ニュースリリース

スリランカ向け円借款契約の調印

−紛争影響地域である東部支援、地域間格差是正支援−

2010年03月29日

【写真】

調印式の様子

1.国際協力機構(理事長:緒方貞子)は、3月26日、スリランカ社会民主主義共和国政府との間で、総額366億6,400万円を限度とする貸付契約を調印しました。

2.スリランカでは、昨年5月に、25年以上にわたる政府軍とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)との紛争が終結しました。紛争の影響により発生した国内避難民の再定住、開発が遅れている北・東部州の復興が喫緊の課題であると共に、スリランカ全土において人々が平和の恩恵を感じられるよう、スリランカの均衡のとれた開発がなされていくことが、今後の平和の定着に向けても重要となっています。

3.こうした中、今次円借款では、紛争影響地域の復興及び地域間格差の是正を支援します。具体的な特徴は以下の通りです。

(1) 東部復興支援
東部州は長年にわたった紛争の影響により開発が遅れている地域です。紛争の影響を受けた人々が平和を享受し生活を向上させていくことが大変重要な課題となっており、今回供与する円借款事業のうち2事業が東部州を対象にしています。「地方道路開発事業」では、東部州の道路約300kmを整備することにより、経済・社会サービスへのアクセス向上を図り、地域住民の生活改善、所得向上を目指します。
また、東部州の上水道普及率は約27%に留まっており、水需要の増加に対して水供給が追いついていない状況です。そのため、遠方まで水汲みに行くことや水質の悪い既存の井戸を使うことを余儀なくされている人々が大勢います。「東部州給水開発事業」では、上水道整備を行い上水道へのアクセス向上を図ると共に、上水道整備が行き届かない遠隔地域においては小規模給水設備の建設等を行います。

(2) 地域間格差是正
スリランカにおける地域間格差は非常に大きく、全国で9つある州のうち、コロンボのある西部州のみで全国GDPの50%以上を占めています。また、コロンボ圏と地方ではインフラ整備の格差も顕著であり、地方において所得・生活水準の向上により貧困削減を図ることが同国の課題となっています。「地方道路開発事業」は中央州及びサバラガムワ州も対象としており、両州で計約350kmの道路整備をすることにより、経済・社会サービスへのアクセス向上を図り、コロンボと比べてより開発途上にある地方部の開発を支援します。
また、スリランカにおいてコロンボ圏以外の地域では下水道はほとんど整備されておらず、全国の下水道普及率は約2.5%に過ぎません。コロンボ圏以外の地域では、処理が十分ではないまま海や河川へ汚水を放流していることから衛生状態が悪化し、水源河川の水質汚染にもつながっています。「キャンディ市下水道整備事業」では、スリランカ第二の都市であるキャンディ市において、下水収集・処理システムを整備するとともに、貧困層居住区において衛生設備等を整備します。

4.今後もJICAは、技術協力、有償資金協力(円借款)、無償資金協力それぞれのスキームの特性を活かしつつ、3スキームを一体的に活用し、紛争影響地域の復興並びに全ての国民が国の発展を享受できるための、経済・社会インフラ整備を支援していく方針です。


【参考】
(注)STEP適用

案件名金額
(百万円)
金利(%/年)償還期間(年)
据置期間(年)
調達条件
本体コンサルティングサービス
--
地方道路開発事業 中央州・サバラガムワ州9,1561.400.013010アンタイド-
地方道路開発事業 東部州3,9650.650.014010アンタイド-
東部給水開発事業4,9040.650.014010アンタイド-
キャンディ市下水道整備事業14,0870.650.014010アンタイド-
アッパーコトマレ水力発電所建設事業(II)4,5520.200.014010タイド(注)-
合計36,664------

