ニュースリリース

バングラデシュ人民共和国向け円借款契約の調印

−同国向け円借款供与を通じ、アジアの最貧国の発展を支援−

2011年05月18日

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調印式の様子

1.国際協力機構(JICA)は、5月18日、バングラデシュ人民共和国政府との間で、3件、総額549億2,900万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

2.四国・九州を合わせた面積に世界第7位の約1億5,000万人の人口を擁するバングラデシュは近年、日本を始めとする海外企業の進出が著しい縫製・衣料関連産業の発展等により、年率約6%のペースで高い経済成長を継続しています。また、貧困国の中では唯一ネクスト11(注1)に取り上げられ有望な産業拠点・市場として注目を浴びています。しかしその一方で、3つの大河(パドマ川、ジャムナ川、メグナ川)により国土が縦横に分断され、雨季にはその3分の1が冠水するという厳しい自然環境のもと、バングラデシュは、電力・道路・上下水道等の社会・経済インフラの整備が圧倒的に不足しています。そのうえ、国民の3人に1人が貧困の状況にあり、依然アジアで最も貧困率の高い国の一つに位置付けられています。

3.このような状況の下、今次円借款契約に調印した3案件では、世界有数の大規模橋梁の建設、バングラデシュ第3の都市の上水道整備、製造業の中核をなす中小企業支援を通じ、バングラデシュの貧困削減と経済発展に寄与することを目的としており、その特徴は以下のとおりです。

(1)大河が隔てる国土を架橋で一つに(世界有数の大規模橋梁の建設)
バングラデシュの南西部は、3つの大河のうちパドマ川によって、首都ダッカや経済工業都市チッタゴンなどの位置する東部から分断されているため、他地域に比べて貧困人口比率が高い地域です。「パドマ多目的橋建設事業」は、パドマ川中流域に初の橋梁(全長約6.15km:明石海峡大橋の約1.6倍)を建設するものです。トラス型式による橋では世界有数の大規模橋梁となります。橋の建設により、ダッカ市と南西部最大の都市(バングラデシュ第3の都市)であるクルナ市との間の移動が12時間から3時間程度に大幅に短縮され、ヒト・モノの往来も大幅に増加し、バングラデシュ全体のGDPを毎年0.56%引き上げる効果が見込まれています。また、パドマ橋はアジアンハイウェイ(注2)1号線上にあり、日本から始まり東南アジア・南アジアを通りヨーロッパまでを接続する国際物流ルートがつながることにもなります。パドマ橋はバングラデシュの人々の悲願であり、2010年11月に来日したハシナ首相は緒方理事長との会談において、「バングラデシュ南部の開発はこの橋の存在にかかっている」と本事業の重要性を強調しています。

(2)都市に住む人々に安全な水を(第3の都市の上水道整備)
バングラデシュ第3の都市であるクルナ市では、水源を地下水のみに頼っており、上水道サービスを利用しているのは、約100万人の市民の約22%程度にとどまっています。上水道サービスを利用することができない人々は、共有の井戸から水を汲み、自宅へと持ち帰らなければならず、こうした作業は住民たちの大きな負担となっています。「クルナ水供給事業」は、河川水を水源とする総合的な上水道施設をクルナ市に整備するものです。本事業により、上水道サービスを利用することができる人口は、約73%まで増加すると見込まれており、クルナ市の約40%を占める貧困層も、常時安全な水にアクセスすることができるようになります。

(3)製造業の中核をなす中小企業の発展を(中小企業への金融の強化)
バングラデシュは、近年縫製品・ニット製品の輸出と海外労働者送金がけん引役となって、堅調な経済成長を見せていますが、今後の持続的な発展のためには、製造業を中心とした産業の多角化及び裾野産業の育成が必要となっています。特に、バングラデシュに約590万社あると言われる中小企業は、約3,100万人の雇用を生み出すと共に、製造業産出額の約6割を占め、経済成長と貧困削減に重要な役割を果たすセクターとして位置づけられています。「中小企業振興金融セクター事業」は、これまで、市中銀行・金融機関から十分な設備投資のための借り入れを行えなかった中小企業向けに中長期の設備投資資金を供給するものです。本事業を円借款により長期に亘って支援することにより1万社程度の中小企業が銀行・金融機関より借り入れ、生産・投資を拡大することができるようになる見込みです。

