月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第36回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

そして、今年5月28日から30日まで横浜で開催される「アフリカ開発会議(TICAD IV)」にちなみ、今回から3回にわたってアフリカ各国で活躍するプロジェクト・マネージャーが登場する予定です。

まず今回は、南アフリカ共和国にて、学校菜園を通じ地域の子どもの生活環境と栄養の向上を支援する、アジア・アフリカと共に歩む会(TAAA)の平林薫さんに筆を執っていただきました。

〜これまでに紹介されたアフリカでの活動〜

第36回:「南アフリカ共和国にて、学校菜園で畑仕事に熱中する子どもたちとともに。(アジア・アフリカと共に歩む会 平林 薫さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:平林 薫さん
  • 団体名:アジア・アフリカと共に歩む会(TAAA)
  • 事業名:南アフリカ共和国クワズールーナタール州ンドウェドウェ地域の小学校における健康教育と菜園プロジェクト(草の根協力支援型)

はじめまして!私は南アフリカ共和国、クワズールーナタール州で活動をしているアジア・アフリカと共に歩む会(TAAA)の平林 薫です。

私たちは現地カウンターパート団体のEnvironment and Language Education Trust(ELET)と共に、州内ンドウェドウェ地域の小学校20校において、生徒の生活環境と栄養の向上を目標にした学校菜園プロジェクトを行っています。2007年6月にスタートしたプロジェクトは、20校すべてで野菜作りが始まり、年末年始にかけて最初の収穫がありました。

【写真】

エマクルセニ小学校で、次の植え付けのために草取りや土を耕す作業をする生徒たちと一緒に。収穫は大きく育ったバターナッツ(かぼちゃに近い味)。

それでは早速、私のある1日をご紹介いたしましょう。

【私のある1日】

前の週に各校の担当教師への研修があり、今後の活動について話し合いが行われました。私たちが活動する20校は、同じ地域内とはいってもそれぞれに環境や状況が異なるため、各校の状態を見ながら指導するよう心がけています。この日は4校を訪問します。

AM 6:00

インド洋から昇る朝日を浴びて起床。しかし5時半にはすでに、アパートの前を通るミニバスタクシーのクラクションと“マーケット!(往き)”という声に目を覚ましていた。

AM 7:00

カウンターパート団体のELETのンコシ農業指導員をピックアップしてオフィスに向かう。町に入ってくる反対側の車線は大渋滞だ。オフィスに到着し、コーヒーを飲みながら今日の予定を確認。各校に寄贈する本を軽トラックに積み込む。

AM 7:45

ンドウェドウェに向けて出発。途中までは高速道路と舗装された道を走るが、黒人居住区を抜けて山が見えてくる頃には未舗装道路となる。車で走っていても楽ではないのに、暑さと砂埃の中を歩いている人たちは本当に大変だ。

AM 9:00

【写真】

収穫したジャガイモを保存し、給食に利用しているクワシャンガセ小学校。ンコシ農業指導員が質をチェックする。

最初の訪問校、クワシャンガセ小学校に到着。同校は菜園活動の手伝いをしてくれているコミュニティーメンバーと意見の相違があり、近いうちミーティングを行うことになっているという。指導員からもアドバイスを行った。

AM 10:15

【写真】

エマクルセニ小学校の先生方に日本から持参した“実験用”の種と説明書を手渡し、植え付けを依頼した。こちらではダイコンは一般に出回っていないので、収穫が楽しみだ。地元の人たちはダイコンの味をどう思うだろうか。

エマクルセニ小学校に到着。同校はシニア・プライマリーといって5年生から7年生の3学年、生徒数70名の小さな学校だが、参加校の中で特に成果を上げている。土壌や気候など野菜作りの環境に恵まれていることもあるが、何より先生方や生徒たちのプロジェクトへの熱意と努力によるものであろう。年末の収穫の後、すぐにマドゥンベと呼ばれるサトイモを育て、もうすぐ収穫となる。

