月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第45回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、ネパールで災害に強い村づくりに取り組む、特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会(以下シャプラニール)の藤崎文子さんに筆を執っていただきました。

第45回:「ネパールで貧困層や社会的弱者の生活向上を図り、災害に強い村を作ろう!(シャプラニール 藤崎文子さん)」

  • プロジェクト・マネージャー:藤崎文子さん(シャプラニール)
  • 団体名:特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会
  • 事業名:ネパール・チトワン郡における農村開発プロジェクト〜災害に強い地域づくりを目指して〜(草の根パートナー型)

はじめまして、私はネパールで活動している藤崎文子です。私たちは地すべりや洪水などの災害が発生しやすいネパール中部平野にあるチトワン郡において、貧困層や社会的弱者の生活向上を図りながら、地域住民主体の防災活動を推進、災害に強い村づくりをネパールパートナーNGOのRRN(Rural Reconstruction Nepal)と共に行っています。

【写真】

RRNフィールドスタッフと。(筆者左から3番目)

【私のある1日】

プロジェクトが始まって10ヶ月。パートナー団体RRNのスタッフを対象に研修を実施することになりました。村で活動するフィールドスタッフ、計画作りや活動進捗確認などプロジェクトを管理するコーディネーター、そしてシャプラニールのネパール人スタッフと、プロジェクトに関わる面々が集まって、活動の基礎となる「ファシリテーション」(人々の行動変化を促すためのコミュニケーション技術)を向上させるために6日間学ぶ予定です。日本から招いた講師(中田豊一シャプラニール代表理事)と一緒に私も首都カトマンズからチトワン郡へ前日入りし、翌日からの研修に備えます。

今回はこの研修の1日をご紹介します。

AM 6:00

ぱっちりと目が覚めた。雨音がするので外に出てみると一面の霧。空気中の水分が結露したものが屋根に落ちる音だったようだ。

AM 8:00

しっかりと朝食を摂ったら、30分ほど離れた研修場所へ出発。事前に手配していた車が迎えに来てくれている。

AM 9:00

【写真】

ネパールの地図を書いて自己紹介。

研修開始。
床に大きく描いたネパールの地図をもとに全員が自己紹介。生まれた場所、学生時代を過ごした土地や現在住んでいる場所を、実際に示しながら説明するので記憶に残りやすい。そして今回の研修の狙いなどが講師から説明された後、いよいよ研修へ。

村人に対して正しい質問をすることの大切さなどを中心に、講師自身の経験を交えた講義が続く。英語が苦手なスタッフのためにネパール語へ通訳をするために私も集中して話を聞かなくては。

AM 12:30

待ちに待った昼食。大きな器に盛られたご飯や豆のスープ、カレーを各自皿によそって、いただきます!

PM 1:30

午後の部開始。講師が「ファシリテーションとはすなわちコミュニケーション技術である」と今日の本題について話し始めた。参加者の一人Aさんと対話をしながら、質問の仕方によってまったく異なる答えが出てくることを実際に示して見せる。

中田:朝ごはんに何を食べるのが好きですか?
A:ロティ(無発酵の平たいパン)です。

中田:いつも朝ごはんは何を食べていますか?
A:ご飯です。

中田:今朝は何を食べましたか?
A:食パン、それにお茶と豆です。

中田:昨日の朝は何を食べましたか?
A:お茶だけです。

中田:おとといの朝は?
A:お茶です…。

そばで一連のやり取りを聞いていた参加者の顔は興味で輝き始めたところで、講師が参加者の意見を求めながら説明を始める。要約すると以下のようなことであった。

最初の質問は相手の感情・願望(食べたいと思っているもの)を、二番目の質問は概念(いつも食べているはず、と思っているもの)を尋ね、最後の三つは事実(過去三日、なにを食べたか)を聞いたものであるということ。人々の現実はこの三つの要素から構成されており、本来私たちは「事実」から「課題」を見出して活動をしていかなくてはいけないが、往々にして概念や願望などの「固定観念」に基づいた活動を行ってしまう。それは人々が抱える問題の真の解決にはつながらないのである。

うーん、なるほど。

PM 3:00

ネパール語への通訳がだんだん難しくなって、参加者も私も集中力が途切れてきたところで休憩。

PM 3:30

【写真】

講義の様子

ネパール式のミルクティでほっと一息ついたら講義再開。午後のテーマである「事実を語らしめる対話術」について講師自身の体験をもと話が進められていく。住民の抱える課題へ迫るためのヒントが詰まっている。気がつくといつのまにか今日の研修終了時間となっていた。講義の最後に明日の予定を確認して終了。

PM 5:30

研修所から宿泊先のゲストハウスへ移動。研修所で寝泊りをしている参加者とはお別れ。

PM 6:00

講師と共に早めの夕食。ここソウラハはチトワン国立公園の入り口にあるため、観光客向けのレストランやみやげ物屋が軒を並べる。量は多めだがしっかりと平らげる。

PM 8:00

インターネットカフェでメールチェック。

PM 9:30

【写真】

村でのフィールドワークの一コマ(講師一番左)

ホテルに戻りシャワーをひねるが湯が出てこない。無駄にするのは嫌なので冷たい水を浴びて済ませる。

明日はフィールドへ行って講師が実際に村人と対話するのを皆で見る予定なので楽しみだ。明日も元気に過ごすため早めの就寝。それではおやすみなさい。

【ちょっといい話─がんばるお母さん─】

【写真】

プラティバさんと娘さん。

研修5日目のこと。フィールドワークのためにプラティバ・ダライさんのお宅にお邪魔して話を聞きました。家と農地を含め土地は8カッタ(1カッタ=約100坪)。夫婦と娘二人息子一人の5人家族では、食べていくのでやっとという広さ。カレッジ(日本の高校2、3年生にあたる)に通う娘たちに、出来る限りの教育を受けさせたいというプラティバさん、「男の子にはいろいろな可能性があるけれど、女の子たちが社会に出ていくためには教育が必要。だから私はどんな努力をしてでもこの娘たちを大学まで通わせるつもり」と話してくれた。村で野菜を買い付けて郡庁所在地まで売りにいくという小規模ビジネスを始めたいのだそうだ。子牛を育てて売ったお金を元手に彼女が村々を回って商いを始める日は、そう遠くないだろう。

【シャプラニール=市民による海外協力の会とは?】

シャプラニール=市民による海外協力の会(以下シャプラニール)は1972年に設立され、現在はバングラデシュ、ネパール、インドの3カ国で活動を行っています。人々が直面する課題を自らの力で解決するための取り組みを支援、日本も海外協力の現場のひとつと捉え、市民が学び参加できる活動を展開しています。

【次号のお知らせ】

次号(第46号)は、フィリピン・ネグロス島でマングローブ林の再生に取り組む、環境NGOイカオ・アコの倉田麻里さんの1日をご紹介します。2月15日に掲載予定です。お楽しみに!