ニュースリリース

インド向け2008年度前期円借款

インドの気候変動対策への取り組みを促進

2008年11月26日

1.国際協力機構(理事長:緒方貞子)は、11月21日、2008年度前期円借款(注1)として、インド政府との間で4件を対象に総額990億1,900万円を限度とする貸付契約を調印しました。

2. 1991年以降経済改革に取り組んできたインドは、同年以降、概ね年間5−8%の経済成長を達成し、特に2005年以降は9%台の高い経済成長率を記録しており、成長著しいBRICsの一員として注目を浴びています。一方で、人口増加や工業化の進展により、エネルギー消費の増大、森林の減少や都市の大気汚染といった問題が深刻化しています。このような状況を踏まえ、インド政府は第11次5ヶ年計画(2007年4月〜2012年3月)において、貧困削減と経済成長を持続可能なものとするため、エネルギー利用効率の改善や環境保全を重点開発課題の一つに位置付けていますが、約11億人の人口を抱えるインドにおけるこうした問題は地球全体に影響を及ぼしうるため、地球規模の問題としても取り組む必要があります。

3. 今次調印する円借款は、こうした背景の下、今年7月の洞爺湖サミットでの合意も踏まえ、エネルギー利用効率の改善、森林保全等、インドの気候変動対策への支援を柱としています。各事業の特徴は以下のとおりです。

(1)日本のトップランナー方式 (注2)を応用した省エネルギーへの取り組み
インドでは急速な経済成長に伴いエネルギー消費が増加を続けていますが、インドの工場数の約9割を占める中小零細企業は、設備の老朽化等により大企業と比べてエネルギー利用効率が悪く、エネルギー効率改善の余地が大きくなっています。「中小零細企業・省エネ支援事業」は、日本のトップランナー方式を応用し、インドの中小零細企業による先端省エネ機器導入等、省エネルギーの取り組みに必要な中長期資金を供給するとともに、省エネ金融制度の普及を支援します。

(2)現場森林官の能力向上支援による森林保全
インドの森林被覆率は、世界平均30%を下回る23%に留まっているうえ、人口増加及び木材需要の急増により伐採が進み、森林の劣化、水土保全機能の低下が起っています。この結果、家畜の飼料、燃料用の薪、現金収入源の果実の調達等、生計を森林に依存する貧困層の生活が圧迫され、更に森林に負荷をかける悪循環が生まれています。「森林管理能力強化・人材育成事業」は、州政府の森林局に勤務する現場森林官の森林管理能力の向上を行い、森林に依存して生活している地域住民の参加を促進した管理体制の強化を図ることにより、住民の所得向上と効果的な森林保全の推進を支援します。本事業により二酸化炭素の吸収源である森林が保全されるため、気候変動問題にも寄与することが期待されます。なお、本事業と相互に補完し、インドの中央政府および各州の森林管理関係者の能力向上を図る、技術協力プロジェクトの実施を検討しています。

(3)渋滞緩和による経済発展、都市環境改善
インドの主要都市では、経済成長による急激な都市化に伴い、自動車とバイクの普及が急速に進んだため、自動車とバイクによる交通渋滞及び排気ガス等による環境問題が深刻になっています。
南西部の経済・政治の中心地であるチェンナイ市では、利便性の高い地下鉄及び高架鉄道を整備することにより、交通渋滞の改善を図るとともに、大気汚染の緩和、温室効果ガスの排出削減を支援します(「チェンナイ地下鉄建設事業」)。なお、本事業では、エレベーターや点字ブロックの設置、車椅子スペースの確保など高齢者・障害者にも配慮したユニバーサルデザインを取り入れた設計となる予定です。
また、インド南部の主要都市であるハイデラバード市では、同都市圏の外環道路を建設することにより、地域経済の発展及び市中心部の交通渋滞緩和を目指します。交通渋滞の緩和は、アイドリング時間の短縮を通じて温室効果ガスの削減に寄与します。(「ハイデラバード外環道路建設事業(フェーズ2)」)。さらに、高度道路交通システム(ITS)(注3)を導入することにより、同都市圏全体の道路網の効率性を高めることで本事業の開発効果向上が期待されます。

4. 今次円借款で支援する事業においては、事業効果の持続性を高めるために、様々な形で知的協力を推進する予定です。主要なものは以下の通りです。
「中小零細企業・省エネ支援事業」では、日本の省エネ関連融資制度の知見等を活かして、融資対象となる省エネ機器リストの作成を支援するとともに、省エネ事業に対する金融機関の融資審査能力強化を図ります。同事業では、融資対象プロジェクトのCDM登録申請の支援を検討します。
「チェンナイ地下鉄建設事業」及び「ハイデラバード外環道路建設事業(フェーズ2)」では、本事業に従事する多数の単身移動労働者のHIV/エイズの感染リスクを抑えるため、労働者を対象とした啓発教育等のHIV/エイズ予防活動も実施します。

5. 今回の円借款事業は、新JICA発足後初の円借款事業の承諾となります。今後新JICAにおいては、技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力という三つの援助手法の一体的運用に努めていきます。さらにインドでは、「経済インフラ整備を通じた持続的成長」、「雇用を伴った経済成長」、「貧困削減」、「環境・気候変動対策」等の重点課題への支援を展開し、より迅速且つ効果的な事業実施等、大国インドへのインパクトのある協力を実施していく方針です。


(注1)日本政府が2007年6月に発表した円借款検討時期の柔軟化を受け、インドはその初のケースとして、昨年度より、従来年一回を原則としていた検討手続きを年二回とする柔軟化を実施しています。

(注2)自動車の燃費基準や電気製品等の省エネ基準を、それぞれの機器において現在商品化されている製品のうち最も優れている機器の性能以上に設定する制度。99年施行の改正省エネ法により導入された。

(注3)情報通信の先端技術を用いた、交通状況(渋滞・事故等)をモニタリングし最適な交通量を管理するシステムと、高速道路料金所のETCシステムを指します。