表内の「-」は当該項目の条件が設定されていないことを表します。

(1) 地方道路開発事業
Provincial/Rural Road Development Project
(事業の背景と必要性)
スリランカは植民地時代に築かれた密な道路網を利用して、国内陸上輸送の約9割を道路運送が担っており、同国の経済社会活動において道路ネットワークは非常に大きな役割を果たしています。しかし、同国の経済成長に伴い交通量が著しく増加しているにも関らず、特に地方部における既存道路の多くは長年十分な維持管理がなされてこなかったために劣化がひどく、地方部の住民の学校・病院・マーケット等の経済・社会サービスへのアクセスの障害となり、地方とコロンボ圏との生活環境・経済状態の格差拡大を招いています。
こうした状況の下、地方部の経済活性化による地域間格差是正のため、地方の道路ネットワークの改善が必要となっています。

(事業の目的と概要)
本事業は、中央州、サバラガムワ州及び東部州において、路面の劣化が著しい州道及びコミュニティ道路の改修(中央・サバラガムワ州:約350km、東部州:約300km)を行うことにより、経済・社会サービスへのアクセス向上を図るものです。
また、本事業は、アジア開発銀行及び世界銀行と連携して取り組む道路網改善支援計画の一部であり、他ドナーと協調して全国的な道路ネットワークの改善を目指します。
借款資金は、道路改修のための土木工事及び資機材調達、入札補助及び施工監理等を行うコンサルティング・サービスに充てられます。

(事業実施機関:中央州、サバラガムワ州)
内務省(Ministry of Local Government and Provincial Councils)
住所: No.330, Union Place, Colombo 02, Sri Lanka
TEL:+94-11-2399673、FAX:+94-11-2329725

(東部州)
財務計画省(Ministry of Finance and Planning)
住所:First Floor, the Secretariat, Colombo 01, Sri Lanka
TEL:+94-11-2484566、FAX:+94-11-2448063

(今後の事業実施スケジュール(予定))
(i) 事業の完成予定時期:2014年1月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii) コンサルティング・サービス(施工監理等)
招請状送付予定時期:2010年5月
(iii) 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
本事業の土木工事は全て小規模な調達パッケージとなることから、国内競争入札で行われます。

(2) 東部州給水開発事業
Eastern Province Water Supply Development Project
(事業の背景と必要性)
スリランカの上水道普及率は約34%と低い水準に留まっており、さらに東部州においては、上水道普及率が約27%と全国平均を下回っていることに加え、上水道が整備されている地域でも1日あたりの給水時間が短い地域が多く、十分な水供給ができていないことが課題となっています。
スリランカ政府は、貧困削減の取り組みの一環として全国民の安全な水へのアクセスの確保を目標として掲げており、ミレニアム開発目標を踏まえ、2015年までに全人口の85%、2025年までに全人口の100%が井戸や表流水等を通じて安全な水にアクセスできることを目標とすると共に、2011年までに上水道普及率が全人口の40%になることを目指しています。

(事業の目的と概要)
本事業は、東部州において給水設備を建設・拡張することにより、安全な飲み水の供給を図り、事業対象地域住民の生活水準の改善を図るものです。特に、上水道戸別接続にかかる初期接続費用について、低所得層の収入レベルに配慮したものとし、貧困層の安全な水へのアクセスが促進されるよう配慮をしています。
借款資金は、給水設備整備等のための土木工事及び資機材調達、本事業実施支援等のためのコンサルティング・サービスに充てられます。

(事業実施機関)
財務計画省(Ministry of Finance and Planning)
住所:First Floor, the Secretariat, Colombo 01, Sri Lanka
TEL:+94 -11-2484566 、TEL:+94-11-2448063

(今後の事業実施スケジュール〔予定〕)
(i) 事業の完成予定時期:2013年12月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii) コンサルティング・サービス(事業実施支援等)
招請状送付予定時期:2010年4月
(iii) 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示
パッケージ名:送水管調達パッケージ(Pipes & Fittings for Transmission Main Package)
予定時期:2011年3月


