ニュースリリース

インド向け2008年度後期円借款

迅速ですべての人々が恩恵を受ける成長をサポート

2009年03月31日

1.国際協力機構(理事長:緒方貞子)は、3月31日、2008年度後期円借款(注1)として、インド政府との間で4件を対象に総額1,370億2,800万円を限度とする貸付契約を調印しました。

2.1991年以降経済改革に取り組んできたインドは、同年以降、概ね年間5−8%の経済成長を達成し、特に2005年以降は9%台の高い経済成長率を記録し、成長著しいBRICsの一員として注目を浴びてきました。インド政府は持続的な経済成長を通じて貧困削減を進める政策をとってきていますが、未だ北東部などの貧困州は、一人当たり所得が全国平均の4割にも満たない等、開発から取り残されている状況にあります。このような状況を踏まえ、インド政府は第11次5ヶ年計画(2007年4月〜2012年3月)において、「Faster and Inclusive Growth」を主要命題に掲げ、迅速な成長(Faster Growth)による経済のパイ全体の拡大とともに、すべての人々が恩恵を受ける成長(Inclusive Growth)を実現するため、地域間や民族間の経済・生活水準の格差是正も意図した政策・事業を実施することとしています。 具体的には、大都市を中心とした経済インフラの整備を引き続き進めつつ、地方都市インフラへの投資を促進させるために中央政府が整備資金を供与する仕組み(注2)を実施するなど、地方インフラ整備を重点開発課題の一つと位置付けています。

3.今次調印する円借款は、こうした背景の下、首都デリーにおける都市交通整備事業1件と、貧困州の一つである北東部アッサム州を含む地方都市等の上水道整備事業3件の合計4事業を支援するものです。各事業の特徴は以下のとおりです。

(1)首都デリーの都市交通網の整備と環境改善
首都デリーにおいて、地下鉄を含む都市鉄道の建設を通じ、一極集中の交通混雑の緩和とともに、世界の主要都市の中でも特に深刻な大気汚染の緩和を支援します。円借款を通じてデリー高速輸送システム建設事業の第1フェーズに対しても支援を行っており、本事業は第2フェーズとして新たに路線を追加するものです。既に2006年11月に完成している第1フェーズに加え、本事業を含む第2フェーズが開通すれば、都営地下鉄の乗客規模を超える合計約300万人の乗客の利用が見込まれます。また、本事業ではエレベーターや点字ブロックの設置、車椅子スペースの確保など高齢者・障害者にも配慮したユニバーサルデザインを取り入れた設計としています。

(2)上水道整備による地方都市/地域の生活環境の改善
安全な飲料水の入手は健康で衛生的な生活にとって必要不可欠であるため、インド政府による現在の第11次5ヵ年計画でも「インド全土での飲料水への持続的なアクセスの確立」という目標が特記され、フッ素や化学物質による水質汚染の影響を受けている地域には特別な配慮をしていくとしています。実際、人口増加や経済発展に伴う上水需要の増加に施設整備が追いついておらず、需要に対応した安全かつ安定的な上水道サービスの提供による住民の生活環境改善が重要な課題となっています。「ホゲナカル上水道整備・フッ素症対策事業(フェーズ2)」及び「ケララ州上水道整備事業(III)」では、水不足が深刻かつ地下水の水質が悪化している都市/地域において表流水を使った上水道施設を新設し、安全かつ安定的な上水道サービスの提供を図り住民の生活環境の改善を図っていきます。また、「グワハティ上水道整備事業」及び「ケララ州上水道整備事業(III)」では、上水道設備の整備及び水道事業体の組織能力開発を通じて、急増する水需要へ対応することで住民の生活環境の改善を図っていきます。

4.今次円借款で支援する事業においては、事業効果の持続性を高めるため、技術協力スキームを効果的に組合わせるなど様々な形での協力を推進する予定です。主要なものは以下の通りです。
「デリー高速輸送システム建設事業フェーズ2(IV)」では、本事業に従事する多数の単身移動労働者のHIV/エイズの感染リスクを抑えるため、労働者を対象とした啓発教育等のHIV/エイズ予防活動も実施します。また、将来の高密度運転に伴うデリー交通公社(Delhi Metro Rail Corporation Limited: DMRC)の運行・危機管理能力の更なる向上のために、2006年度に東京地下鉄株式会社による現地調査及び日本での視察研修を実施し日本における地下鉄の運行・危機管理の経験をフィードバックしており、さらに2008年2月からは、技術協力スキームにて、地下鉄車両の維持管理及び安全運行能力の向上のための専門家を同社からDMRCに派遣しています。
「ホゲナカル上水道整備・フッ素症対策事業(フェーズ2)」では、2007年度に承諾したフェーズ1から引続き、フッ素についての知見を有する現地の専門家や財団などと連携し、医師や教員を対象にフッ素症についての研修を行い、フッ素症患者の発見を推進するともに、患者に対しては、水源の変更や病気をこれ以上進めないための食事指導等を実施します。また、本事業では指定部族、指定カースト、女性を含めた社会的弱者・貧困層へ十分に配慮することとしています。これには、貧困層においても支払いが可能な水道料金体系や各コミュニティでの料金徴集体制への提言も含まれます。

5.今後新JICAにおいては、技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力という三つの援助手法の一体的運用をこれまで以上に積極的に努めていきます。さらにインドでは、「経済インフラ整備を通じた持続的成長」、「雇用を伴った経済成長」、「貧困削減」、「環境・気候変動対策」等の重点課題への支援を展開していきます。さらに、金融危機への対応についてもインド政府を政策対話を進め、より迅速且つ効果的な事業実施等、大国インドへのインパクトのある協力を実施していく方針です。


(注1)日本政府が2007年6月に発表した円借款検討時期の柔軟化を受け、インドはその初のケースとして、昨年度より、従来年一回を原則としていた検討手続きを年二回とする柔軟化を実施しています。

(注2)Jawaharlal Nehru National Urban Renewal Mission (JNNURM)と呼ばれる試み。インフラ整備資金を供与する際に地方政府の組織能力開発に資する改革の実施を条件にするもので、2007年度から7年間の予定で実施中。