IMF・世界銀行年次総会が閉幕

−安定・持続的な成長、貧困のない世界を目指して−

2012年10月15日

10月14日、国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会が閉幕しました。9日に開幕し、国際金融通貨委員会(IMFC)および合同開発委員会では、現下の世界的な経済成長の鈍化と欧州諸国の財政・金融危機への懸念、世界的に厳しい雇用情勢などの課題が共有され、コミュニケが採択されました。また並行して多くのセミナーが開催され、開発課題−ソブリンリスク、雇用と成長、国際保健、低所得国開発など−への対応と、世界の持続的な経済発展の実現に向けた議論が活発に行われました。

10月13日開催された公式イベントには、田中理事長も出席し、ポスト2015を議論

JICAは、総会4日目の12日に、「雇用と開発」をテーマに総会公式セミナー(Program of Seminars: POS)を世界銀行と共催しました。世界的な雇用情勢の悪化、多くの人々が満足に就業出来ない問題は、中東・北アフリカ地域で見られた社会・政治不安の原因にもなっています。

JICAの田中明彦理事長が冒頭登壇し、雇用を巡る課題の解決は、すべての人々が恩恵を受けるインクルーシブな開発の実現に欠かせないこと、その社会的な波及効果などにも注視した取り組みの重要性を強調しました。議論の結果、モデレーターを務めたブルッキングス研究所のハフィーズ・ガネム氏は、「労働の供給サイドにおいても教育や再訓練の政策などの重要性が認識された上で、それぞれの国や地域の文脈を踏まえて、慎重に政策が立案・実施されるべき」と総括しました。

また、同日、アフリカ地域における電力インフラ開発をテーマに公式セミナー(POS)を世銀とともに共催しました。2013年6月に横浜で「第5回アフリカ開発会議(TICAD V)」の開催が予定されており、アフリカへの支援が再び注目されています。アフリカのインフラ面の課題に対処するためには、10年以上の期間にわたり、新規の投資と維持管理に、それぞれ現在の2倍以上の年間930億ドルの投資が必要とされており、電力分野はその資金ニーズの多くを占めています。 

アフリカの電力インフラにおける開発資金の触媒効果を述べる田中理事長

パネルディスカッションに参加した田中理事長は、「電力インフラ整備のための長期計画を作成し、プロジェクトの優先順位を見極めること、技術や資金を導入する上でJICAが民間の触媒となること、地域全体で効率的な電力サービスの提供を図ることが必要」と述べ、TICAD Vの開催意義を強調しました。2013年のTICAD V開催地となる横浜市の林文子市長は、「横浜市はアフリカとの市民交流、水道・港湾などインフラに関する技術協力を推進しているほか、ICT技術を活用し、エネルギーの効率的な利用を図るなど、エコロジーとエコノミーを両立した都市である。ビジネス、女性の社会進出、経済パートナーとしてのアフリカの魅力を広く発信したい」と来訪を歓迎しました。最後に、世界銀行のマクタール・ディオップ副総裁は、「アフリカにとってエネルギーは避けて通れない問題であり、すべての資金投資を含む体系的なアプローチが必要。資金投資の不透明性を払しょくし、官民連携を進めるなど、関係者全員が連帯した取り組みが必要」と進言し、セミナーを締めくくりました。 

総会5日目の13日には、ミレニアム開発目標(MDGs)の目標達成期限(2015年)を迎えた後の国際的な開発枠組み(通称ポスト2015)を議論する世銀主催の公式セミナー(POS)に世銀総裁、リベリア大統領、UNDP総裁とともに、JICAから田中理事長がパネリストとして参加し、持続可能性と強靭性の概念の導入が必要であること、現行のMDGsで未達成のゴールは引き続きゴールとして設定すべきこと、そして達成の因果関係をもっと把握するための研究が重要と指摘しました。

エレン・ジョンソン・サーリーフ・リベリア大統領は、「水、ジェンダー、貧困のギャップは、2015年以降も取り組みを維持すべき。グローバルな取り組みでは広義の原則・基本事項に合意し、国別に具体的なアクションを取る必要がある」と述べた。ヘレン・クラークUNDP総裁は、MDGsの有効性を評価しつつ、「現行のMDGsを確実に成功させるべきであり、また、2015年以降もモニタリングが可能かつ明瞭な目標を設定すべき」と主張するなど、第一線で活躍する実務家や研究者がさまざまな議論を行いました。

イスラム開発銀行のアハメド・モハメッド・アリ総裁と握手する田中理事長

上記のように、JICAは、総会期間を通じてさまざまなセミナーを主催・共催してきました。POS以外にも、成長を続けるASEAN地域における食糧安全保障の展望と必要な施策、グリーン成長促進に向けた官民連携、イスラム圏におけるJICAと開発金融機関との新たな連携、「アラブの春」以降の中東・北アフリカ支援など、多様化・複雑化の進む国際社会の抱える課題に対し、国際的な議論をリードし、積極的に知的貢献に取り組んでいます。

これに加えて、訪日した各国政府・国際機関の要人との対話を実施しました。この機会を活用して、フィリピン、ペルー、イラク、ザンビア・ボツワナとは円借款契約の調印も行いました。

今後も、JICAは世界最大規模の二国間援助機関として、世界銀行やIMFをはじめとする国際機関、二国間援助機関や地域開発金融機関との連携を強め、益々多様化する開発課題の解決に向けた支援を行っていきます。

関連ファイル:JICAの現場に根ざした知的貢献(各種セミナー・イベント詳細)