道路であり、本当の目的は謎である。

工事中のでこぼこ道路に揺られて、ようやくカンザー保全林管理委員会事務所に到着。事務所の所長達に挨拶。

AM10:30

【写真】

植林作業風景。苗運びは一番の重労働。

事務所裏からスピードボートに乗り込み、心地よい風に吹かれ、河の両側に広がるマングローブ林を眺めながら20分ほどして「日越青少年友好の森」植林地現場に到着。保全林管理委員会からはスタッフが同行してくれる。せっかくの機会なので、植林された年が異なる3つの場所を見てもらおうと思い、歩き始めるが、結果的には欲張りすぎたコースとなってしまう。私だけは、地下足袋着用のマングローブ歩きスタイルであったが、JICAの方々はスニーカーやサンダル履きであったため、泥に足と靴をとられて、半ば悲鳴に近い叫び声を上げながら歩いていた方もいた。これを見て、同行してくれたスタッフは、面白そうに笑っている。一時間ほど汗と泥にまみれながら歩いて、とりあえず、植林地の視察を終えた。

AM12:00

今朝のボート乗り場に戻るかと思いきや、実は今日は、森の中で生活し森林保全の仕事を受け持っている人たちの旧正月前の総括会と忘年会があるとのことで、有無を言わさず、忘年会の会場である森林監視小屋に連れて行かれてしまう。私達が到着した頃には、宴もたけなわで、何故かエレキギターの生伴奏で歌合戦の最中であった。通常であれば、即座にビール乾杯攻撃を仕掛けられるのだが、今日は何故か様子が違う。いきなり現れた日本人達に興味を示しつつも、好奇心の強い数名からビール一気飲みを挑まれただけであり、何だか拍子抜けの感さえあった。泥だらけの格好で宴会に現れた日本人達に恐れをなしていたのだろうか。

PM2:00

宴に出席していた人たちも三々五々帰り始めたので、私達もお暇することにする。

PM4:30

JICAホーチミン事務所前に到着。期せずしてマングローブ植林の大変さの一部を実感することができ、JICAの方々も喜んでいた(?)ようであった。

PM4:40

自宅に戻りシャワーを浴びる。

PM7:00

家族と一緒に夕食。

PM10:00

子供を寝かしつけながら、そのまま寝てしまう。本日も楽しい一日でした。

毎回のことだが、やはり植林現場を訪れ順調に育ちつつある木々を見ると、嬉しくなる。今日は、旧正月前の宴会にも参加でき、オマケ付きの現場訪問となり、何だが得した気分である。今年でとりあえず「日越青少年友好の森」50haの植林は完了したので、今後は、この森が健やかに生長していくような活動を続けていきたい。

【ちょっといい話】

【写真】

炎天下の植林活動を終えたベトナム・日本の学生たち。

ベトナムの学生たちと一緒にカンザーでマングローブを植林するために、毎年8月中旬になると日本から大学生達30名ほどがやって来ます。ベトナムの学生達は20名ほどが参加しますが、その殆どが大学で日本語を学ぶ学生達です。日本の学生達と数日間の共同生活を送りながらマングローブ植林に参加するというこの活動は、人気が高く、リピーターもいるくらいです。最初は、日本人と話をする機会が得られるという目的だけで参加してくる学生も多いのですが、炎天下での重労働にも音を上げずに頑張る姿を見ると、この国の未来を担う若者達に対して明るい希望を持つことができます。

【南遊の会とは?】

「南遊の会」は、2000年1月に設立された名古屋を拠点とするNGO団体です。この会の設立には、ベトナムで、現地の学生達と一緒に行なうマングローブ植林作業や数日間の共同生活を通じて、日本とベトナムの学生達がお互いの文化・社会を理解しあい、自分達の文化・社会を振り返るきっかけにしてもらいたいという思いが込められています。そして、マングローブ植林作業を通じて、マングローブを取り巻く問題、ひいては環境問題に対する意識を向上させていってほしいという願いも込められています。

【次号のお知らせ】

次号(第28号)は、東ティモール民主共和国でコーヒー生産者の自立の支援に取り組む、特定非営利活動法人ピース ウィンズ・ジャパンの金丸智昭さんの1日をご紹介します。7月15日に掲載予定です。お楽しみに!