第6回:マラウイで子どもの栄養改善に取り組んでいます!ISAPH 齋藤 智子さん

【画像】第6回は、マラウイで子どもの栄養改善に取り組む、特定非営利活動法人ISAPHの齋藤智子さんに筆を執っていただきました。

Q1. 所属団体とマラウイでの事業概要を教えてください!

団体/組織名 特定非営利活動法人 ISAPH(アイサップ)
(International Support and Partnership for Health)
主な活動国・地域 ラオス共和国カムアン県
マラウイ共和国ムジンバ県
団体が目指していること 地域保健の向上支援を主とし、パートナーシップ(協調)と技術的な協力により、保健行政に携わるカウンターパートの人材育成を通した地域住民の健康増進を目指しています。ラオス及びマラウイでは、特に母子の健康増進を目指し、乳幼児の栄養改善に向けた活動が主軸となっています。
事業名 マラウイ共和国「子どもにやさしい地域保健プロジェクト」
事業概要 マラウイ北部のムジンバ県において村人の健康増進の支援活動を行っています。マラウイにおいては子どもの栄養障害が問題になっており、この地域においても多くの子どもたちが栄養の問題を抱えています。栄養調査の結果では、食物摂取量の不足や栄養バランス不良による障害が示唆されました。主な原因は偏った食習慣にあると考えられています。また、下痢症などの感染症も栄養障害の助長因子と考えられます。そこで、乳幼児の栄養摂取の向上と、栄養摂取の障害となる疾病の予防を主軸とした乳幼児の栄養状態改善を目的としたプロジェクトを実施しています。

Q2. 国際協力に関わるようになったきっかけ、理由を教えてください!

小学校の社会科の授業で国連の活動を学び、人種に関係なく途上国のために働いている人々の写真にいたく感動し、卒業文集で将来の夢として「世界(途上国)のために働きたい」と書きました。今思うと大げさでとても恥ずかしいのですが、このことが国際協力という職業を考えるようになった最初のきっかけです。
国際協力活動に従事するためには専門性を身につける必要があると考え、看護師、助産師になりました。病院で経験を積み、青年海外協力隊員として初めて国際協力活動に就くまで20年の歳月がかかりました。赴任地であるマラウイの空港に着き、タラップに立った時は感慨無量でした。

Q3. マラウイで事業をはじめたきっかけや対象地域、対象者を選んだ経緯・背景を教えてください!

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栄養豊富なお粥を調理中

ISAPHの設立母体である聖マリア病院では、JICAより研修の委託を受け、途上国の省庁関係者に対する地域保健研修を実施していました。2000年に同研修に参加したマラウイ保健省の研修員から、自分の村には保健施設が全くないので支援がほしいと懇願されました。その村が現在事業を実施しているムジンバ県のムジンゲ村です。研修員からの要望を受け、まずは病院職員の間で募金を行いました。集まった資金を届けると、村民は資材を買い、煉瓦を焼き、4年間かけて彼らの手で小さなヘルスポストを建設しました。この時の彼らのオーナーシップの高さには驚かされました。そして2005年からは、このヘルスポストが保健施設として機能するよう支援活動を始めました。
当時、ISAPHではラオスで乳幼児の栄養改善を目的とする草の根技術協力事業を実施していました。関連でマラウイでも乳幼児の栄養状態について調べてみると、非常に多くの問題を抱えていることがわかりました。子どもは国の宝です。栄養不良問題の改善は、健康面のみならず、学力の向上、社会参加の促進、ひいては国の経済の発展にも影響を及ぼすものです。これがマラウイでの草の根技術協力プロジェクトを始めることになったきっかけです。

Q4. 事業に関わる上で、一番気を配っていること/気を付けていることはなんですか?

問題解決の主体は住民であるため、私たち外部者からの押し付けは最小限に抑えること、そして住民から必要とされる支援を行うことです。住民に必要なことを住民自ら行うことで、持続発展性が生まれます。私たちの課題は乳幼児の栄養改善という目的の中で、いかに住民が必要としている支援を提供できるかにかかっていると思います。住民が主体となり、住民の求めるものを活動に反映させるためには村人の参加が鍵です。私たちのプロジェクトでは、村人への保健活動を担っているのは政府の保健監視員。この保健監視員と協力しながら村の保健ボランティアの養成に力を注ぎ、自律的な活動が実施される体制構築に努めています。

Q5. これまでに一番困った/苦労したことはなんですか?また、どのように乗り越えましたか?

