ニュースリリース

インド向け2010年度前期円借款

−成長著しいインドの環境調和型発展と生物多様性を支援−

2011年02月17日

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調印式の様子

1. 国際協力機構(理事長:緒方貞子)は、2月17日、インド政府との間で2010年度前期円借款として、3件、総額464億100万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

2. 人口が急増し環境負荷が高まるアジアでは、低炭素社会の実現を目指しながら経済発展を進める「グリーン・グロース」への注目が集まっています。1991年以降経済改革に取り組み、概ね年間4−9%の経済成長を達成し、成長著しいBRICsの一員として注目を浴びてきているインドは、世界的な経済危機からもすばやい回復を見せ、2010年度も9%程度の高い経済成長率が予測されています。同時に、環境負荷を緩和しながら成長目標を達成することを求められているため、今次円借款供与を通じ、JICAはインドの環境調和型発展と生物多様性保全への取組を支援します。

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3. 2010年は国際連合で定められた「国際生物多様性年」で、日本は10月に生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を議長国として主催しました。更に、2012年には、同会合の次会議(COP11)がインドで開催されることになっているなど、日印の生物多様性保全に対する取り組みに世界中の関心が高まっており、インド政府も国家行動計画における生物多様性や森林保全を積極的に実施しています。

4. 世界には、生物多様性が高いにも関わらず、破壊の危機に瀕しているとして保全が世界的な課題になっている地域(生物多様性ホットスポット)が34箇所存在しています(注1)。その中の1つ、インド南部の西ガーツ山脈は、多様な固有動植物が生息し、豊かな生物多様性を有しています。その西ガーツ山脈を含む地域を対象地域とした「タミル・ナド州生物多様性保全・植林事業」では、同地域における生物多様性保全及び植林活動を支援します。具体的には、侵略的外来種の除去等を通じた生態系保全、火災・密猟等のモニタリング体制強化、豊かな生態系を有する貴重種が多く生息する保護区の管理能力強化、周辺住民の生計改善活動、エコツーリズム等の多岐にわたる活動を支援します。

5. また、増大する人口と、高い成長率を支える経済活動に対し、特にインドの大都市では上水需要の増加に施設整備が追いついておらず、水量、水質、及びサービスの面で依然として数多くの問題を抱えています。特に、下水管接続率は都市部において28%に留まっており、未処理下水等が河川に垂れ流され、汚染された水を媒介とする感染症、地域住民の健康被害、汚水を発生源とする悪臭が生じており、地域住民の衛生・生活環境が脅かされています。「ヤムナ川流域諸都市下水等整備事業(III)」では、ガンジス川と並び女神が宿る聖なる川として多くのヒンズー教徒が沐浴に訪れるヤムナ川の水質改善を図るため、下水道施設整備を進めます。また、下水発生量を減らすためには、節水等、人々の生活習慣や川に対する意識を変えることが不可欠であるため、インフラ整備だけではなく、地域住民に対する啓発・広報活動等も実施します。

6. さらに、今次円借款で支援する事業においては、事業効果を高めるため、JICAの複数のスキームを活用し、総合的な支援を実施していきます。「ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進事業」では、市場価値の高い野菜類の栽培を推進し、農民の所得向上を目指します。具体的には、円借款を活用して小規模灌漑施設やアクセス農道等の生産基盤を整備するとともに、モデル地区では、技術協力プロジェクトにより派遣される日本人専門家が農業普及員や農民に対し野菜栽培や加工・販売に関する技術指導を行います。技術指導を受けた農業普及員は、円借款対象地域である同州の他地区において、新しい農業技術を伝播する役割を担います。このように、小規模灌漑施設といったインフラ整備と技術指導を組み合わせた包括的な協力を行い、デリー等大都市での高級野菜や果物等ニーズの変化に対応した生産・流通体制が確立することが期待されています。


