ヨルダン・ハシェミット王国向け円借款契約の調印

−人材育成・社会インフラ改善を通じ、「アラブの春」に揺れる中東地域の安定化に貢献−

2012年8月14日

署名後、握手を交わす田中JICAヨルダン事務所長(左)とヨルダン計画・国際協力省のハッサン大臣

国際協力機構(JICA)は、8月14日、ヨルダン・ハシェミット王国の首都アンマンにて、ヨルダン政府との間で、「人材育成・社会インフラ改善事業」を対象として122億3,400万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

本事業は、同国の人材育成施設・保健医療施設・初中等教育施設の拡充などを実施することにより、ヨルダン国内の産業育成と公共サービスの改善を図り、いわゆる「アラブの春」により不安定化した同国経済・社会の安定に貢献するものです。

人口約600万人のヨルダンは、北をシリア、東をイラク、西をイスラエル、パレスチナ自治区と接しています。人口の約7割がパレスチナ系といわれ、近年はイラク難民、シリア難民も押し寄せ、東地中海地域での地政学的重要性の極めて高い国です。同国では、全国民の7割を超える30歳未満の若年層の失業率が30パーセントを超え、若者の雇用問題が社会問題化しています。さらに、アンマンを中心とした都市圏と地方部では貧困層の人口比率が2倍以上の格差があり、南部や北部といった地方部では都市圏と比べて高い幼児死亡率、栄養不足、非識字率などの問題も生じています。

このような状況下、国内外でのいわゆる「アラブの春」の影響を受け、生活の改善や汚職の根絶などの政策要求を掲げるデモが散発し、国家元首である国王は2011年から2012年5月にかけて3回にわたる首相の更迭を行い、政治・経済改革の推進を図っています。しかしながら、国際的な食糧・燃料価格の高騰を背景に、食糧・燃料補助金の維持や貧困層に対する公共支出の必要性が高まっています。さらに、エジプト−ヨルダン間のガス・パイプラインがシナイ半島で十数回にわたって爆破された影響で、割高な代替燃料を購入せざるを得なくなるなど、財政負担が増していることから、国内不安を解消し、将来の成長のための投資に充てる予算確保が困難になっています。

本事業は、現在のヨルダンが抱えている経済的、社会的問題に対応するヨルダン政府の努力を支援するものです。人材育成分野においては、職業訓練コースの実施および職業訓練所の改修・機材整備、高等教育施設の拡充などを行い、産業に貢献する人材の育成と失業対策を行います。また、社会インフラ分野においては、貧困地域での保健医療施設の拡充・改修、就学前教育および初中等教育施設の機材調達、施設拡充、聴覚障害者教育施設建設などに本件の貸付資金が充当されます。本事業を通じて、ヨルダンの失業対策に貢献するとともに、地方格差、貧富の格差の改善が進むことが期待されます。


ヨルダンは日本との関係も非常に良好な国であり、2011年3月の東日本大震災の際には医療支援チームが福島県に派遣され、県内各避難所でエコノミー・クラス症候群の検査などの支援を行いました。

日本政府は、2011年5月のG8サミットで成立した、アラブの春の影響を受けている国々を支援する「ドーヴィル・パートナーシップ」のメンバー国として、ヨルダンを含む中東・北アフリカ諸国の人づくりや雇用促進を支援しており、本事業はこうした取り組みを後押しするものです。また、その地政学的要素から、ヨルダンは中東地域全体とも相互に大きく影響を及ぼし合っており、本事業による協力は、日本がエネルギーの多くを依存している中東地域全体の安定にもつながっています。

(参考)
1.借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
人材育成・社会インフラ改善事業 12,234 0.95 20 6 国内競争入札

2.事業実施機関
計画・国際協力省(Ministry of Planning and International Cooperation)
住所:Ministry of Planning and International Cooperation
P.O.Box 555
Amman, 11118 Jordan
*本事業は、計画・国際協力省の総合調整の下、各サブ・プロジェクトの所管省庁が事業実施の実務を担っています。

3.今後の事業実施スケジュール(予定)
(1)事業実施期間:2012年1月〜2014年12月
 施設・設備の供用開始および職業訓練の完了時をもって事業完成とします。
(2)コンサルティング・サービス:なし
(3)最初の調達パッケージ入札公示:2012年1月