第11回:ブータンで廃棄物が原因で起こる環境汚染対策に取り組んでいます!一般財団法人 日本環境衛生センター 大澤 正明さん

【画像】第11回は、ブータンで廃棄物に起因する環境汚染対策に取り組む、一般財団法人日本環境衛生センターの大澤 正明さんに筆を執っていただきました。

Q1. 所属団体とブータンでの事業概要を教えてください!

団体/組織名 一般財団法人 日本環境衛生センター
主な活動国・地域 ブータン王国ティンプー市
団体が目指していること 当センターの定款では、「アジアを中心とした環境保全に関するネットワークの形成、人材の育成事業」を主要業務の一つとしているが、草の根事業はその一環として実施している。
事業名 「ブータン王国ティンプー市における廃棄物に起因する環境汚染対策に関する技術移転事業」
事業概要 「廃棄物に起因する公衆衛生状況の悪化」や「急激な人口の都市集中によるごみ排出量の増加、処理施設整備の立ち遅れ」が深刻な状況にあったため、既存最終処分場の改善や廃棄物処理システムの見直しを図っています。

Q2. 国際協力に関わるようになったきっかけ、理由を教えてください!

1994年3月、JICA固形廃棄物専門家としてインドネシア水道環境訓練センターに赴任する時に、当時小学4年生だった娘がブルーとピンクの糸で編み込んだプロミスリングを作ってくれました。糸が切れたら願い事がかなうという、当時子供たちの間で流行っていたものでした。「インドネシアの人と仲良くできて、よい仕事ができるように」と彼女がいいます。手首に巻き付けるのは恥ずかしいので、システム手帳のリングに括り付けて2年間のインドネシア生活を過ごしました。しかし、プロミスリングに託した私の思いは満願成就とまではいきませんでした。確かに仲良くはできましたが、本当にインドネシアの役に立つ仕事ができたかというと自信はありません。今も、国際協力にこだわるのは、あの時のプロミスリングになんとか決着をつけたいという思いが残っているからだと思います。

Q3. ブータンで事業をはじめたきっかけや対象地域、対象者を選んだ経緯・背景を教えてください!

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ごみ埋立地(搬入された収集車に野犬や牛が群がる)

2012年春、当時ティンプー市に赴任していたJICAシニア・ボランティアから、ごみ埋立地の改善について相談がありました。現地に行ってみると、国道側の斜面はごみで溢れて地滑りの恐れがあり、さらに搬入道路側の擁壁はごみで膨らみいつ崩壊するかわからない状態でした。また、覆土をほとんど実施していないため、餌を求めて300匹ともいわれる野犬が住みついていました。街の至る所に建設中のビルが立ち並び、この10年で人口が倍に膨れ上がったといわれるほどに都市集中が進んでいることが実感されました。このままでは、近い将来この街のごみ処理が破たんするだろうことは目に見えていました。私たちの経験と知見を活かすことが可能かと思われたので、埋立地の改善だけではなく、入口側の整備、つまりごみ排出量の削減・リサイクル対策も含めて提案しました。

Q4. 事業に関わる上で、一番気を配っていること/気を付けていることはなんですか?

私たち日本人が途上国に行った時に必ずと言っていいほど口にする「日本の30年前(あるいは40年前、あるいは50年前)と同じだね」という言葉は決して口にするまいと心に決めていました。それは相手国の伝統を否定する発想ですし、実際、私たちの過去の成功例をそのまま適用することは意味のないことが多く、むしろ失敗例を伝える方が有効な場合があると思うからです。つまり、経験をベースにした応用力が求められるということです。私自身それに対応できたかどうかは、自信のないところですが、ブータンの場合は「日本の参考にするべき時代を特定できない」という点で、仕事がやりやすい面がありました。日本のどの時代にも当てはまらない、強いて言えば、江戸時代の人々が英語を話し、テレビを見、携帯を操作するような感じです。

Q5. これまでに一番困った/苦労したことはなんですか?また、どのように乗り越えましたか?

初年度に2ヵ月間ティンプー市に滞在し改善案をまとめた「10の提言」という報告書を作り、市長を含めた環境部のメンバーに報告することにしました。数日後、市長室で14時から開催するという公文書が回ってきました。しかし、その当日市長室前で待っていたのに14時を過ぎても誰もきません。市長を待たせるのは失礼だろうと気が気でなかったのですが、結局彼らが集まったのは14時を15分過ぎた時でした。急いで、市長室に入ると、今度は肝心の市長がいません。秘書に聞くと外出しているとのこと。結局、市長には後日報告書読んでくれるよう口頭でお願いしましたが、40数ページもある報告書を読んでくれるわけもなく、空しい気持ちで帰国しました。その2か月後、市長のインタビュー記事が載った新聞の切り抜きが送られてきたのですが、その中に、私の報告書を読まなければ口にできない数値が載っており、報告書をしっかり読んでくれていたのだと嬉しかったです。

Q6. では、一番嬉しかった/やりがいを感じたことはなんですか?

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普及啓発キャンペーン(テーマ・ソングに合わせて踊る小学生たち)

事業開始から3年目に、分別収集の促進やごみの散乱防止を目的とした普及啓発活動をすることにしました。リーフレットを作る予定だったのですが、気が進みません。たぶん、誰も読んでくれない、作り手の自己満足に過ぎないような気がしました。もっと市民が参加できるような啓発活動にしたいということで、1)スローガンを公募する、2)テーマソングを作る、3)子供たちを対象にしたポスターコンテストを開催する、という3つの試みに変更しました。1)と3)は今でも日本でよく行われる方法ですが、2)は1978年に香川県善通寺市で実施された「リサイクル音頭」をヒントにしました。学校の先生が作詞し、プロの音楽コーディネーターが作曲し、2人の学生歌手が歌いました。6月5日の世界環境デーに市の中心部にある時計台広場で発表会を開いたのですが、ノリのいい音楽に合わせて踊る子供たちが可愛くて楽しいイベントになりました。

Q7. 事業を進めていく中で、現地の人々にはどのような変化が見られますか?
今後重要になると思われること、今後の抱負を教えてください!

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ごみ問題世論調査(左がカウンターパート、右が調査対象者。後日、彼女と通りでばったりと出くわした)

人口10万人余の小さな町ですから、通りを歩いているとよく顔見知りに出会います。ある時はレストランの女主人であったり、写真屋さんの店員であったり、ごみ収集車の運転手であったり。ある日、若い女性に出会いました。じっと顔を見合わせるのですが、互いに思い出せません。10秒ほど見つめあった後、彼女が「ウェイスト・マネジメント・チーム!」と叫びます。その前々日、ごみ問題に関する世論調査で、たまたまカウンターパートと訪ねた家でインタビューに答えてくれた女性でした。「ウェイスト・マネジメント」も嬉しかったし、「チーム」も嬉しかった。これから、機会をいただけるのなら、環境部との付き合いだけではなく、市民の一人一人と、そして環境対策に従事する多くの人と連携して、いや、巻き込んで、廃棄物対策に取り組んでいきたいと思っています。

Q8. 最後に…ずばり!国際協力を色に例えると何色でしょう?

虹色!

その理由は?!

ある時は青であり、ある時は赤であり、そして国によって7色であったり5色であったり…たぶんそれが国際協力の楽しさであるから。

ありがとうございました!