月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第29回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、ネパールで女性と子どもの栄養改善の活動を続けている、特定非営利活動法人 チャイルド・ファンド・ジャパンの吉田希さんに筆を執っていただきました。

第29回:「ネパールの女性と子どもの栄養不良を克服したい。(チャイルド・ファンド・ジャパン 吉田 希さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:吉田 希さん
  • 団体名:特定非営利活動法人 チャイルド・ファンド・ジャパン
  • 事業名:保健行政システムのキャパシティ・ビルディングによるネパールの女性と子どもの栄養改善計画(草の根パートナー型)

はじめまして!私はネパールで女性と子どもの栄養改善活動をしている吉田希です。
貧困や栄養に関する知識や情報の不足などの理由でおこる栄養不良をなくすために、栄養指導キット“食習慣改善パッケージ(Food Based Approach Package)”(以下FBA)を開発し、女性保健ボランティアや保健所・病院スタッフ等、保健省傘下のスタッフを中心に研修を行い、住民に必要な栄養知識を提供できるような保健行政のシステム作りを手助けする活動を行っています。

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

【写真】

ダーディン郡は首都カトマンズから車で東に約3時間のところにあります。山に囲まれた自然の厳しいダーディン郡を背景に研修担当スタッフ。

今日はダーディン郡にて助産師を対象にした食習慣改善研修の第1日目。研修は、この4月から現地カウンターパートであるNPCS(Nutrition Promotion and Consultancy Services、以下NPCS)が行っていますが、様子を確認するために1ヶ月に1度足を運んでいます。

AM6:00

起床。
ネパールの1日は1杯のお茶で始まります。今朝のお茶は特別!現地カウンターパートNPCSが栄養改善食として普及を行っている大豆・小麦・とうもろこしを適正配合して粉にした“サルボタンピト”入り。ビタミン・ミネラルをしっかり補給し、1日がスタート!

AM9:00

朝食。
スタッフ皆で近所の食堂へ。食堂へ向かう途中、インスタントラーメンを砕いて朝食がわりにしている子どもを発見!スタッフはお母さんを捉まえて早速食事のアドバイス。“栄養改善は身近なところから”というスタッフの姿勢に共感。

AM9:40

研修会場へ。

AM10:00

研修開始時間になっても参加者が全員集まらない!
「どうして遅れてしまったの?」と私。「これでも朝の5時に家を出たのよ。自宅からバス停まで山道を徒歩2時間半、それからミニバスで2時間半…今は雨期だからちょっと時間がかかってしまって」と参加者。今回の研修では彼女が1番遠い村からの参加者です。

PM11:00

【写真】

その地域で入手できる食材を「体をつくるもとになる食品」「エネルギーのもとになる食品」「体の調子を整えるもとになる食品」の3つに分け、栄養バランスについて学びます。

予定より1時間遅れで研修開始。
午前は“栄養バランス”について学びます。

PM1:00

【写真】

プロジェクト事務所のモデル家庭菜園にて。現地カウンターパートであるNPCS代表のロシャニさんと。
二人三脚で事業を進めています。

研修会場の裏手にある家庭菜園にて昼食。
先月の郡行政官研修の際に植えたカリフラワー、ナス、トマト、とうもろこし、オクラがすくすく育っています。1ヵ月後の収穫が楽しみ。

PM2:15

【写真】

グループワークの様子。
「私の村では出産後1週間はお母さんには水とロティ(小麦粉を水で練って焼いたもの)しか食べてはいけないって言われているけれど、あなたの村はどう?」

研修(午後の部)スタート。
午後は“伝統的習慣に基づく食事の良い点・悪い点”について情報共有を行います。ネパールでは、独自の医食同源の考え方から食品を「温と寒」に分類しています。例えば、ある地域では“はしか”は神様が怒っているとされ、怒りを静めるために温の食材を控え、寒の食品のみを子どもに与えています。分類方法や病気の時の食事の対処方法が地域によって異なるため、これらを把握することは栄養改善を図るうえでは欠かせません。

PM5:00

研修第一日目終了。
お疲れ様、また明日会いましょう!

PM6:00

事務所にて今日の研修の振り返り。

PM8:00

夕食。
ダーディン郡を訪問した時の楽しみのひとつ、カトマンズでは食べられない川えび・川魚を食べにダーディン郡郊外へ。

PM9:00

明日の研修準備。

PM9:30

【写真】

もう一つの活動地域、マホタリ郡の子どもたち。

就寝…のはずが、スタッフと“ネパールと日本との文化の違い”について話に花が咲く。
平均寿命が50歳代というネパールでは80歳近い私の祖父母が今も毎日自転車に乗っていることが信じられないらしく、矢継ぎ早の質問が。しかし食事についての質問が多いのは職業柄?結局眠りについたのは12時過ぎ。

研修中スタッフが参加者に差し出した1枚の栄養不良児の写真。「この写真を見て気付いたことは?」そう、泣いているのに涙がこぼれていない。母親から引き離され、とても悲しい顔をしているのに。子どもの笑顔を取り戻すための栄養改善事業、大きなチャレンジの始まりです。

【ブレイクタイム@研修】

座ってばかりの研修は疲れる!飽きる!そこで、ブレイクタイムとして参加者全員で軽いゲームやストレッチをしています。ところが今回の研修では、初日のブレイクタイムである参加者が学んだばかりの栄養バランスについてネパール民謡にのせ披露したのを皮切りに、第2日目からブレイクタイムは栄養ソング大会に。ネパール民謡、ラップ、ヒップホップとバラエティに富んだ曲に「栄養不良児のアセスメント方法」「ある栄養不良児がFBAを通して改善された成功ストーリー」などメッセージを込めて披露。楽しみながら学ぶ、理想的な研修となりました。その中でもピカ1だった曲を紹介しましょう。

今日はFBA研修に参加するためにやってきた、
久々に母子保健員仲間にも会えて嬉しいわ。
この研修で学んだことを村のみんなに伝えるのが私の役目。

子どもたちにはサルボタンピトをあげましょう
サルボタンピトの作り方、覚えている?
大豆2カップ、小麦1カップ、とうもろこし1カップよ
更に緑黄色野菜を加えたら栄養バランスは二重丸

そのためには家庭菜園をつくらなくちゃ
果物、野菜の種を蒔きましょう
緑に囲まれた生活は心まで豊かにしてくれる

新しいことを学ぶってとても楽しいことね、
この機会を与えてくれたことに感謝!

さぁ、栄養についてもっと学びましょう♪

【チャイルド・ファンド・ジャパンとは?】

チャイルド・ファンド・ジャパンは、1975年より、アジアを中心に貧困の中で暮らす子どもの健やかな成長、家族と地域の自立を目指した活動をしています。活動を通して人と人とが出会い、お互いに理解を深め、つながることを大切にしています。

【次号のお知らせ】

次号(第30号)は、フィリピンで貧困層住民の生活飲料水の確保などの生活基盤改善に取り組む、日本福祉大学の織部資永さんの1日をご紹介します。9月15日に掲載予定です。お楽しみに!