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村のボランティアによる活動風景(健康啓発の劇や離乳食の調理実習)

村人の生活は自給自足の農業で支えられているにも関わらず、現金を持たない彼らは携帯電話やラジオなどを購入するためにせっかく収穫した主食のメイズや大豆などを換金してしまいます。その結果、自給分の食糧が不足し、なけなしのお金で値段が高騰したメイズを購入。このような状況の中で「子どもの栄養は大切」ということを理解してもらうには、子どもが抱えている栄養の問題を彼らに分かるように示し、理解を促し、栄養を適切に摂取すれば子どもが健全に育つことを実感してもらう必要があります。大変な時間を要するので毎日が時間との戦いですが、住民とのコミュニケーションを密にしながら根気よく説明しています。
また、母親グループのリーダーや保健ボランティアを対象とした、村での活動や栄養研修を実施しても、日当を支払わないと参加しない村人がでてしまいます。この状況を改善するために、現在カウンターパートとの間で話し合いを進めており、ボランティアの活動を数か月ごとに評価したり、保健活動にとくに寄与した村人を表彰し、賞品として日用品を授与したりすることで、人々のモチベーションをアップする方法が検討されています。

Q6. では、一番嬉しかった/やりがいを感じたことはなんですか?

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健康教育芝居(祈祷師のところで診察を受ける場面)

私が現地の活動を通じて一番うれしいと感じるのは、私たちの活動が住民に理解され、自発的な活動につながったことを実感できる時です。私たちの活動の目標は、住民ボランティアと母親グループを育成し、彼らが中心となって村人への健康増進活動を推進してもらうこと。特に活動の主となる健康教育では、住民が興味を持って学ぶことができるよう芝居を取り入れています。主な内容は乳幼児の栄養の話ですが、子どもが病気にかかった際にはただちに医療施設に連れていくというメッセージも伝えています。ある日、チボプリラという村で住民ボランティアとお母さんらの芝居による健康教育を視察した時のこと。お母さんが病気で苦しむ子どもを抱きかかえて家を出ました。お母さんが訪ねたのは祈祷師でした。物々しい格好をして祈祷を唱えながら現れた祈祷師役のお母さんに、観衆からどっと笑いがおきます。祈祷を受け帰宅しますが、子どもの病気は悪化。そこでようやくお母さんが子どもを病院に連れていきます。医師が治療すると子どもの顔に笑顔が戻りました。そこで医師役のボランティアが最後に一言。「子どもが病気になったら祈祷師の前にまず病院に連れていこう」。この芝居は、なぜ住民は病院に連れて行かないかという問題について母親たちが自発的に話し合い、祈祷師のまじないで病気が治ると信じていることが問題であるという結論をもとに、私たちが指導した芝居をアレンジして作られたものです。住民自身が健康増進のために必要なことを考え実践するという、私たちが目指していることが実現した瞬間で、とても感動しました。

Q7. 事業を進めていく中で、現地の人々にはどのような変化が見られますか?
今後重要になると思われること、今後の抱負を教えてください!

活動への理解が深まり、積極的に参加するお母さんが増えてきました。それに伴って活動を推進するボランティアや参加しているお母さんたちの身なりが小ぎれいになりました。活動地が住民の集いの場となり、誰かに見られているという意識から変化が生まれた結果のようです。
私たちの活動が定着するためには、普段の住民の生活の中に根付くことが大切です。今後は、より一層活動の重要性を理解してもらい、子どもの健康は自分たちで守るという意識を育て、住民自ら生活の一部として健康教育や調理教室を行ってもらうことを目指したいと思います。そして、地域住民が普及員として他の村人へ活動の輪を広げ、地域全体の栄養不良児の低減を図る予定です。

Q8. 最後にお聞きします。ずばり!国際協力を色に例えると何色でしょう?

虹色です。いろいろな色が1つになって、目標に向かって行動するからです。

ありがとうございました!