AM 11:45

3校目のヴレラ小学校に到着。他の参加校と同様に、収穫された野菜は給食に利用することにしているが、前回の収穫はちょうどクリスマス休暇中になってしまったため、コミュニティーの人々に販売したり、教師たちが購入したりすることで学校運営の資金になったと大変喜ばれた。今後は収穫を給食に取り入れていくことを改めて確認。前回栽培したキャベツ、ホウレン草、赤かぶ、玉ねぎ、ニンジン、バターナッツなどに加え、次回の栽培ではピーマンとなすもリクエストされた。

PM 1:00

【写真】

昨年末に日本から到着した本を仕分けして、それぞれの学校にあった本を配布している。今回は各校に4箱ずつ届けた。ズバネ小の“小さなファーマー”リンドクーシェ君(右から3番目)。学校を訪問すると、“菜園は僕が担当しています”といわんばかりに真っ先に現れる。

最後は、グレードR(幼稚園)から4年生までのズバネ小学校。雨が降ったら訪問できなくなるような場所にある学校だが、素晴らしいチームワークの教師たち(全員女性)が、教材や設備が不十分な中でも質の高い教育を行う努力をしている。学校菜園は自助努力で数年前から始めており、今回のプロジェクト参加によって畑を広げ、収穫も倍増した。

PM 3:00

ELETオフィスに戻る。休憩をとってから今日の訪問のまとめと、翌日の訪問校の確認。翌日配布する本も選ぶ。

PM 4:30

帰宅。夕食は白米(スーパーで“すしライス”として販売)、豚肉と野菜の炒め物。人が集まるときにはズールー人のパートナーがこちらの主食であるパップ(トウモロコシの粉を練ったもの)とスパイスの効いたシチューを作るが、その彼もすっかり醤油味にはまっている。

PM 7:00

英語のニュースと天気予報を欠かさず見る。その後メールをチェックし、新聞を読む。こちらで大人気のトレンディードラマはほとんど見ない。

PM 10:00

就寝。

学校訪問は体力的にきつい時もありますが、また明日も生徒たちの笑顔が見られるかと思うとワクワクしてきます。プロジェクトでは自分たちの手で作り出す喜びをみんなで一緒に学んでいます。

【ちょっといい話〜ズールー男子、畑仕事に熱中〜】

【写真】

エマクルセニ小のマドゥンベ(さといも)の畑で。土の中から出てきた小さなニンジンにかぶりついている生徒もいた。

この地域に住むズールー人たちは伝統的に“男は戦い、家族や富である牛を守る。女の役割は家事(水汲み、炊事、掃除などいっさい)、育児、そして畑仕事”と考えてきた。現在でも、地方ではその考え方が強く残っている。ところが、菜園プロジェクトでは多くの学校で男子生徒たちが熱心に活動を行っている。男性の担当教師は、“畑仕事は重労働。男性がもっと積極的に行うべきだ”と話す。失業率が高く、貧困の中で暮らす人々が多い地方のコミュニティーでは、今後ますます農業の重要性が見直されてくることだろう。男子生徒たちはそこまで深くは考えていないだろうが、課外活動のほとんどないこれらの学校で、外に出て汗水流して野菜を作ることが楽しくてしようがない、といった様子である。

【アジア・アフリカと共に歩む会(TAAA)とは?】

TAAAは、1992年設立の教育支援NGOで、これまでに南アフリカの学校や団体に34万冊の英語の本や教科書を寄贈した。また、日本の図書館で廃車となった移動図書館車を譲り受け、これまでに27台を送付している。プロジェクト参加20校で図書室開設の活動も行っている。学校や生徒たちと直接つながりをもちながら、生徒たちの教育・生活環境の改善に向けた支援を続けていきたいと考えている。

【次号のお知らせ】

次号(第37号)は、マラウイで、食の安全保障の確立と衛生改善に取り組む、社団法人 日本国際民間協力会の五味剛史さんの1日をご紹介します。4月15日に掲載予定です。お楽しみに!