第13回:ネパール連邦共和国で安心・安全な出産のための母子保健の改善に取り組んでいます!ネパール交流市民の会 北原 照美さん

【画像】第13回は、ネパール連邦共和国で安心・安全な出産のための母子保健の改善に取り組む、ネパール交流市民の会の北原 照美さんに筆を執っていただきました。

Q1. 所属団体とネパール連邦共和国での事業概要を教えてください!

団体/組織名 ネパール交流市民の会
主な活動国・地域 ネパール連邦共和国 カスキ郡ポカラ市16区
団体が目指していること 産前産後ケアを受ける妊産婦が増え、安全な分娩が増加し、母子の健康が改善すること。
事業名 安心・安全な出産のための母子保健改善事業
事業概要 母子保健改善のために、町内会や女性グループと連携したワークショップや健診時の保健指導などを通じて、母への指導だけでなく、家族の理解やサポートを高めている。また、医療サービスの充実化のために、医療従事者の知識と技術の向上、また患者中心の医療の提供のための接遇対策などにも取り組んでいます。

Q2. 国際協力に関わるようになったきっかけ、理由を教えてください!

カンボジアで旅行がてらボランティアをしていたときのこと。NGOの寄付で貧困地区の子どもたちに古着を配る日に様子を見ていたら・・・10歳の男の子が選んだ服は・・・女性用のワンピース!「どうして?」とびっくりして聞くと、擦り切れた服を着た彼、「だってお母さんに似合いそうなんだもん!」がーん・・・でした。どうしてそんなに優しくいられるんだろう、どうして私はこんなにも私のことばかり考えているんだろう・・・。こういう人たちの中で暮らしたら、私ももっと優しくなれるかもしれない、と思ったのが一番のきっかけです。もともと幼稚園教諭だったので、その経験を活かして喜んでもらえたら、心ももっと元気になれるはずということで、国際協力LIFEが始まりました。

Q3. ネパール連邦共和国で事業をはじめたきっかけや対象地域、対象者を選んだ経緯・背景を教えてください!

ポカラ市と当会のある駒ヶ根市とは、2001年に国際協力友好都市となって以来、中学生派遣事業などを含む幅広い層の市民が関わって友好を深めてきました。交流を続ける中で見えてきたのが、母子保健を取り囲む課題であり、2008年から母子保健改善事業に取り組んでいます。2012年にはポカラ市と日本の外務省から支援を受けた母子友好病院が開院。ポカラ市の中でも市街地から離れた北部には、地域の母子にとって利用し易く、信用できる医療サービスを提供できる拠点がありません。母子友好病院を最大限に活用して、より良い医療サービスが提供できること、併せて同地域住民の母子保健に関する意識向上をはかることを目指し、技術移転を中心として本プロジェクトに取り組むことになりました。

Q4. 事業に関わる上で、一番気を配っていること/気を付けていることはなんですか?

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出産間近で重労働をする妻と呑兵衛の夫の劇(劇を通じて、分かりやすく住民に妊娠期の家族のサポートの重要性を伝えています。)

まず、確信していることは、人はみんな「素晴らしい能力や視点」を持っているということ。だから、私が一番大事にしたいのは、それぞれが持っている力が出てくるきっかけを作ること。「自分はできるんだ」ということに自分が気が付く、回りが気が付くということを意識しています。また、何事も上から目線で教えようとしないこと。経験を通じてのみが本当に習得できる道だと思います。うまく行かない可能性が高かったとしても、彼女たちが「できるのでは」と考えたことはまずやってみる。それでうまく行ったら本当にすごいし、うまく行かなくても、そこから気づくことは多い。やってみたことで自分の答えがでる。人から言われてやったり、やりたかったのにやれなかったりする活動より、学ぶことや充実感は遥かに大きいと感じます。

Q5. これまでに一番困った/苦労したことはなんですか?また、どのように乗り越えましたか?

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本邦研修(日本の病院による親切で丁寧なケアにひたすら感心するネパール人スタッフ)

本邦研修の人選が難しかったですね。プロジェクトで考える人物と各関係機関で参加させたいと思う人物が同じとは限らない・・・往々にして、職位と年齢で上の方が推薦される・・・。プロジェクト運営委員会での協議の末、上司レベルの方が優先される機関があり、現場からは不満が聞こえてきました。その際、気を付けたことは不満をもつ人たちの声を聞くこと、誠実に説明すること、彼女たちの能力を正当に評価し伝え続けること、決定事項について誰か(どこか)のせいにしないこと、決まったことにプロジェクトマネージャーとして責任を持つことなどです。納得してもらえたかどうかは人によりますが、少なくとも、より大きな問題につながることはありませんでした。また、上司レベルの方の参加は、機関全体に良いインプットとなり、結果正解でした。

Q6. では、一番嬉しかった/やりがいを感じたことはなんですか?

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吊るし雛贈呈(駒ヶ根市民の心のこもった手作りプレゼントによろこぶ院長先生)

ポカラ市民と駒ヶ根市民がつながっていると感じる瞬間の数々です。本事業では「民際」という「民と民による協力と交流」も大事にしています。そのうちのひとつは、市民団体の「吊るし雛飾り隊」が、ポカラの母子友好病院で生まれた赤ちゃんにと着物生地を利用して「六つ花」作りをしてくれています。「赤ちゃんが元気に育つよう願って作りました」のメッセージカード付き。ポカラのスタッフからは「ひとつひとつが丁寧に作られていてとても素晴らしい作品というだけでなく、みなさんがポカラに住む私たちのことを想って作ってくれたということに感激しています」のコメント。そして受け取ったお母さんは「赤ちゃんが見えるところに吊るして育てたい」と笑顔。本当にふつうの市民と市民がかかわり、つながる喜びが感じられる瞬間に醍醐味を感じます。

Q7. 事業を進めていく中で、現地の人々にはどのような変化が見られますか?
今後重要になると思われること、今後の抱負を教えてください!

看護師、クリーナー、地域保健ボランティアなど多様な関係者による混合グループで、参加型の取組みをしています。通常、上司からの指示で仕事をすることが多い中、この方法は「面白い!」「それぞれが自身の役割を得ることができた」「皆の新しいアイデアを集めて仕事をするので楽しい」などと好評で、1シリーズが終わると「早く次を始めたい」という声もあがるようになりました。改善に向けての考え方が、受け身的でなく、「どうやったらいいだろう」と頭をひねるようになってきているのではと感じます。今後、参加型活動をファシリテートできる人材を増やし、課題があるときに放っておくのではなく、自分たちで動き始めることが習慣になってくると良いと思っています。そういった活動を通して、どんな立場の人も、個々が尊重され充実感をもって仕事できる環境を作っていきたいです。

Q8. 最後に…「くさのね」であいうえお作文を作ってください!

(く) くったくのないその笑顔

(さ) さまざまな人のマヤ(愛)に満たされ

(の) のびのび育て

(ね) ネパールの赤ちゃん!

ありがとうございました!