インド政府向け円借款契約の調印

−日系企業の進出著しいインド南部タミル・ナド州の電力安定供給などを支援−

2012年9月28日

調印式の様子

国際協力機構(JICA)は、9月28日、インド政府との間で、2件、総額983億3,800万円を限度とする円借款貸付契約に調印しました。

インドは1991年以降、経済改革に取り組み、特に2003年以降はおおむね年間7〜9パーセントの高い経済成長率を達成してきました。しかし、2012年1-3月期の実質GDPは前年比5.3パーセント増、4-6月期は5.5パーセント増となり、最近では経済成長が減速しつつあるといわれています。このような中、7月31日、8月1日には首都デリーを含むインド北部において大停電が発生し、6億人が影響を受ける事態となりました。今後、持続的に経済成長を達成していくために、電力分野を含む経済・社会インフラの整備の必要性が高まっています。

インド政府は、国家開発計画である第11次5ヵ年計画(2007−2011年度)において、「Faster and Inclusive Growth」を目標として掲げ、迅速な成長(Faster Growth)による経済の拡大と、すべての人々が恩恵を受ける成長(Inclusive Growth)の実現を目指してきました。続く第12次5ヵ年計画(2012−2016年度)では「Faster, Sustainable and More Inclusive Growth」の目標に沿って、これまでの路線をより強化する政策を進める方針です。

このようなインド政府の方針を踏まえ、今回調印した円借款の特徴は以下のとおりです。

(1) 本邦技術を活用した支援を通じて、インドの都市問題の解決に貢献

経済発展に伴って急激に人口増加が進むインドの大都市圏では、さまざまな課題が発生しています。「タミル・ナド送電網整備事業」では、日系企業が多く進出しているチェンナイ市を含めたタミル・ナド州において電力供給能力向上のために、送電網の整備を支援します。本事業では、わが国の優れた技術である送電ロスの少ない送電線や混雑した都市部への敷設が可能な地中送電線を活用することで、より効率的で二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも貢献する送電網を実現します。

(2) すべての人々が恩恵を受ける成長(Inclusive Growth)のため、安全な水へのアクセスの改善に貢献

インド北西部に位置するラジャスタン州は平均降水量が531ミリメートルとインド全国の平均(1,200ミリメートル)の半分以下で、慢性的な水不足が生じています。また、ラジャスタン州の中でも最も水不足が深刻な県の一つであるナゴール県の地下水はフッ素を多量に含んでおり、住民の間では斑状歯や骨格フッ素中毒症等の疾病が発生しています。「ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策事業」では上水道施設を建設し、安全な水の供給を可能にします。

1. 2012年は日本とインドの国交樹立60周年の節目の年です。インドに進出する日本企業も現在では800社を超え、この4年でおよそ2倍となるなど、日本とインドの関係は近年急激に強まりつつあります。JICAは対インドODAにおいて、第12次5ヶ年計画を支援するにあたり、円借款による施設等の整備に合わせて研修を通じた人材育成を行うなど、有償資金協力、技術協力、無償資金協力の3スキームを有機的に連携させ、今後もインドの経済成長と貧困削減に対して機動的に取り組んでいきます。


(参考)借款金額および条件

案件名 借款金額
(百万円)
金利(%/年) 償還期間
(年)
据置期間
(年)
調達条件
本体 コンサルティング・サービス
タミル・ナド州送電網整備事業 60,740 0.55* 0.01 30 10 一般アンタイド
ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策事業 37,598 1.40 0.01 30 10 一般アンタイド


*地球環境案件(省エネルギー、森林保全、代替エネルギー)には、開発途上国の環境問題への取り組みを積極的に支援するため、緩やかな貸し付け条件を適用しています
基準:金利0.65%/年、償還期間40 年・据置期間10年
オプション1:金利0.55%/年、償還期間30 年・据置期間10年
オプション2:金利0.50%/年、償還期間20 年・据置期間6年
オプション3:金利0.40%/年、償還期間15 年・据置期間5年

(1)タミル・ナド州送電網整備事業
Tamil Nadu Transmission System Improvement Project

(a)事業の背景と必要性
インドは、近年の急速な経済成長に伴い世界第5位のエネルギー大量消費国ですが、電力の供給能力が需要の拡大に追いついていない状況が続いています。また、送配電のロス率が高く(2010年度のインド全国平均25.5パーセント)、頻繁に生じる停電が供給面での大きな問題となっています。

