平成19年度第2回開発教育小委員会議事録

  • 日時:2007年7月13日 (金)14:00〜16:00
  • 場所:JICA地球ひろば2階第二会議室

出席者(敬称略):

  • 開発教育協会事務局長:湯本 浩之
  • 関西NGO協議会:岩崎 裕保
  • 名古屋NGOセンター理事:野田 真里
  • JICA地球ひろば企画G長:小幡 俊弘
  • JICA国内事業部国内連携G連携チーム:松尾 沢子

協議事項:

1.多文化共生に関する調査研究についての報告

(JICA国内事業部より報告、参照:2007年6月18日最終報告会資料)

  • 去る6月18日に、客員研究員による最終報告会を開催した。8月頃には研究結果をまとめた報告書が発行される予定。
  • 研究員による多文化共生に関する概説と共にJICA国内機関がすでに開発教育支援の取り組みの一環で、地域と連携しながら多文化共生に関する事項も取り入れているなど現時点での対応状況や課題についても含められた内容となった。
  • 研究員の提言としては、多文化共生の問題はグローバルなもので、「開発」と深くかかわっていることをJICA側も認識すべきとの点あり。また、国際協力活動を通じて培われた異文化への理解や問題解決能力を持つJICA関係者(主にボランティア経験者など)が地域で果たせる役割について期待と課題についても盛り込まれている。今後は本報告を踏まえ、JICAが持つリソースをどのように地域が抱える多文化共生の問題に提供していくことが可能か、あるいはできないかを検討する予定。

(NGO側)

  • グローバル化が進む中で、現在、地域における多文化共生の問題は拡大し深刻化している。NGOの立場としても、困難に直面している人がいれば、国境や国籍を問わずに支援すべきと考え、実際に国の内外を問わず、困難な立場にある人々の支援を行っている。歴史的事実として、今日の多文化共生の問題にJICAは大きな責任をおっている。日本国政府およびJICAの前身である海外移住事業団は過去に国策として移住者の送り出しを実施したが、日本に帰国した元日系移民の問題に対する取り組みが手薄である。日系ボランティア事業を通じ、現地の移住者の支援を実施しているJICAは、日本に帰国した元移住者の問題である多文化共生問題にも取り組むべきである。
  • 今日、自治体における国際化を考える上で、多文化共生は一番ニーズが高い課題である、NGOもこれを支援している。JICAもこの課題を人権問題でもあるととらえてNGOや自治体と協働して積極的に取り組むべきはないか。
  • JICAが持つ様々なリソースの提供と同時に、既に各地域で独自の活動を実施しているNGOの活動を支援していくことを期待する。例えば、JICA「草の根技術協力」の国内版の実施はできないか?内容は日本語教育やブラジル学校に対する支援などが挙げられる。
  • 多文化共生を考えた時に、ニューカマーと呼ばれる人々のみならず、オールドカマーと呼ばれる在日韓国・朝鮮人の問題を無視することはできない。今回の調査研究も、彼/女らの歴史等を含めた研究を行う視点が必要であり、従来からある在日韓国・朝鮮人の問題を横に置いたまま多文化共生の問題に取り組んでも問題解決には繋がらないのではなかろうか。

(JICA側)

  • JICAが多文化共生・在日韓国・朝鮮人問題に取り組む場合、機構法上、外交上の問題等制約はあるが、現場のニーズに合ったJICAリソースが活用できる場があるかの見極めや、地域が抱える本課題について認識し伝えていくことが必要だと考える。

(NGO側)

  • 多文化共生を取り扱う際、人権問題や平和問題を切り離すことはできない。現に、中南米から来日した子どもたちの未就学が増加し、日本語の読み書きができない途上国の子どもたちが、就学できず日本社会の中で行き場を失っている。これは語学の問題だけではなく、明らかに人権問題であることを理解しなければならない。多文化共生という用語で人権の問題が薄められてしまうのは憂慮される状況である。
  • 『多文化共生』という用語を使うことで『人権』を後退させている感が否めない。さまざまな文化的背景を持った人びとが共に生きていくために何が必要かということと同時に、グローバル・スタンダード—例えば、「子どもの権利」や「ISO」など—にきちんと目を向けることは『普遍的な人権』を保障することになるという視座は不可欠である。日本の企業がこれらを遵守しているかどうかのチェックは重要なポイントであるはずである。
  • MDGsの一つとして2015年までの初等教育の完全普及というのがあるが、わが国の足元で日系人の子どもたちの未就学の問題が現実に起きている。NGOは途上国の未就学の子どもも、日本にいる未就学の子どもも、グローバル化の中での困難に直面する人々の本質的に同じ課題として支援している。JICAも途上国の子どもだけでなく、国内にいる途上国の子どもも本質は同じという認識を持つべきであり、この点で一致すればNGOは協働が可能である。多文化共生」という用語も良いが、日本の「国際化支援」という位置付けにすれば、JICAとしても支援しやすいのではないか?

(JICA側)

  • 多文化共生に対応していくのはJICAのみでは容易ではないため、どのような団体と組んでいけるかがポイントになってくると思われる。
  • 03年から05年までに実施された国際交流協力実践者全国会議を通じて構築されたネットワークを活用しながら、JICAとして何ができるかを考えていくのも一考である。
  • NGO-JICA協議会でも本研究の実施報告を行い、提言内容等についてNGO関係者とも共有したいと考えている。

(NGO側)

  • 開発教育とは、単なるODAの広報ではなく、グローバル化の中で途上国の問題と我々の生活がどう繋がっているかを考え、その中で何ができるかを考える、ということだと思う。先の日本における途上国からの移民の未就学問題等、まさにわれわれの地域の問題、足元の問題と、途上国の開発問題がつながっていることをきちんと理解してもらうこと、「他人事ではない、自分たちの問題」として理解してもらうことこそ、市民の国際協力への参加への基礎であるとNGOは考えている。JICA内でもその理念を共有し、NGOとの協働に向けて、今後組織の問題としてどう向き合うか考えてもらいたい。

(JICA側)

  • JICAの中で開発教育をどこまで主流化出来るか、というのがポイントであると考える。JICAは途上国援助機関であり、また、在外強化の流れがある中で、組織・体制の観点からどこまでやれるかを見極めていく必要があると思われる。

2.前回の議事録及び懸案事項の確認

(JICA地球ひろば担当者より報告、参照:平成19年度第1回開発教育小委員会議事録)

1)JICA主催事業で活用される開発教育教材にかかる制作コスト負担及びJICAとNGOの共催事業におけるNGO側の経費負担の軽減について

(JICA側)

  • 既に作成した教材の製作コストを負担することはできないが、当機構から教材制作の依頼をした場合は、コスト負担する可能性ありと思われる。

(NGO側)

  • 海外でのJICA草の根技協の活動の一環として作成される教材はJICAがコストを負担することが可能であるのに、なぜ国内での教材作成活動に対するコスト負担は不可能なのか。草の根事業の中で開発教育に対する予算を付けること等を検討できないか。また、教材作成費のみならず、ファシリテーター養成等の活動費も支援対象として見てもらいたい。
  • JICAの開発教育が単なるODA広報から抜け出し、国際協力に対する「厳しくも良き理解者」を獲得していこうとするのであれば、そのための教材作成はJICAにとっても死活問題ではないか?周知のとおり、ODA予算は減額傾向が続いており、かつて世界一だった日本のODAの規模もいまやアメリカは大きく水を開けられ、イギリスにも抜かれた。市民の理解や参加なしに、NGO、JICAを問わず国際協力は成り立たない。
  • 開発教育の教材作成は、調査研究や試作品の改良に時間がかかる一方、大量の部数を販売できるものでもない。その為、時間的にも経費的にもコスト高になる傾向は否めない。そうしたNGOの教材がJICAの関連事業の中で活用されているのであれば、開発教育支援という立場からそのコストを負担しあうことはできないのか?
  • 前回の会議で言及したが、NGOがJICAと連携して共催事業を実施する際に、JICAが会場費や講師謝金などを資金的に負担してもらえるのはありがたい。しかしそれによって、参加者から参加費が取れなくなると、会場費や講師謝金以外の諸経費はNGO側の持ち出しになってしまうのは、NGOとして運営的に辛い。

(JICA側)

  • 確認した限りではJICAが共催した際に参加費を徴収してはならないという事は無いと思われる。

(NGO側)

  • 正確には、教材等の実費は徴収できるかもしれないが、実際にこれまで共催してきたセミナー等では、「参加費は取れない」と言われている。NGOとしては協働者としてJICAに関わるより、講師として関わって、謝金をもらう方が時間的にも経費的にも負担ははるかに軽い。しかし、そうせずに、負担を承知でNGOがJICAと協働しようとしている意味をお考えいただきたい。NGOとJICAが協働して開発教育を推進するのであれば、NGO側に過度な経費負担を強いることのない連携協力の仕組みが必要ではないか。

(JICA側)

  • 継続的に検討をする。

2)文部科学省との協力について

(JICA側)

  • 前回の会議で、NGOが直接文部科学省と政策対話や政策協議の場を設定していくことが現状は困難であるため、JICAが間に入って欲しいという要望が出た件に関しては、何を文部科学省と協議していくかをまず検討する必要がある。当委員会でこれを明確にした上で、文部科学省側と話をしてみたい。

(NGO側)

  • 以前、本小委員会に文部科学省からオブザーバーとしてご出席いただいた実績がある。開発教育を学校レベルで普及させていくうえで、地域レベルではNGOは自治体や教育委員会と協働しているものの、文部科学省の協力も重要である。引き続き、働きかけをお願いしたい。

3)教師研修同行者について

(JICA側報告)

  • JICA国内機関の内半分以上の機関が、国際協力推進員(以下、推進員)や市民参加協力調整員、またはJICA職員を同行者としている。その理由として挙げられるのは、教師研修事業は、事前学習及び事後活動の取り組みに重点を置き、また参加者間のネットワークを構築し強化を図ることも重要視していることによる。教師研修は長期的な視点で考えるべき事業と考えており、同行者が海外研修事後も長期間に亘りネットワークを構築し、参加者と関わることが出来ることが望ましく、それに対応できる人材が同行者となっているケースが多い。
  • 平成19年度JICA地球ひろばのコースは、4コースを3コースにした経緯から、一グループ12名以上となり、ロジ業務を行う同行者と開発教育アドバイザーの同行者の2名を各コースに同行させることとし、後者については公募を行った。結果、各コース1名ずつ、計3名の同行者(開発教育ファシリテーター)を公募で採用した。

(NGO側)

  • まず、NGOの基本姿勢として、本小委員会においては開発教育の推進のためにJICAと信頼関係を築き、積極的に協働を進めていくものであり、これまでいくつもの協働事業を行い、具体的な成果を挙げてきた。これらついては、NGOはJICAとともに協働の成果として喜びあい、またきちんと評価をしてよりよい協働事業をつくり上げていきたいと考えている。
  • 次に、本件の基本的な事実として再確認いただきたいのは、海外教師研修にNGOの開発教育アドバイザーを同行させ、この研修の改善を図るという事業は、本開発教育小委員会においてJICAとNGOで共同で発案し、これまで進めてきたにも拘わらず、本小委員会でJICA側により今年度についてはNGO側による ファシリーテーターの推薦依頼の意向は無い旨(派遣推薦を希望する国内機関がなかったことと、地球ひろばが自力で公募でファシリテーターを募った事による)説明はあったものの、それ以上事の是非について双方で議論をする余地が無かった状況であり、非常に残念である。
  • 「教員の修学旅行」という批判もあった教師海外研修を見直すために、NGOとJICAの協働事業として、過去二年間、NGOより開発教育アドバイザーを派遣してきたが、NGO側の改善提案書に対して、JICAから未だ回答がない。フィードバックが欲しい。過去二年、開発教育アドバイザー派遣に取り組んで得た知見が、教員を育成する目的を持つ教師海外研修事業に活かされていないと感じる。また、今年度の地球ひろば教師海外研修事業においては、十分な議論が出来ないまま公募された。本来、今回の公募は、過去の実施結果や知見などに対し、JICAの評価があった上で行われるべきだが、前述の提案書に対して未回答のまま公募に至っており、NGO側としてその理由が見えない。
  • また、推進員等のJICAと契約関係にある人材や、公募した人材にしても結局甲乙関係であり、JICAと対等な関係にあるとは言えず、本小委員会を通じてのNGO推薦の人材のようにJICAに忌憚の無い意見を伝えることは出来ない。つまり、NGOを「安価なコンサル」として使っているようにしか見えない。その観点からも本小委員会を通じてのNGO人材の派遣は重要と言える。全てのコースにNGO推薦の人材が同行する必要は無く、将来的な研修内容の改善を目的にしたモニタリングの意味で一部のコースに継続的に同行してみてはどうか。

(JICA側)

  • 同行者に関しては、参加者人数に合わせた同行者の適正人数がある。同行業務には、ロジ業務と開発教育アドバイザー(ファシリテーター)業務があるが、8人のコースで、同行者を2名付けることが妥当かどうか、という問題と予算面の問題がある。
  • 同行者が推進員一名の場合、引率とファシリテーターの二つの業務をこなすことになる。しかし推進員は、開発教育ファシリテーターとしての技術が不足しているケースがあるので、技術向上のためには、研修の実施を検討したい。推進員の開発教育ファシリテーション力を向上させることが今後の課題である。
  • NGOから提出された提案書については、再度確認し、今年度の実施報告も含めた反省会の実施を検討したい。

4)地球ひろば設立に係る協働成果の提示について

(NGO側)

  • JICA地球ひろばの設立に係る事業はNGOとJICAの協働であるが、体験ゾーンの展示物やパンフレットなどにその旨が記載されていない。この問題は本小委員会や定期協議会でも取り上げたが、一向に改善されておらず非常に遺憾である。上述のとおり、NGOとしては開発教育の推進のためにJICAと協働していく姿勢であり、その協働の成果については、お互いの成果物としてきちんと提示し、評価してほしい。NGO側のアイディアが利用されるばかりで、それがきちんと世に示されないという印象を持っている。事実確認であるが、JICA地球ひろばの設置に当たって、本小委員会の場でJICA側がNGOに智恵を出してほしいと依頼し、これに応じたNGOが様々なアイディアを提供し、それらも活かしながらJICA地球ひろばが設立されたのであれば、それは協働の産物である。それを世にきちんと示さないのは公平では無く、当方としては憂慮している。
  • 地球規模の課題の解決のためには、途上国の生活と日本との関わりや、日本国内における問題等を考えなければならない。しかし現在の地球ひろばの体験ゾーンの展示物には、例えば、地球温暖化などによる現象について、途上国の原因が強調されているように思え、「途上国だけが悪い」という誤った印象を与えかねないと危惧している。開発教育的な視点が弱いのではないか。JICA地球ひろばがJICAの「開発教育の拠点」であるならば、展示物等を通した情報に先進国にも問題の原因があるという視点を更に取り入れ、学習教材として価値ある展示物を制作することに留意しなければならない。この辺りは是非NGOとJICAの協働事業として取り組みたい。

(JICA側)

  • 地球ひろば体験ゾーンは、課題部や地域部等の知見も得ながら、運営しているが、引き続き小・中学生の訪問を強く意識して、学習の素材となる展示物を作っていくよう留意したい。

5)開発教育実施諸団体(全国国際教育研究協議会、青年海外協力協会、協力隊を育てる会等)との合同会議について

(NGO側)

  • JICA側提案の同会議の目的やその会議における委員会の位置づけが不明確である。

(JICA側)

  • JICAの関係団体を含めて様々な団体が開発教育を実施しているが、その実態に関する情報が互いに不足しているのでまずは集まっていただき、実施内容を共有すると共に、JICAと協力できる部分が無いか等、検討することができればと考えている。その会議には小委員会の委員の立場で出ていただくというよりは、各開発教育NGOを代表する立場でご参加いただけないかと考えている。そこで出てきた課題を、また小委員会で検討することが出来ないかと思う。まずは一度実施し、その後継続的に行う必要性があるかを、検討してみるということでも良いのではないか。

(NGO側)

  • 提案の数団体による会議は団体紹介的な内容になっては意味が薄い。まずは担当者レベルで会議のニーズなどについての準備会議を実施するのも一案である。
  • 本小委員会自体も開始して6〜7年となり、過去数年の会議を経て、JICAとの議論の中で協力隊の派遣前研修や教師海外研修のアドバイザー派遣等の協働事業を対等な立場で進めてきた。ところが、昨今はそうした協働事業にNGO側が関われる機会が減り、JICAの独自事業のようになりつつあるのではないか。また、協働という関係が委託する側とされる側という関係に変容してきたように思う。
  • 双方が対等な関係でなければ、criticalな事は言いにくい。委託する側とされる側であっては、委託者に対して物は言えない。
  • 開発教育小委員会設立当初の目標は、開発教育を普及推進していくために、NGO側とJICA側の双方が考える開発教育の考え方を擦り合わせ、共通理解を得ていこうといことであった。そうした議論をNGOとJICAとの協働事業を実施していく中で継続していくことが目標であったはずだが、現在は、当初目標とは異なってきているように思える。
  • 数年の議論の結果、NGOとJICAの協働事業がいくつも生まれ、具体的成果を挙げてきた。しかしながら、昨今、協働関係が薄れたり、関係が委託者と受託者というように変化してきた傾向が見られる等、今後、もしNGOとJICAの対等なパートナーシップという前提が崩れ、これらの事業がJICA主体で進めていくことになるのであれば、本小委員会の性格や役割を見直す必要があるのではないか、と危惧を抱いている。

(JICA側)

  • 次回の照会事項とする。

次回開発教育小委員会実施:

  • 日時:9月21日(金)2時〜5時予定
  • 場所:JICA地球ひろば

議題事項

  • 教師海外研修受託NGOの会議について(今年度の海外研修実施報告を含む)
  • 開発教育実施諸団体(全国国際教育研究協議会、青年海外協力協会、協力隊を育てる会等)との合同会議について
  • 教師海外研修のNGO推薦者による同行レポートの内容確認

以上