(注1)国際NGOであるコンサベーション・インターナショナルが指定している地域。


(参考)
借款金額及び条件

案件名借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年)据置期間(年)調達条件
本体コンサルティング・サービス
ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進事業5,0011.400.013010一般アンタイド
タミル・ナド州生物多様性保全・植林事業8,8290.65(注2)0.014010一般アンタイド
ヤムナ川流域諸都市下水等整備事業(III)32,5710.65(注2)0.014010一般アンタイド
合計46,401-----

(注2)環境案件には、開発途上国の環境問題への取り組みを積極的に支援するため、緩やかな貸し付け条件を適用しています(金利0.65%/年、償還期間40年・据置期間10年)。

(1)ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進事業
Himachal Pradesh Crop Diversification Promotion Project

(a)事業の背景と必要性
デリーなどの近隣大都市では、中間層の所得が急激に増加しているため、生鮮果実や高級野菜等に対する需要が急速に増加すると見込まれています。デリーから北に350km程に位置するヒマーチャル・プラデシュ州はヒマラヤ山麓に拡がる標高350mから7,000mの起伏に富む山岳州ですが、労働人口の約7割は農業に従事しています。気候が冷涼であり、大消費地デリーへの地の利を有するヒマーチャルでは、農民が端境期の野菜類や果物などの高付加価値作物を生産し、デリー等大都市の消費者へ販売することができれば、収入を増やすことが出来ます。

しかし、現在、ヒマーチャル・プラデシュ州では、灌漑施設が普及していないため、栽培される作物の大半は天水に依存する穀物であり、灌漑施設を持つごく限られた農家しか野菜類を栽培することができません。また、デリーへ出荷するためには道路が必要ですが、州内の道路の6割程度しか通年に亘った使用が出来ず、道路が使えない時期や地域では、徒歩で農作物を運搬しています。これは、農民にとって重労働であるだけでなく、輸送中に生鮮野菜が傷んで販売価格が下がる等、農家収入の向上にとっての大きな制約要因となっています。

こうした状況を改善するために、灌漑施設や農道等のインフラを整備し、これと合わせて農家に対する野菜栽培の指導を行い、換金性の高い野菜類(カリフラワーやエンドウマメ等)の栽培が普及すれば、農家の現金収入の向上が期待できます。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、インド北部ヒマーチャル・プラデシュ州において、小規模灌漑施設やアクセス農道等の生産基盤を整備するとともに農家に対する技術普及等の農民支援サービスを強化し、自給的な穀物生産から換金性の高い野菜類の栽培に転換(作物多様化)することで、この地域の農民所得の向上に寄与するものです。
 
本事業では、対象とする5つの県の約210のコミュニティにおいて、小規模灌漑施設とアクセス農道等を整備するとともに、技術協力プロジェクトにより派遣された日本人専門家が野菜栽培や農産物加工・販売、灌漑施設維持管理等に関する研修を行うことによって、作物の多様化を推進する予定です。同時に、技術協力プロジェクトにより農業普及員や農民に対する研修・指導を行うことによって、作物多様化推進のための実施体制を強化します。

借款資金は、小規模灌漑施設等のインフラ整備、農業局の実施体制強化、コンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施者
ヒマーチャル・プラデシュ州農業局(Department of Agriculture, Government of Himachal Pradesh)
住所: Krishi Bhavan, Shimla-171005 Himachal Pradesh
TEL: +91-0177-2830620

(d)今事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2018年3月(農民支援活動終了時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)招聘状送付予定時期:2011年3月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業では、国際競争入札による調達はありませんが、逐次事業実施のため国内競争入札等による調達が行われる見込です。

(2)タミル・ナド州生物多様性保全・植林事業
Tamil Nadu Biodiversity Conservation and Greening Project

(a) 事業の背景と必要性
インド南部に位置するタミル・ナド州は生物多様性ホットスポットの1つである西ガーツ山脈を有し、28の保護区と553種の固有動植物が存在するインドでも有数の豊かな生物多様性を有する州です。しかしながら、230種の動植物は絶滅の危機に瀕している上、ゾウなどの野生生物と人間の接触被害等の問題も数多く報告されています。また、未だに多くの住民が貧しい生活を余儀なくされており、その多くは森林資源に大きく依存した生活を営んでおり、生活のために森林伐採を行わざるを得ない状況に置かれています。

タミル・ナド州では、これまでにも我が国の支援などを通じて長年にわたって植林事業を実施しており、森林被覆率は改善してきていますが、同州の森林被覆率は22%であり、依然として国家目標の33%以下となっています。

こうした状況下、生物多様性を保全しながら、持続可能な森林管理システムを作り上げられるよう、適切な保護区管理や森林管理、地域住民の生計向上などを行うことが喫緊の課題となっています。

(b) 事業の目的と概要
本事業は、インド南部タミル・ナド州において、保護区の管理強化、森林地外での植林活動、生計改善活動及び森林局活動基盤強化を行うことにより、生物多様性の保全を図り、もって同地域の環境保全及び均衡の取れた社会経済発展に寄与するものです。また、植林活動による温室効果ガスの削減効果も期待されます。

本事業では、貴重な固有動植物が多く存在する同州における生物多様性保全を目的として、国立公園等の保護区において、主に生態系保全(侵略的外来種の除去等)、火災・密猟等のモニタリング体制強化、柵及び溝設置による野生生物と人間の接触被害の緩和、保護区周辺住民の生計改善活動、エコツーリズム等の多岐にわたる活動に取り組みます。

借款資金は、生物多様性保全活動、森林地外での植林活動、森林局活動基盤整備・強化、コンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施者
タミル・ナド州森林局(Department of Forest, Government of Tamil Nadu)
住所:Panagal Building, No.1, Jeenis Road, Saidapet, Chennai 600015, India
TEL:+91-44-2436-4957

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2019年3月(生物多様性保全活動終了時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)招聘状送付予定時期:2011年3月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業では、国際競争入札による調達はありませんが、逐次事業実施のため国内競争入札等による調達が行われる見込です。

(3) ヤムナ川流域諸都市下水等整備事業(III)
Yamuna Action Plan Project (III)

(a) 事業の背景と必要性
インドでは、環境問題への対応の一環として、急増する都市人口に配慮し、安全で安定的な水の供給や劣悪な公衆衛生状況の改善を支援し、生活水準の向上及び主要河川の水質汚濁防止を図ることが重要な課題となっています。首都デリーでは、近年の急速な都市化及び予測を上回る人口増加による下水発生量増加に伴うヤムナ川の水質汚染が、流域諸都市住民の衛生問題や健康上の問題を招いており、下水施設整備による流域住民の生活・衛生環境改善は喫緊の課題となっています。また、ヤムナ川の水質改善はインドの国家事業である国家河川保全計画の中核をなす重要事業です。今回の支援は、本事業の第1期(1992年)、第2期(2003年)に引き続き、3回目となりますが、流域諸都市の中でもヤムナ川に対し最も汚濁負荷の高いデリー準州において集中的に下水道施設を整備することにより、より高い効果の発現を目指します。

(b) 事業の目的と概要
本事業は、デリー準州において、下水道施設整備及び住民向け啓発・広報活動等を実施することにより、ヤムナ川の水質汚染の改善を図り、もって流域諸都市住民の衛生環境及び健康状態の改善に寄与するものです。

本事業では、デリー準州における既存の下水道施設(下水処理場、下水幹線管渠等)の改築・更新を通じて施設稼動率を向上し、また、処理後の下水を再生利用するための施設を整備し、発電所の冷却水や、バス・電車等の洗浄などに利用出来るようにします。これは貴重な上水の節約にもつながります。

借款資金は、下水道施設(下水処理場、下水幹線管渠等)の改築・更新、再生利用水供給施設建設、住民啓発・広報活動、コンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施者
デリー水道局(Delhi Jal Board:DJB)
住所:Varunalaya Ph-II, Jhandewalan, Karol Bagh, New Delhi, 110005, India
TEL:+91-11-2351-6261

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2017年4月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)招聘状送付予定時期:2011年6月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:2012年7月