4.1971年のバングラデシュ独立以来、日本とバングラデシュは極めて良好な関係を築いておりバングラデシュ国民の親日感情は極めて高いと言われています。今般の東日本大震災に際しても、バングラデシュ政府からは、毛布、ゴム長靴、ゴム手袋等の物資が送られ、被災者の方々に配布されました。また、シェイク・ハシナ首相から菅直人総理大臣へ、ディプー・モニ外相から松本剛明外務大臣へ、それぞれお見舞いの書簡が寄せられ、バングラデシュの国会は3月20日に東日本大震災の犠牲者に哀悼の意を表する決議が全会一致で採択されています。さらに、JICA事業のパートナー機関や、JICA研修に参加した元研修員をはじめとする個人の方々からも、被災者の方々へのお見舞いメッセージや義援金がJICAバングラデシュ事務所に寄せられました。経済面でも両国間関係は極めて緊密なものとなっており、近年の日本企業の関心の高まりを受けて、現在では100社近くの日系企業がバングラデシュに進出しているほか、2010年11〜12月の同国ハシナ首相の来日時には日本企業による更なる投資に期待が寄せられています。こうした中JICAは、有償資金協力、技術協力、無償資金協力という三つの援助手法を有機的に連携させ、バングラデシュの経済的・社会的発展のため、積極的に協力を行う方針です。

(注1)2005年、米国の投資会社が、将来の世界経済において非常に大きな影響力をもたらす潜在性を秘めた国として挙げた11ヵ国を指します。バングラデシュのほか、イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ベトナム、メキシコが含まれます。

(注2) アジアの32ヵ国を横断し欧州まで繋ぐ、全長14.1万kmにわたる高規格道路網整備の構想を指します。2003年、日本を含む32ヵ国及び国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の間で、路線の確定等に関する政府間合意が締結されました。

(参考)
借款金額及び条件

案件名借款金額
(百万円)
金利
(%/年)
償還期間(年)据置期間(年)調達条件
本体コンサルティング・サービス
パドマ多目的橋建設事業34,2000.014010一般アンタイド
クルナ水供給事業15,7290.010.014010一般アンタイド
中小企業振興金融セクター事業5,0000.010.014010一般アンタイド
合計54,929

表内の「-」は当該項目の条件が設定されていないことを表します。

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パドマ川を渡るフェリーは、人と車であふれかえる

(1) 「パドマ多目的橋建設事業」
Padma Multipurpose Bridge Project

(a)事業の背景と必要性 
パドマ川をはじめ、ジャムナ川、メグナ川の三大河川や無数の中小河川で分断されているバングラデシュでは、各地域間を橋梁・道路の建設によって結びつける交通ネットワークの整備が喫緊かつ根本的な問題となっています。特に、パドマ川中流域(注1)に橋梁が無いため、フェリーでの渡河には5時間から場合によっては数日かかっています。南西部地域は、国土の約27%を占め、人口の約25%を擁するにもかかわらず、ダッカ以東の比較的経済が発展した他の地域から分断され、円滑な人的・物的移動が阻害されているため、経済発展が進まず、貧困人口の割合が他の地域と比較して5-10%程度高くなっています。

(注1)パドマ川(ガンジス川)とジャムナ川の合流点(ゴアルンド)からパドマ川とメグナ川の合流点(チャンドプール)までの約150km。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、パドマ川中流域を横断する全長約6.15kmのパドマ多目的橋(注2)を建設することにより、ダッカ都市圏を含む他地域と南西部間の交通・物流の円滑化を図ります。