(3) キャンディ市下水道整備事業
Kandy City Wastewater Management Project
(事業の背景と必要性)
スリランカ第二の都市であり、世界文化遺産にも指定されている有数の観光都市であるキャンディ市においても、下水道は未整備の状態です。同市では、上水道の普及や人口・観光客の増加に伴い汚水排出量が増加する一方、十分な処理が行われないまま、市内に位置するキャンディ湖やメダ川、マハヴェリ河に汚水が流入し、水質の悪化につながっています。マハヴェリ河はキャンディ市の上水源であるだけでなく、スリランカ最大の流域面積を有する河川として同国の主要な上水源であることからも、キャンディ市において下水処理を適切に行い、マハヴェリ河の水質改善に取り組むことが求められています。加えて、同市の貧困層居住区においては、トイレ等の衛生設備自体が不足しており、未処理の汚水が側溝や小川に流れ込み、悪臭や赤痢・腸チフス等感染症の原因にもなっていることから、下水道の整備と併せて、同区における衛生環境の改善が求められています。

(事業の目的と概要)
本事業は、キャンディ市において下水収集・処理システムを整備するとともに、同市の貧困層居住区において公共トイレ等の衛生設備を整備・改善することにより、衛生環境及び生活環境の改善並びにマハヴェリ河の水質改善を図るものです。
また本事業では、貧困層を含む住民の下水道接続促進のため、対象地域に居住する全世帯に対し、本事業の中で戸別接続初期費用が無償化されると共に、下水道料金体系は低所得層の収入レベルを考慮して設定されます。なお、本事業の対象地域では青年海外協力隊が衛生に関する啓発活動を行なっています。
借款資金は、下水処理場建設や下水管敷設等のための土木工事及び資機材調達、施工監理やキャパシティビルディング支援等のためのコンサルティング・サービスに充てられます。

(事業実施機関)
国家上水排水庁(National Water Supply and Drainage Board)
住所:PO Box 14, Mount Lavinia, Sri Lanka
TEL:+94-11-2636449、FAX:+94-11-2636449

(今後の事業実施スケジュール〔予定〕)
(i) 事業の完成予定時期:2017年9月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii) コンサルティング・サービス(施工監理等)
招請状送付予定時期:2010年4月
(iii) 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示
パッケージ名:下水処理場建設等パッケージ(Construction of Wastewater Treatment Plant)
予定時期:2010年9月

(4) アッパーコトマレ水力発電所建設事業(II)
Upper Kotmale Hydro Power Project (II)
(事業の背景と必要性)
スリランカの電力需要は年率約7%のペースで増加している一方、発電設備容量は増大する電力需要を賄うためには未だ十分な水準ではなく、深刻な供給力不足に陥っており、電力供給の不安定さが国民生活や投資等、経済社会活動にとっての大きな制約要因となっています。
スリランカでは水力発電に適した地形に恵まれ、降水量が豊富であることから、これまでは水力発電を中心に電源開発が進められてきていますが、水力発電への過度の依存は降水量に左右され易い脆弱性を有しているとともに、水力発電の開発可能な地域には限りがあるため、本事業は同国最後の新規大規模水力発電事業として進められています。スリランカでは、今後発電規模を拡大し、かつ天候に左右されない安定的な電力供給を確保するため、火力発電を主力とし、バランスのとれた電源構成に転換していく計画ですが、国産燃料を有しない同国においては、燃料輸入に伴う発電コストの変動は大きなリスク要因となるため、水力資源を最大限開発しておく必要性があります。

(事業の目的と概要)
本事業は、マハヴェリ河支流コトマレ川(既存コトマレ・ダム上流)に流れ込み式水力発電所(150MW)を建設することにより、増大する電力需要への対応し、スリランカの経済成長に寄与するものです。
本事業に対しては2002年3月に貸付契約を調印しており、今般の借款供与はこれに続くものです。
借款資金は、発電所建設等のための土木工事及び資機材調達、施工監理等のためのコンサルティング・サービスに充てられます。

(事業実施機関)
セイロン電力庁(Ceylon Electricity Board)
住所:762 1/1, Maradana Road, Colombo 10, Sri Lanka (Upper Kotmale Hydro Power Project Colombo Liaison Office)
TEL:+94-11-2694310、FAX:+94-11-2694312

(今後の事業実施スケジュール〔予定〕)
(i) 事業の完成予定時期:2012年3月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii) コンサルティング・サービス(施工監理等):雇用済み
(iii) 本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:契約済み