月刊!プロジェクトマネージャーの1日 第46回

草の根技術協力事業の現場では、プロジェクト・マネージャーという、言わばリーダーのような人が指揮をとり活動をしています。プロジェクト・マネージャーの方々が、一日何をして過ごしたかを通じて、プロジェクトにかける想いを語ります。

今回は、フィリピン・ネグロス島でマングローブ林の再生に取り組む、環境NGOイカオ・アコの倉田麻里さんに筆を執っていただきました。

第46回:「フィリピン・ネグロス島に住む人々とともにマングローブ林の再生に取り組む(環境NGOイカオ・アコ 倉田麻里さん)」

【基本データ】

  • プロジェクト・マネージャー:倉田麻里さん
  • 団体名:環境NGOイカオ・アコ
  • 案件名:ネグロス島のマングローブ林の再生による生活の質の向上(草の根協力支援型)

はじめまして、私はフィリピンのネグロス島で、マングローブの再生を目指した活動している倉田麻里です。私たちは、薪炭生産や紙の原料として伐採されたり、魚の養殖池に転換されたりして消失したマングローブ林の再生に取り組んでいます。

それでは、私の活動の様子を見ていただきましょう。

【写真】

植林の前に、植える時の注意事項を説明しています

【写真】

魚の養殖池跡に植えられたマングローブの苗木

【私のある1日】

今日は、カウンターパートであるPEMO(Provincial Environmental Management Office)の職員と一緒に、住民が植林を行ったサイトの調査を行います。植林地の面積を測ったり、植えられた種(胎生種子)の定着具合を確認したりします。

AM 5:30 起床

この日は、市のトレーニングセンター(ドミトリー)に宿泊していました。今日は引き潮が7時過ぎなので、その時間に調査にとりかかれるように早起きです。

AM6:00 出発

AM6:10 朝食

フィリピン人は朝食を大切にします。朝からご飯とおかずをしっかり食べて出かけます。

AM7:00 現地到着

【写真】

植林のために苗木を運ぶ住民グループ

現地住民組織のリーダーに迎えられて、植林の現場へ。まず、次回の植林候補地へみんなで移動です。深い泥に埋まりながら、育っている木を掻き分けて進むと、まだ木が生えていない平らなスペースにたどり着きました。大体の位置と大きさを記録。さらに先へ進むと今度は川沿いの天然更新(自然に落ちたり流れ着いたりした種から芽が吹いて木が育ちかけているところ)が少し進んでいるところへ。ここも、補助的に植林をしてもよさそうです。このように、植林予定地を見ながら植える樹種とその段取りを考えます。

次に、前回植林したところへ移動。ここは泥が深く少し潮が上がりだしたので、若い職員と二人で周囲測量をすることに。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を持って、植林地のまわりに育ったマングローブの根っこにしがみつきながらゆっくりゆっくり1周回りました。後で計算したら1ヘクタールしかなかったのですが、その周囲を歩くのに約1時間もかかりました。二人とも林業科卒だったので、「こんな調査が好きなんて、私たちは珍しい人種だよね」と言いながら戻ってきました。

AM10:00 休憩と計画

帰ってきて、井戸水で泥を洗ってから、用意してもらっていたココナッツのジュースをいただく。汗をかいた後のココナッツジュースはとてもおいしいです。体力を回復!ここで、リーダーとPEMOのスタッフと一緒に植林地の様子を見た感想や今後の計画について話し合い、前回の分の苗木代の支払いを行いました。

子どもたちに、「今度いつ来るの?」と聞かれ、「また来月だよ」と言うと、名残惜しそうに見送ってくれました。

AM12:00 昼食

PM1:00 別の村を訪問

ここは、川の中にできた小さな島に植林をしたのですが、台風のときにほとんどの苗木が流されてしまいました。今回は、その流された状況の視察です。小さな船に乗せてもらって島に到着。ニッパヤシが生えている際にだけ数本が残っていました。ここは、また同じ樹種を植えても流されてしまうだろうということで、ニッパヤシが植えられないかどうか検討してもらうことに。

帰ってきたところで、キャッサバのお菓子が売られていたのでそれをおやつに。

【写真】

苗木が流されてニッパヤシの近くのものだけ数本残っているところ

【写真】

コミュニティ−グループとのミーティング

PM3:00 PEMOの仕事に同行

PEMOのスタッフがまた別の村に行くというので同行しました。ここも川沿いにマングローブが植林されていたので、それを少しだけ見学しました。

PM5:00 ドミトリーに戻り休憩

PM6:00 夕食

砂浜にあるいつも行くレストランで焼き鳥と魚のスープ、もちろんビールもいただきました。

PM8:00 就寝

明日は、ダイビングスポットもあるこの市でInternational Cleaning Dayのイベントがあるらしく、海底の清掃活動を手伝わせてもらうことになっています!

後日談ですが、事務所に帰って植林した範囲の面積を計算してみると、たった1ヘクタールしかありませんでした。あんなに苦労して歩いたのに、意外と狭いものですね。目標の20ヘクタールにはまだまだ遠い道のりですが、少しずつ地道に頑張っていきたいです。

【ちょっといい話—協力を開始した背景—】

第二次世界大戦中にアメリカ統治下であったフィリピンは、1941年日本に侵攻され、約4年間占領されていました。その時に、ネグロス島で最後まで日本兵が居残ったのが私たちの活動の中心地シライ市でした。このシライ市で通信部隊の小隊長を務めていた土居氏(故人)は、日本軍から教会を爆破するようにと渡された爆弾を海に投げるなど、フィリピン人に対しても思いやりのある行動をしていたため、地元の人からも愛されていました。土居氏は戦争後も残留していた日系二世たちの支援のために何度もネグロスに足を運んでいらっしゃる中で、現在のイカオ・アコ代表と出会い、「地元の人のためになる活動を」ということで始めたのが今のマングローブの植林です。それから11年。イカオ・アコは、毎年3〜4回のスタディーツアーを開催し、多くの若者と共にマングローブの植林を続けています。

【環境NGOイカオ・アコとは?】

海水の混じる汽水域でも生きられるマングローブ林は、海岸線沿いの村々を高波や強風から守ってくれるため、住民にとってはとても大切なものです。私たちは、マングローブの植林やその維持管理作業を現地住民組織と日本人のスタディーツアー参加者の共同で行うことによって、日本からのツアー参加者と現地の人々との友情と共にマングローブの森を育てています。将来の目標は、現地の住民たちが私たちの援助がなくても自主的にマングローブの再生事業に取り組んでいけるようにすることです。

【次号のお知らせ】

次号(第47号)は、ウズベキスタンで地域に根ざした障碍者の支援に取り組む、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンの田中久美子さんの1日をご紹介します。3月15日に掲載予定です。お楽しみに!