パドマ橋建設によって、現在フェリーでの渡河を含め自動車で平均12時間以上かかっている南西部最大都市(バングラデシュ第3の都市)であるクルナ市とダッカ市との間の往来を3時間に短縮できるようになります。その結果、ヒト・モノの往来も大幅に増加することが見込まれ、南西部地域の経済発展・貧困削減、さらにはバングラデシュ全体の経済発展に寄与すると期待されます。

本案件は世界銀行・アジア開発銀行・イスラム開発銀行との協調融資案件であり、円借款資金は橋梁本体の建設工事費へ充当される予定です。

なお、日本はこれまで、ジャムナ多目的橋建設事業(円借款)、メグナ橋建設計画、メグナグムティ橋建設計画(以上、無償資金協力)等の橋梁建設を支援してきました。本事業の完成により、上述の三大河川の全てに日本の支援による大規模橋梁が架かり、バングラデシュ地域間ネットワーク構築へ大きな貢献を果たすことになります。

(注2)同橋は道路に加え、ガス輸送管や光ファイバー通信ケーブルを併設する予定であり、将来的には鉄道の敷設も計画されている。

(c)事業実施機関
バングラデシュ橋梁公社(Bangladesh Bridge Authority)
住所:Setu Bhaban, Banani, Dhaka-1212, Bangladesh
TEL:+880-2-9888414、FAX:+880-2-9888414

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2015年2月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス招請状送付時期:2010年3月(送付済み)
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:橋梁本体(Main Bridge)
時期:2010年11月事前資格審査公示締切済

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公共水栓を利用する女性

(2) 「クルナ水供給事業」
Khulna Water Supply Project

(a)事業の背景と必要性 
バングラデシュでは、安全な水の安定的な供給が十分に行われておらず、国民の安全な水へのアクセスは、2005年の時点で70%程度にとどまっています。また、バングラデシュでは飲料水の約9割を地下水に依存していますが、地下水の砒素汚染や地下水位の低下等が深刻化していることから、バングラデシュ政府は表流水の開発による水供給の改善を推進する方針を打ち出し2025年には主要都市で、90%の人々が上水道へアクセスできることを目標として設定しています。しかし、とりわけバングラデシュ第三の都市(南西部最大の都市)であるクルナ市では、未だ大規模上水道施設の整備は行われておらず、クルナ市民の約22%しか上水道サービスを利用することができていません。サービスを受けられない住民、特に女性たちは家族のために毎日、合計すると平均約90分もかけて共有の井戸から水を汲み、自宅へと持ち帰らなければならず、大きな負担となっています。このように、クルナ市では今後の人口増加も見込んだ需要水量を満たすために、表流水を利用した上水道施設整備が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、クルナ市で住民が安全な水に安定してアクセスすることができるよう、取水・浄水・送水・配水施設の整備を一体的に行うものです。本事業により、上水道サービスを利用することができる人口は、22%程度から約73%に増加すると見込まれています。また、本事業では特に低所得者コミュニティでは水利用者グループを組織し、コミュニティ共同給水栓を設置することにより、貧困層にも本事業の成果が行き渡るよう、配慮しています。

また、乾季(3〜5月頃)にはバングラデシュの南に位置するベンガル湾から海水が遡上する現象が見られ、飲み水等に利用可能な淡水の確保が難しくなりますが、今後気候変動の影響により更に深刻化する可能性もあります。本事業での上水道施設の完成後には、雨季に貯水池で貯めた塩分濃度の低い水を、海水遡上が著しい時期の塩分濃度の高い水と混ぜることにより水質を安定させる予定であり、本事業は気候変動への適応にも貢献することとなります。

本事業はアジア開発銀行との協調融資案件であり、円借款資金は、上水道施設のうち取水施設及び浄水場・貯水池並びにコンサルティング・サービスに充当されます。

(c)事業実施機関
クルナ上下水道公社(Khulna Water Supply and Sewerage Authority)
住所:1062/1ka, Khan-A-Sabur Road, Khulna-9100, Bangladesh
TEL:+880-41-810608、FAX:+880-41-720857

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2016年6月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス招請状送付予定時期:2011年6月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:取水施設・導水管パッケージ、浄水場・貯水池パッケージ(Intake and Raw Water Transmission Pipe Package、Surface Water Treatment Plant and Impounding Reservoir Package)
予定時期:2012年5月

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バングラデシュの中小企業での金属加工作業の様子

(3) 「中小企業振興金融セクター事業」
Financial Sector Project for the Development of Small and Medium-sized Enterprises

(a)事業の背景と必要性 
バングラデシュは、近年縫製品・ニット製品の輸出と海外労働者送金がけん引役となって、堅調な経済成長を見せている一方、今後も堅調に発展するためには、製造業を中心とした産業の多角化及び裾野産業の育成が必要となっています。特に、バングラデシュに約590万社あると言われる中小企業は、付加価値ベースでGDP比の約25%を占め、約3,100万人の雇用を生み出していると言われています。その中でも、特に製造業では、中小企業が全体産出額の約6割を占めています。バングラデシュ政府は、中小企業に経済成長と貧困削減に重要な役割を果たすことを期待し、中小企業振興を優先的政策課題として位置づけています。

バングラデシュの金融セクターはこれまで、銀行部門による融資は大企業に集中する一方、零細企業についてはマイクロ・ファイナンス機関による小口融資が近年増えています。しかし、その狭間に位置する中小企業は「ミッシングミドル」とも呼ばれ、銀行・金融機関から設備投資に必要な中長期資金が十分提供されていません。その要因として、厳しい担保要件、金利水準の高さ、融資期間の短さ、融資手続きの煩雑さ等が挙げられています。

(b)事業の目的及び概要
本事業は、同国の中小企業に対してバングラデシュ銀行(中央銀行)から市中銀行・金融機関への転貸を介して中長期融資を供与するもの(注3)です。これにより、十分な資金を調達できなかった中小企業が銀行・金融機関より資金を借り入れ、中長期の設備投資を行うことが可能となります。本事業により約1万社程度の中小企業が裨益する見込みです。また本事業では、コンサルティング・サービスを通じて、日本等で広く導入されているリレーションシップバンキング(注4)を始めとした中小企業金融の手法等に関する研修を、市中銀行・金融機関に対して提供し、中小企業金融に関する資金仲介機能の向上と円滑化を図ります。これらにより、中小企業の生産・投資の拡大、ひいてはバングラデシュの産業及び経済の健全な発展並びに雇用創出に寄与すると期待されます。

借款資金は、中小企業振興のためのツーステップローン及びコンサルティング・サービスに充当されます。

(注3)JICAの円借款資金を開発途上国の政府・公的金融機関が借り入れ、場合によっては民間金融機関等を経由して、適格な最終需要家へ貸付を行うスキームをツーステップローンと言います。

(注4)金融機関が、顧客(借り手)との間で親密な関係を継続的に持つことにより、外部では通常入手しにくい借り手の信用情報などを入手し、その情報を基に貸し出し等の金融サービスを提供するビジネスモデルを指します。

(c)事業実施機関
バングラデシュ財務省銀行金融機関局(Bank and Financial Institutions Division of the Ministry of Finance)。ただし、実際の事業実施は財務省の委託を受けて、バングラデシュ銀行(Bangladesh Bank)が行います。

バングラデシュ銀行
住所:Head Office, Motijheel C/A, Dhaka-1000, Bangladesh
TEL:+880-2-7165322、FAX:+880-2-9512991

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2016年3月(ツーステップローンの貸付完了時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス招請状送付予定時期:2011年7月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:本事業では、本体工事に係る入札はありませんが、仲介金融機関により供与されるサブローン対象事業において逐次事業実施の為の調達が行われる見込みです。