海外投融資事業、本格再開後初のインフラ案件に調印

−環境配慮型の産業発展を支援しつつ、日本中小企業の投資環境も整備−

2013年1月30日

国際協力機構(JICA)は、1月30日、ベトナム最大の商業銀行の一つであるベトナム産業貿易商業銀行(Vietnam Joint Stock Commercial Bank for Industry and Trade: 以下「VietinBank」 )との間で、「ベトナム国ロンアン省環境配慮型工業団地関連事業」を対象として、融資契約に調印しました。本件は、昨年10月に本格再開された海外投融資を活用し、初めて実施されるインフラ事業です。

本事業は、ベトナムにおいて、環境配慮型工業団地に対するユーティリティの提供および表流水を利用した上水施設の整備・運営維持管理を実施する合計3つの特別目的会社(Thuan Dao Utility Management Company Limited, Phu An Thanh Utility Management Company Limited, Ben Luc Water Supply Company Limited.)に、施設整備費用などの必要資金を、JICAが海外投融資を通じて支援するものです。

本事業を実施する特別目的会社は、(株)神鋼環境ソリューション、および神鋼商事(株)が現地企業と共同出資を行い設立されるもので、給水事業においては神戸市の支援も受けつつ事業を進めていく予定です。

支援の実施にあたっては、JICAからVietinBankに対して融資が行われ、同銀行から特別目的会社に転貸が行われます。

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融資スキーム

ベトナムは2020年までに工業国となることを政策目標に掲げており、近年の急速な経済成長に伴う海外直接投資の増加も手伝い、国家の工業化に向けて急速に工業団地の整備が進められています。

しかし、現在認可されている200以上の工業団地の内、排水設備を所有するものは全体の60パーセント以下で、未処理で河川などに排出される工業排水は全排出量の70パーセントにも及ぶとされ、工業排水による公害問題が深刻化しています。また、工業用水需要の急激な増加により、地下水の枯渇も問題視されており、経済成長と環境保全の両立といった、持続可能な経済発展に向けた大きな課題に直面しています。

こうした状況の中、ホーチミンの南西に隣接するロンアン省では、産業開発を重点政策分野としつつ、環境に十分配慮した工業団地の整備を積極的に進めています。特に、日本企業を中心とした外資の誘致に意欲的であり、その投資環境整備として環境配慮を行った工業団地の整備を推進しています。

本事業では、ロンアン省内のタンダオ工業団地、フー・アン・タン工業団地に対して(株)神鋼環境ソリューション、神鋼商事(株)がその技術・ノウハウを活用し、工業団地内で排出される排水処理、および給電関連の整備・運営維持管理のサービス提供を実施していきます。また、同時に工業用水の増加に伴う過剰な地下水依存を緩和するため、両日本企業、両工業団地および、ロンアン省給水公社が共同出資し、給水事業を行います。

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事業スキーム

今回のJICAの融資は、ロンアン省が目指す環境配慮型の工業発展を民間企業のインフラ事業への取り組みを通じて支援するものです。本事業が、工業化の進むベトナムにおける持続可能な開発に寄与する一つのビジネスモデルとなること、また、今後の官民連携(PPP)案件のモデルケースとなることを通じ、インフラ分野での官民連携が進展してくことが期待されます。

事業の対象となるロンアン省および工業団地では、中小企業を始めとする日本の企業の進出に対して高い期待を有しており、中小企業を対象とした貸工場、進出企業に対するワンストップサービスの設置を計画しています。JICAとしても、これらに対する技術協力の支援を行う予定です。

これらの取り組みにより、日本の中小企業を始めとする企業のベトナムへの事業展開を促し、進出した日本の企業の活動も通じて、ベトナムの産業発展に寄与することが高く期待されます。

また、本事業内の給水事業では、(株)神鋼環境ソリューション、神鋼商事(株)が所在する神戸市が、今後、傘下の「神戸すまいまちづくり公社」「神戸市水道サービス公社」を通じて特別目的会社に対して出資を行い、事業の施設整備や運営維持管理業務に参画していく予定です。日本の地方自治体がベトナムにおいて企業と連携する形で水インフラ事業に参画する初の取り組みとなり、日本国内の官民連携によるパッケージ型インフラ輸出の先鞭を着ける事業となることが期待されます。