タミル・ナド州は、日印政府イニシアティブにより進められている南部中核拠点構想を構成する州でもあり、州都チェンナイ市を中心に本邦企業の進出が増加し堅調な経済発展が見込まれていますが(2011年10月時点で286拠点)、電力インフラの整備不足の為に停電が頻発し、不安定な電力供給状況が続いています。そのため、現地(チェンナイ)日本商工会からはタミル・ナド州政府に対し、安定的な電力供給の実現に向けた建議書が2011年10月に提出されています。同州では今後の電力需要の増加、現在の年8パーセント強の供給不足状況を改善するために、2017年までに約1万6,000メガワットの新規電源開発を計画しており、こうした新規発電容量の増加に伴い、南部地域の安定的な系統運用および電力供給のためには、既存の送変電設備の整備が喫緊の課題となっています。

(b)事業の目的および概要
本事業は、インド南部タミル・ナド州チェンナイ市周辺をはじめとする州内全域において、送変電設備の整備を行うことにより、同州の電力系統の安定化、送電ロス率の低下および電力の安定供給の達成を図り、もって同州およびインド南部地域の経済発展に寄与するものです。

借款資金は、送電線の敷設と増強および変電所の新設に充当されます。

(c)事業実施機関
タミル・ナド州送電公社 (Tamil Nadu Transmission Corporation Limited)
住所: 10th Floor/NPKRR Maaligai, 144, Anna Salai, Chennai-600 002, India
TEL: +91-44-2852-1378, FAX:+91-44-2855-5539

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2016年10月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:2012年10月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:送変電設備の建設(Construction of Substations and Transmission Lines)
予定時期:2012年10月


(2) ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策事業
Rajasthan Rural Water Supply and Fluorosis Mitigation Project (Nagaur)

(a)事業の背景と必要性
インドでは、安全な水へのアクセス率 は、1990年の72パーセントから2008年には88パーセントへと改善しているものの、人口増加や経済発展に伴う上水使用量の増加に対し、水源開発および上水道整備が追い付かず、地下水への過度な依存、不連続・不均等な給水が恒常化しています。さらに、一部地域の地下水には世界保健機構(WHO)の飲料水基準値である水1リットルに含まれる含有量が1.5ミリグラムを大幅に超えるフッ素や砒素等の人体に有害な物質が含まれており、安全な飲料水の供給が急務となっています。

インド北西部に位置するラジャスタン州は、平均降水量が531ミリメートルとインド全国の平均(1,200ミリメートル)よりも少なく、利用可能な表流水が限られているため、地下水の過剰汲み上げ・枯渇等をもたらしており、慢性的な水不足が生じています。本事業地であるラジャスタン州ナゴール県(人口約331万人)の大部分の地下水は、WHOの飲料水基準を大幅に超える天然由来のフッ素を多量に含んでおり、飲料水には適していないものの、その他の水源がないため地下水を利用せざるを得ず、その結果地域住民の間では斑状歯や骨格フッ素中毒症等の疾病が発生しています。2010年の調査によると、同県の6〜14歳の児童のうち約34パーセントの生徒にフッ素症が確認されています。同県では人口の約8割が安全な水にアクセスできない状態であり、ラジャスタン州の中でも最も水不足が深刻な県の一つです。

(b)事業の目的および概要
本事業は、水不足が深刻、かつ地下水のフッ素汚染が著しいインド北西部ラジャスタン州ナゴール県において、表流水による上水道施設の新設およびフッ素症対策を行うことにより安全かつ安定的な上水道サービスの提供を図り、もって同地域の住民の健康状態と生活環境の改善を図るものです。

借款資金は、上水道施設の建設、フッ素症対策のための住民啓発活動・医療関係者の診断能力強化、コンサルティング・サービス等に充当されます。

(c)事業実施機関
ラジャスタン州公衆衛生局(Public Health Engineering Department, Government of Rajasthan:PHED)
住所: Jal Bhawan, 2, Civil Lines, Jaipur, Rajasthan, 302006, INDIA
TEL: +91-141-222-2337, FAX: +91-141-222-2585

(d)今後の事業実施スケジュール(予定)
(i)事業の完成予定時期:2017年5月(施設供用開始時をもって事業完成)
(ii)コンサルティング・サービス(施工監理等)にかかる招請状送付予定時期:2012年11月
(iii)本体工事に係る国際競争入札による最初の調達パッケージ入札公示:
調達パッケージ名:浄水場・送水管の新設、SCADAシステム整備(Construction of Water Treatment Plant, Transmission Main and Introduction of SCADA System)
予定時期:2013年11月

関連ファイル: